怪淫談(カイダン) ~オカルティックエロ短編集~

やなぎ怜

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セフ霊(5)

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 しかし、推定幽霊との性生活を謳歌していた小夜子に転機が訪れる。

 彼氏が出来たのだ。

 秀斗ひでとという名前の彼は、小夜子の中学時代の同級生である。再会は中学校のそう大きくはない同窓会。そこで再び顔を合わせることになった秀斗は相変わらず端正な顔立ちに、どこかあどけなさを残した、カワイイ系のイケメンであった。

 なにを隠そう中学生時代の小夜子は秀斗に淡い恋心を抱いていたのだ。しかしそれは情熱的な性愛に基づくものというよりは、先述したように淡い、憧れに近い感情だった。手の届かないアイドルに対する感情にも似ている。

 実際、中学時代の秀斗は年上の彼女と付き合っている噂があって、そういうところも中学生の小夜子には大人びて映り、今一歩踏み出す気になれなかったのである。いずれにせよ噂が本当であれば小夜子が立ち入る隙はなかったし、小夜子には浮気願望はないので、ハナから付き合うことは叶わない関係だった。

 そんな風に玉砕すら経験せず、ただ遠くから眺めているだけだった秀斗が、どういう巡り合わせか同窓会の会場となった居酒屋で、小夜子の隣に座った。憧れの秀斗がすぐそばにいるという状況に、小夜子は久しく感じていなかったときめきを覚えた。

「僕のこと覚えてる?」

 そのセリフを言うにふさわしい立場は、どちらかと言えば小夜子のほうだろう。なにをさせても平均以上ではなかった小夜子は、クラスの中でも地味で埋もれた存在だった。どこにでもいる普通の地味な女子中学生として学校生活を送っていた。だから、「わたしのこと覚えてる?」と聞きに行くのは、小夜子のほうがふさわしいだろう。

「もちろん!」

 少々酒が入っていたこともあり、秀斗の問いに思わず上ずった声で答える。小夜子は秀斗が、己のことを覚えてくれていたことに思ったよりも舞い上がった。いつもより頑張っておしゃれをしてきて良かったと思った。

 小夜子の答えに秀斗が微笑んでくれたので、小夜子はますます舞い上がって、けれどもその落ち着きのなさを見せないように、なんとなくお酒を飲むペースを上げてしまう。それが良かったのか、秀斗とはあまり緊張せず、会話も弾んだ。

 そうやって「手ごたえ」みたいなものを感じた小夜子は、下心を抱いてしまう。それは「これを機会にお近づきになりたい」という程度のささやかな邪念であった。

 秀斗は相変わらずイケメンで、言葉遣いにもイヤなところがなく、今のところ話も弾んでいる。そういう「手ごたえ」を感じてしまうと、どうしても終わらせていなかった淡い恋心が、水を注がれた大地のように、濃く潤って小夜子の前に立ち現れた。

 繰り返しになるが、小夜子は秀斗に対して明確に性愛を抱いたことはなかった。ささやかな憧れのまま、綺麗な思い出がほとんどそのままの姿で現れたので、思わず舞い上がってしまったのだ。

 しかし、秀斗のほうはそうではなかったようで。

「――ひゃうっ♡ あ~~~♡♡♡ あっ♡ あんっ♡ あうっ♡」

 ――じゅるっ♡ じゅるるるっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡

 小夜子は己のクリトリスを吸う秀斗の頭に思わず手をやる。けれどもそこにはロクな力が入っていない。まるで撫でるように秀斗の茶髪をかき混ぜるだけに終わった。

 ハイペースで酒を呷った小夜子は、気がつけば秀斗とラブホテルらしき一室にいた。ぼんやりと秀斗の顔を眺めているうちに一糸まとわぬ姿にされて、大きく脚を開かされてクンニされている。

 ざらざらとした熱い舌でクリトリス全体を舐め上げられたかと思えば、舌先でクリトリスの敏感な先端部を暴くように愛撫される。そして母乳にありつく赤子のように、秀斗は口に含んだ小夜子のクリトリスを吸い上げて、彼女に極上の快感を与えてくる。

