呪われている。

やなぎ怜

文字の大きさ
上 下
4 / 4

(4)

しおりを挟む
 *


(とあるネット上の書き込み)


友達の先輩から聞いた話なんだけど。
その先輩には霊能力者?の知り合いがいたらしい。
ただ、その先輩は霊能力とかは信じてなかったらしいけどw
で、その霊能力者の知り合いから聞いた話。
典型的な「友達の友達の…」って話なんだけど、ちょっと興味深かったので書いてみる。
無駄に長くなったんでウザかったらスルーしてくれ。

霊能力者の人(以下Aとする)にあるとき依頼が舞い込んだ。
依頼人は男性で、最近離婚してて小学生の娘が一人いる。
で、その娘が呪われてるんでどうにかできないかっていう話だった。
その呪い?とやらは足跡という形で現れて、依頼人の家族をどこまでも追いかけてくるんだって。
はじめは家の周囲に現れて、一定期間が過ぎると今度は家の中に現れる。
それで家の中は砂や泥やらの足跡だらけになるんだと。
で、そうなると依頼人一家はまた遠い場所へ引っ越すんだと。
追いつかれるとどうなるかはわからないらしいが、依頼人の元妻が悪夢を見ていて、
詳細は話さないんだけど(なんで?)、でも追いつかれるとよくない、っていう認識は一致していたらしい。

蛇足だけど離婚の原因は元妻が宗教に走ったからだって。
娘の呪いを解こうと必死になった結果なのかね?
このあたりは友達も詳しくは聞いてないので不明。
ただ、娘の呪いが嫌になって離婚…とかではないらしいのは確か。

で、Aはその依頼を一応受けた。
依頼人によると今までに色んな霊能力者を名乗る人間に会ったけど、
どいつもこいつも駄目だったらしいが、Aはまあ一度会ってみないとわからないからって、受けた。
娘は依頼人の親戚の田舎に預けられてて、Aはそこに行って娘と会った。
なるほど確かに呪われてる。
無数の怨念のようなものが、絡まった髪みたいになってて、それはそれは強い呪いだったらしい。
そこらの霊能力者が裸足で逃げ出すのもわかるような、それくらい強い相手だったんだって。
なんで小学生の娘がそんな厄介な呪いを受けているのかは、最後までわからなかったってさ。
ただ、運が無かったんだろうって話。

それでAは娘の呪い…というか憑いてる怨霊?を祓うことにした。
ただ、そうしても娘は無事ではいられないかもしれない、ってことを
依頼人と娘が居候してる親戚の人には話したらしい。
で、結果から言うと、呪いは解けて、足跡はもう娘のところには現れなくなった。
けど娘は廃人になっちまった。
なんでかって言うと、神様に魂を抜かれちゃったから。

Aは依頼を受けた日から夢を見るようになったんだそうだ。
そこにはヘドロみたいなやつが出てくる。
でも、それは悪霊とかじゃなくて神様なんだってAにはわかった。
その神様はAの夢に現れて、簡単に言うと「言うこと聞かなきゃ呪うぞ」みたいなことを言ったらしい。
俺は娘に憑いてるのがその神様(明らかに堕ちてちゃってる感じだけど)なのかなって思ったけど、
Aによると娘に元から憑いてるのとその夢に現れた神様は別物なんだと。
そんで夢を見た日からとにかくAはツキが落ちたような感じになった。
命の危険も感じて、従わないとヤバイ、と思ったらしい。

で、その神様が要求したのがAの依頼人の娘の魂。
なんでそんなもんが欲しいのかは神様は言わなかったらしく不明。
明らかに荒神系っぽいし、食べるためなのか…はてまた別の理由があるのかはよくわからん。
Aはその神様は山神だと言っていたから、やっぱり人身御供系なのかな?
山神は女が多いから惚れて…ってことはなさそうだし。

