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8話

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 ずぷんっと沈んでいく太くて節くれだった、自分とは異なる指の感触に、背筋をぞくぞくと快感が駆け上る。相当な数をこなしてきた今でも、慣れないものを受け入れる時は身体が緊張してしまう。わずかに押し返すように蠕動する肛道に逆らって、浩平は戸惑うことなく指を突き入れていった。

「? 意外と柔らかいんすね……」
「あっ♡ ん、すこし、準備してたからぁ♡」
「準備って、もしかして風呂でですか?」

 中の柔らかさを確かめるように、入れた指を2本まとめてぐるりと回される。

「ひゃん……っあ、そうっ、そうだよっ……♡」

 その指が良いところを掠めると、自然と俺の口からは大きな嬌声が溢れてしまう。

「へぇ……風呂に入った時は、セックスの話なんてしてなかったのに。美鳥さんはその時から、ヤる気満々だったんだ?」
「あぁっ! や、だってぇ……ごめんなさいっ♡」

(何? 何これっ⁈ この指テクなんなの……⁈)

 浩平の指は、童貞にあるまじき絶妙な力加減で、確実に俺のイイトコロを突いてくる。教えてもいないのに、前立腺を捉えて離さず、いつの間にか指も増やされてしまい、今では俺の中に太い指が3本も入っていた。ぬちゅっ、ずちゅっ、と容赦なく抽送される指技に翻弄されて、俺の身体は陥落寸前だった。

「ま、まって……待って! 止まって!」

 まだ浩平は一度もイっていない。
 それなのに俺が先に、後孔を指で弄られるだけで射精するなんて。そんなことは童貞食いを自称する俺のプライドが許さなかった。必死に踠いてその手から逃れようとするのだが、浩平の腕ががしりと腰に回っていて、ろくに動くことが出来なかった。

(こいつ……っ!)

「やぁっ♡ だめ、離してっ!」
「なんでですか? 美鳥さん、こんなに気持ち良さそうなのに。中すごいぐねぐねしてますよ。もうすぐイきそうなんじゃないんすか?」
「あぅうっ、うそ、やだっ♡ イっちゃう♡ イく、イくぅ……っ♡」
「可愛い、美鳥さん。たっぷり出して」
「イヤっ、や、ぁ、あっ、ああぁあーーーっ♡♡♡」

 俺は屈辱的なことに、後孔に浩平の指を咥えたまま、それをぎちぎちに食い締めながら盛大に吐精した。縋るものが他になくて、俺は目の前にあった浩平の身体にしがみつく。射精の快感で震える俺の身体が落ち着くのを、浩平は後孔から指を抜くことなくジッと待っていた。
 だんだんと波がひいていき、呼吸も正常に出来るようになってきた。俺の腹部と浩平の胸元は、先ほど俺が吐き出した白濁でしとどに濡れていた。一人だけ先にイってしまったことが悔しくて恥ずかしくて。俺は涙目になって浩平を睨みつけた。

「なんで……なんで、そんなに上手なの⁉」
「上手ですか? 嬉しいな」

 こちらは怒っているのにそれを完全に無視して、浩平はちゅっちゅと顔にキスを落としながら、俺の身体をベッドに押し倒してくる。
 たいした抵抗も出来ないまま、のし掛かられた俺は、悪辣な微笑みを浮かべて上から見下ろすようにこちらを見る男の姿に、きゅんと後孔を疼かせた。

「男性とは初めてですけど、前の前の……その前の彼女とだったかな? とりあえず元カノとアナルセックスはしたことあるんで」
「か、彼女……⁉」
「はい。あれ、俺、彼女いたって言ってませんでした?」
「聞いてないっ!」

 とんでもない発言に演技も色気も吹っ飛んでしまう。

 は?彼女?
 しかもその口ぶりだと、相当な数の女と付き合ってきたって事だよな???

 浩平は目を見開いて驚愕する俺を見て、それはそれは愉しそうに笑った。

「そうでしょうね。隠してましたし」

「な……っ」

「美鳥さん、童貞くさいやつが好きなんですよね? あのジムで他に何人も食ってんの、知ってるんすよ」
「………っ!」
「はじめて見た時から、男のくせにエロい身体してんなぁって思ってました。姿を目で追うようになったら、多分ゲイなんだろうなって分かってきて。好みのタイプに気づくまで時間はかかりませんでしたよ」

 何なに?なんなの?
 この目の前にいる男は一体誰だ?

 ちょっと身体を触ってみたり、こちらの身体を見せると、真っ赤になって目を逸らしてた、大型犬みたいに可愛いあの子は?

 こんな意地悪く嗤って、獣みたいにギラギラした目を俺に向けて、吐き出した精液を広げるように、いやらしく身体を撫で回す。こんな男、俺は知らない。

「普通に通っていた時は、俺のことなんか見向きもしなかったのに。ちょっと童貞っぽく? 恥ずかしがっている演技とかしてみたら、すぐ引っかかるんだから。笑っちゃいましたよ」
「お前……っ、演技なんかしてたのかよ!」

 逆ギレ甚だしい台詞だと分かってはいるのだが、思わずそう突っ込むと、浩平は悪びれもせず言葉を返してきた。

「それはお互い様みたいですけど? さっきから素が出てますよ」
「っ!」
「あー、しんどかったなぁ。あんたが可愛いちんちん擦り付けて誘惑してくるのに、何でもないフリするのも。この可愛いピンクの乳首も、たくさん見せて、触らせてくれましたよね?」
「あンっ♡ ちょっとっ、まだ話し……っ」

 浩平はTシャツを捲り上げると、つんと尖がった俺の乳首をぐりぐりと転がし始める。こんな乱暴に弄られるのは久しぶりだ。いつも自分で虐めて楽しむか、相手に指示を出しながら気持ちよくなるかのどちらかだったから。
 にやにやとイヤな笑いを浮かべながら、敏感な乳首をしゃぶられる。熱い舌でねっとりと愛撫されると、怒っているというのに腰が自然と跳ねてしまうのだ。悔しい。

「散々ムラムラさせたんだから、どうなるか分かってるでしょ」
「っ、ひんっ♡」

 優しく歯を立てられて、その刺激で少しだけ俺のペニスから白濁が‬漏れる。




「覚悟、してくださいね……♡」





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