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――あの森へは二度と行かない。
そうスズは心に決めていたものの、時間と共にその決意もゆるんでくる。
繁忙期が明け、あと数日で狩りのシーズンに突入する。そうなれば、日暮れ近くとは言えども、犬に変身して森を駆け回るのは危険だ。となるとがぜん、スズは「変身収め」とでも言うべき、狩りのシーズンの前に一度犬になって森を走り回りたくなってしまう。
スズは酒や煙草はたしなまなかったし、散財や暴食することにも特に魅力を感じていなかった。犬に変身して野を駆け回ることは、スズのほとんど唯一のストレス発散方法だったのだ。
けれどもルーがスズの上司になった……なってしまったことで、スズは犬に変身することを控えていた。だが、そうやって我慢するのもそろそろ限界だ。
ほんの少しだけ。ほんのいっとき、森へ行きたい――。
スズはその誘惑に抗えなかった。
……そしてこのザマである。
「ごめんね、レイシーさん。ふたりきりで秘密の話をするには、この森が一番ちょうどいいかなって思って……」
スズのファミリーネームを申し訳なさそうに呼んだのは、ほかでもないルーである。人語を話しているのだから、今は当然人間の姿をしている。木立ちのあいだから不意に現れたルーに、おどろいて比喩ではなくスズは飛び上がった。久々に森を駆け回る快感に夢中になっていたら、これだ。
「あ――に、逃げないで……!」
スズはまた例によって遁走しようとしたが、ルーの声があまりにも哀れっぽかったこともあるし、そもそも正体が上司でもあるルーにバレていることを考慮して、逃げ出したい気持ちをどうにか押さえ込むことには成功した。
犬に変身したまま、スズが立ち止まって振り返れば、ルーはあからさまにほっとした顔をして近寄ってきた。
「元に戻りたくないなら、そのままでもいいよ。ただ、私の話は聞いて欲しくて……」
スズは迷った。そして悩んだ末に、犬でいることにした。犬でいるあいだは人語をしゃべることはできない。だんまりでも、不自然ではない。そういう少々卑怯な心境から、スズは白い犬のままでいることを選んだ。
ルーは精悍な顔つきに反して、目元を和らげて、膝を折る。その場で地面に尻をつけ、「お座り」の体勢を取るスズと、大体同じ目線の位置になる。ルーのこういった行動にわざとらしさやぎこちなさがないから、スズの中から、逃げ出したい気持ちも自然と抜けていく。
「……貴女が半獣半人だろうことは、なんとなくわかっていた」
……スズはいきなり落とされた爆弾に、その場から逃げ出したい気持ちが首をもたげたのを感じた。
「このあたりの森は数年前に大規模な野犬狩り、狼狩りをしていて……町の中には半分野良の犬はちらほら見られるけれど、森の中にはほとんど姿を見なくなっていたから」
スズは地方の……言ってしまえば、田舎の出身である。就職と同時に王都にやってきたので、ルーが告げてきたような事情があったことは、まったく知らなかった。
「だから私も、安心して狼になってのんびりしていたんだけれど」
……思えば、スズはルー以外の狼には会ったことがなかった。しかしそれを不自然だと捉えられるほどの知識がスズにはなかったのだ。それとスズがどちらかといえばのん気な性格をしていたことも理由のひとつだろう。「そういうこともあるだろう」と楽観的に考えていたのだ。
「先に言ったように貴女が半獣半人の、人間だろうことは薄々わかっていた。それでも――」
ルーはそこで一度言葉を切り、それから万感の思いがこもっていそうな声で言った。
「あんまりにも疲れていたから……その、貴女とのスキンシップには大いに癒されていて――」
ルーは恥ずかしそうに目を伏せた。
スズは黒い目をぱちくりとまたたかせた。
そして――スズはやおら人間に戻った。
「わかります! もふもふの動物と触れ合うと癒されますよね!」
そしてルーと同じように膝を折った体勢のまま、大いに同意した。今度は、ルーが目をまたたかせる番だった。
「部長はもふもふしていて可愛くて……でも顔つきとかがとてもかっこよかったので……そのギャップがまた――ハッ!」
ルーがおどろいたような顔をしたまま固まっているのを認め、スズは熱弁していた顔から反転、青ざめさせて謝罪する。
「体をすりつけたりとか……セクハラですよね……ごめんなさい」
「い、いえ……それなら私のほうこそ、ですよ。貴女が半獣半人だとなかばわかっていたのに色々と……その、色々としましたし……」