まあそういうわけで、Aはその神様に屈して娘の魂を差し出しちゃったってわけ。
ひでえ話だなーと思ったけど、神様が夢に出てきたタイミングでAの母親が倒れて、
難病指定を受けるような病気だって発覚したらしくて、
Aは母親の命が惜しくて結局神様の言うことを聞いちゃったらしい。
まあ、娘とその家族にとってはどっちにしろ酷い話なんだけどさ。

それ、問題にならなかったの?ってもちろん思うよな?
やっぱり民事で訴訟を起こされたらしい。詳細は知らない。
ただ魂抜く儀式?とかで山に入ってそこで娘が廃人になっちゃったらしいから、
監督責任とかそのあたりが問題になったのかも?俺は法律に詳しくないから知らんが。

そんでAは地元から逃げ出した。
娘が預けられてたところとAの地元は結構近かったから。
これもAが神様にロックオンされた理由のひとつなのかな?
まあ、そういうわけでAは神様に恐れをなして霊能力者も廃業したんだってさ。
この話が聞けたのは、友人の先輩が出張先でたまたまAと再会したから。
Aは、だれにでもいいからこのことを話したかったらしい。
Aによると昔は話そうとするとヤバイ感じがしたけど、
最近になって落ちついてきたから先輩に話せると思って話したんだと。

民事の方は結局訴えた側の元依頼人とか、弁護士とかが
バタバタと事故に遭ったり病気になったりしたんでうやむやになっちゃったらしいよ。
神様パワーなのかね?
滅茶苦茶な要求する割には、アフターケアがちゃんとあるんだなと思ったよ。

Aはなんかいつも影が見えるらしい。
視界の端にチラチラと映るんだって。
Aによるとそれは神様の監視役らしい。
家の中にいても、外にいても見えるから疲れるって。
ただ、今はもうだいぶ慣れちゃったらしいけど。なにかしてくるわけじゃないし。
でもAは明らかに憔悴している感じだったそうだ。
身だしなみとかにも気を使っていないと言うよりは、そういう余裕がない感じに見えたって。
霊能力者の商売ってボロそうだと思ってたけど、
こういう風になっちゃうなら御免だなって言うのが友達の先輩の談。
確かに普通の病気とかと違って薬とかでどうこう出来ないから厄介だよなーと俺も思った。

長くなったけどこれで話はおしまい。
神様に片棒担がされた霊能力者の話でした。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

怪談実話 その2

紫苑
ホラー
本当にあった怖い話です…

怪談実話 その3

紫苑
ホラー
ほんとにあった怖い話…

182年の人生

山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。 人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。 二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。 (表紙絵/山碕田鶴)  ※2024年11月〜 加筆修正の改稿工事中です。本日「59」まで済。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

学校の七不思議って、全部知ったらどうなるの?

藍音
ホラー
平凡な中学1年生のミナの日常はある日を境に変わっていく。 なるべく、毎日更新でホラー大賞期間中の完結を目指します! よろしくお願いします。 学校って・・・不気味だよね。ふふふ。

人の目嫌い/人嫌い

木月 くろい
ホラー
ひと気の無くなった放課後の学校で、三谷藤若菜(みやふじわかな)は声を掛けられる。若菜は驚いた。自分の名を呼ばれるなど、有り得ないことだったからだ。 ◆2020年4月に小説家になろう様にて玄乃光名義で掲載したホラー短編『Scopophobia』を修正し、続きを書いたものになります。 ◆やや残酷描写があります。 ◆小説家になろう様に同名の作品を同時掲載しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

呪配

真霜ナオ
ホラー
ある晩。いつものように夕食のデリバリーを利用した比嘉慧斗は、初めての誤配を経験する。 デリバリー専用アプリは、続けてある通知を送り付けてきた。 『比嘉慧斗様、死をお届けに向かっています』 その日から不可解な出来事に見舞われ始める慧斗は、高野來という美しい青年と衝撃的な出会い方をする。 不思議な力を持った來と共に死の呪いを解く方法を探す慧斗だが、周囲では連続怪死事件も起こっていて……? 「第7回ホラー・ミステリー小説大賞」オカルト賞を受賞しました!

処理中です...