 小夜子は足先をぐっと丸め、腰を浮かして快楽に耐える。けれども内股はガクガクと震えて、ゆらゆらと腰がゆらめいて、その小夜子本人にはもうコントロールできない動きがまた、彼女に不意の快感を与えるのであった。

 ――じゅるるるるるっ♡♡♡

 秀斗の熱くざらついた舌とぬるぬるとした唾液の激しい動きで、小夜子は視界が白く明滅するのを感じる。

 ――じゅわっ♡ トローっ♡

 膣襞から愛液が溢れ出て、おまんこから肛門にかけてをしとどに濡らす。

「あんっ♡ 秀斗くん♡ も、もういいからぁ♡ あっ♡ あんっ♡ ダメッ♡ イっちゃう♡♡♡」

 荒い呼気を吐きながら、小夜子は涙目で懇願する。先ほどから膣穴がヒクヒクヒク♡ と、勝手にわななくのが止まらない。

「僕のでイきたい?」

 ちゅっ♡ と最後にリップ音を響かせてクンニをやめた秀斗は、小夜子の股座で顔を上げて問う。その問いに小夜子は何度もうなずくことで答えた。

 すると秀斗はおもむろにベッドで膝立ちになり、ジジジッとジッパーをおろしてズボンの前をくつろげた。そしてジッパーの向こう側にあるパンツの前からペニスを取り出す。赤黒い亀頭は間接照明の光を受けてテラテラと輝いている。大きく張ったカリに、太い血管が浮かんでいるグロテスクなペニス。秀斗の、どこか庇護欲をそそるようなイケメンぶりからは想像もつかない凶悪ペニスだった。

 小夜子はそんな秀斗のペニスを見ておどろきはしたが――ごくり、と思わず生唾を飲み込んでしまう。そしてその胸を期待に震わせた。

「怖い?」

 秀斗の問いに小夜子は首を横に振る。実際、怖くはなかった。むしろ期待のほうが上回って、小夜子の体は先走ってまたおまんこから愛液をしたたらせる始末だ。

「小夜子ちゃんって初めて?」
「ううん……処女じゃないのは、イヤ?」
「そんなことはないよ。僕だって中学の時から恋人がいて……そういうこともしてたし。でも小夜子ちゃんって大人しそうだからちょっと心配しちゃった」

 小夜子は処女どころか、ここ二ヶ月はずっと毎日ヤりっぱなしと言ってしまっても過言ではない。それも秀斗のものに負けず劣らずの太さと長さを持ったペニスを相手にしていたのだ。秀斗の巨大な極悪ペニスだって、すんなりと入ってしまうだろう。

 しかしそんな事実はおくびにも出さない。そもそも、出せない。どこのだれとも知れない、顔も知らない幽霊を相手に毎日セックス三昧の日々を送っています――だなんて、正気であればだれだって言えないだろう。

「だ、大丈夫だよ……。……秀斗くんのもの、だし」

 小夜子は思わず猫をかぶってかわい子ぶる。大丈夫どころではない。秀斗の凶悪ペニスを相手にしたって、痛みもないどころかスムーズに挿入を済ませられることは目に見えていた。

 小夜子は心の中で汗をかく。幽霊との好き放題のセックス生活。それによって己のおまんこがガバガバになっているかもしれない可能性に今さら思い至ったのだ。自然と、おまんこに力を入れてしまう。それで誤魔化せるかどうかはわからなかったが、やらないよりはきっとマシだろう。小夜子はそう判じて、ぎこちないながらも微笑を浮かべた。

「小夜子ちゃんは優しいね……。僕もいっぱい優しくして気持ちよくしてあげるからね♡」

 秀斗のイケメンスマイルに見惚れているうちに、あっという間に圧し掛かられてしまう。そしてその後、小夜子はおまんこに力を入れようとかいう、馬鹿馬鹿しい考えがすぐに吹き飛んでしまうほどの圧倒的な快楽を経験するのであった。
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