「いえ、その……お気になさらず……」
「でも……」
「いえいえ……」
ふたりのあいだに、気まずい沈黙が落ちる。
ややあってから、それを先に切り取ったのはスズだった。
「でも……部長のおかげで助かりました」
「……え?」
「つらいとき、苦しいとき。部長がいてくれたから頑張れたんです。魔方陣職人はずっと昔からの、わたしの夢だったんですけど、前の部長はあんな感じでしたから……」
スズは、この森で出会える若い狼に――ルーを心の支えに、職場にまかり通っていた理不尽にも耐えることができた。それだけはゆるぎようのない事実だった。だから、その感謝の気持ちだけは伝えたいと思ったのだ。
「私も同じようなものだよ。そのころは前の上司の不正の証拠を積み上げていたんだけれど、やっぱり、色々とつらくてね……。だから狼になってこの森にいるあいだだけは、そのつらさを忘れられた」
「そうだったんですか。……わたしたち、似たもの同士だったんですね」
「……ありがとう」
「え?」
「そう言ってくれてうれしい。貴女には嫌われても仕方がないと思っていたから」
「……嫌うわけ、ないじゃないですか。部長は密猟者からわたしを助けるために、人間に戻ってくれたんですから……」
ルーはほっと安堵したように微笑んだ。その顔がなぜか狼のときの姿と重なる。犬となったスズとじゃれあっているときの狼の表情は、安心しきっているときの顔だったのだと、スズは今さらながらに悟った。
そんなルーの顔を見て、スズは自然とこんなことを口走っていた。
「――部長がよければ、なんですけど」
「……なにかな?」
「『モフり同盟』、結成しませんか?」
ルーがまたおどろいた様子で目をぱちくりとさせる。その顔にはやはり、狼になったときの面影がなんとなく見て取れた。
「お互いをもふもふしあって、お互いに癒されませんか?」
スズの言葉に、平素であれば精悍な印象を与えるルーの目元が、柔らかく緩んだ。
「いいね、それ。……愛らしい貴女とこれからもいっしょにいられるのは――うれしい」
「愛らしい」がかかっているのは、犬の姿のときのことだろうと察しながらも、スズは気恥ずかしくも嬉しい気持ちになった。
かくして「モフり同盟」が結成されたが――そんなふたりが恋人同士の関係になるのは、そう遠くない未来の話である。
そうスズは心に決めていたものの、時間と共にその決意もゆるんでくる。
繁忙期が明け、あと数日で狩りのシーズンに突入する。そうなれば、日暮れ近くとは言えども、犬に変身して森を駆け回るのは危険だ。となるとがぜん、スズは「変身収め」とでも言うべき、狩りのシーズンの前に一度犬になって森を走り回りたくなってしまう。
スズは酒や煙草はたしなまなかったし、散財や暴食することにも特に魅力を感じていなかった。犬に変身して野を駆け回ることは、スズのほとんど唯一のストレス発散方法だったのだ。
けれどもルーがスズの上司になった……なってしまったことで、スズは犬に変身することを控えていた。だが、そうやって我慢するのもそろそろ限界だ。
ほんの少しだけ。ほんのいっとき、森へ行きたい――。
スズはその誘惑に抗えなかった。
……そしてこのザマである。
「ごめんね、レイシーさん。ふたりきりで秘密の話をするには、この森が一番ちょうどいいかなって思って……」
スズのファミリーネームを申し訳なさそうに呼んだのは、ほかでもないルーである。人語を話しているのだから、今は当然人間の姿をしている。木立ちのあいだから不意に現れたルーに、おどろいて比喩ではなくスズは飛び上がった。久々に森を駆け回る快感に夢中になっていたら、これだ。
「あ――に、逃げないで……!」
スズはまた例によって遁走しようとしたが、ルーの声があまりにも哀れっぽかったこともあるし、そもそも正体が上司でもあるルーにバレていることを考慮して、逃げ出したい気持ちをどうにか押さえ込むことには成功した。
犬に変身したまま、スズが立ち止まって振り返れば、ルーはあからさまにほっとした顔をして近寄ってきた。
「元に戻りたくないなら、そのままでもいいよ。ただ、私の話は聞いて欲しくて……」
スズは迷った。そして悩んだ末に、犬でいることにした。犬でいるあいだは人語をしゃべることはできない。だんまりでも、不自然ではない。そういう少々卑怯な心境から、スズは白い犬のままでいることを選んだ。
ルーは精悍な顔つきに反して、目元を和らげて、膝を折る。その場で地面に尻をつけ、「お座り」の体勢を取るスズと、大体同じ目線の位置になる。ルーのこういった行動にわざとらしさやぎこちなさがないから、スズの中から、逃げ出したい気持ちも自然と抜けていく。
「……貴女が半獣半人だろうことは、なんとなくわかっていた」
……スズはいきなり落とされた爆弾に、その場から逃げ出したい気持ちが首をもたげたのを感じた。
「このあたりの森は数年前に大規模な野犬狩り、狼狩りをしていて……町の中には半分野良の犬はちらほら見られるけれど、森の中にはほとんど姿を見なくなっていたから」
スズは地方の……言ってしまえば、田舎の出身である。就職と同時に王都にやってきたので、ルーが告げてきたような事情があったことは、まったく知らなかった。
「だから私も、安心して狼になってのんびりしていたんだけれど」
……思えば、スズはルー以外の狼には会ったことがなかった。しかしそれを不自然だと捉えられるほどの知識がスズにはなかったのだ。それとスズがどちらかといえばのん気な性格をしていたことも理由のひとつだろう。「そういうこともあるだろう」と楽観的に考えていたのだ。
「先に言ったように貴女が半獣半人の、人間だろうことは薄々わかっていた。それでも――」
ルーはそこで一度言葉を切り、それから万感の思いがこもっていそうな声で言った。
「あんまりにも疲れていたから……その、貴女とのスキンシップには大いに癒されていて――」
ルーは恥ずかしそうに目を伏せた。
スズは黒い目をぱちくりとまたたかせた。
そして――スズはやおら人間に戻った。
「わかります! もふもふの動物と触れ合うと癒されますよね!」
そしてルーと同じように膝を折った体勢のまま、大いに同意した。今度は、ルーが目をまたたかせる番だった。
「部長はもふもふしていて可愛くて……でも顔つきとかがとてもかっこよかったので……そのギャップがまた――ハッ!」
ルーがおどろいたような顔をしたまま固まっているのを認め、スズは熱弁していた顔から反転、青ざめさせて謝罪する。
「体をすりつけたりとか……セクハラですよね……ごめんなさい」
「い、いえ……それなら私のほうこそ、ですよ。貴女が半獣半人だとなかばわかっていたのに色々と……その、色々としましたし……」
「いえ、その……お気になさらず……」
「でも……」
「いえいえ……」
ふたりのあいだに、気まずい沈黙が落ちる。
ややあってから、それを先に切り取ったのはスズだった。
「でも……部長のおかげで助かりました」
「……え?」
「つらいとき、苦しいとき。部長がいてくれたから頑張れたんです。魔方陣職人はずっと昔からの、わたしの夢だったんですけど、前の部長はあんな感じでしたから……」
スズは、この森で出会える若い狼に――ルーを心の支えに、職場にまかり通っていた理不尽にも耐えることができた。それだけはゆるぎようのない事実だった。だから、その感謝の気持ちだけは伝えたいと思ったのだ。
「私も同じようなものだよ。そのころは前の上司の不正の証拠を積み上げていたんだけれど、やっぱり、色々とつらくてね……。だから狼になってこの森にいるあいだだけは、そのつらさを忘れられた」
「そうだったんですか。……わたしたち、似たもの同士だったんですね」
「……ありがとう」
「え?」
「そう言ってくれてうれしい。貴女には嫌われても仕方がないと思っていたから」
「……嫌うわけ、ないじゃないですか。部長は密猟者からわたしを助けるために、人間に戻ってくれたんですから……」
ルーはほっと安堵したように微笑んだ。その顔がなぜか狼のときの姿と重なる。犬となったスズとじゃれあっているときの狼の表情は、安心しきっているときの顔だったのだと、スズは今さらながらに悟った。
そんなルーの顔を見て、スズは自然とこんなことを口走っていた。
「――部長がよければ、なんですけど」
「……なにかな?」
「『モフり同盟』、結成しませんか?」
ルーがまたおどろいた様子で目をぱちくりとさせる。その顔にはやはり、狼になったときの面影がなんとなく見て取れた。
「お互いをもふもふしあって、お互いに癒されませんか?」
スズの言葉に、平素であれば精悍な印象を与えるルーの目元が、柔らかく緩んだ。
「いいね、それ。……愛らしい貴女とこれからもいっしょにいられるのは――うれしい」
「愛らしい」がかかっているのは、犬の姿のときのことだろうと察しながらも、スズは気恥ずかしくも嬉しい気持ちになった。
かくして「モフり同盟」が結成されたが――そんなふたりが恋人同士の関係になるのは、そう遠くない未来の話である。
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