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3話
しおりを挟む「ねぇ浩平くん。良かったら俺にこのマシンの使い方、教えてくれないかな? 腹筋を鍛えたいんだけど、これを使うのは初めてで……」
「え、俺でよければ……。でも美鳥さん、鍛える必要あります? ダイエットもいらなそうだし、まさかムキムキ目指してるわけでもないっすよね?」
その質問を待ってましたとばかりに、俺は笑みを深くすると、おもむろに浩平の手を取る。驚く彼を無視して、その手をグイッと自分のTシャツの中に招き入れた。
「ムキムキは目指してないけど、ほら触ってみて。けっこう脂肪付いてない? ビール腹ってやつなのかなぁ。俺なかなか筋肉もつかないんだよね~」
そう言いながら、固まる浩平の手で自分の腹を撫でていく。
あー、おっきな手。指も太くて皮膚が硬い。
この手を後孔に突っ込んで動かしたら気持ちがいいだろうなぁ。
自分の指と一緒に、その指を使って後孔をほぐす時の事を考えると、自然と顔が緩んでくる。一言も発さない浩平が気になりはしたが、頭の中がピンク一色に染まった俺は、無意識にその手を上へ上へと導いてしまう。
「あんっ♡」
硬い指先が敏感な乳首を掠め、小さな嬌声が溢れてしまった。自分の口から飛び出たそれに、ハッと意識を取り戻した俺は、今ここがその他大勢もいるジムのトレーニングルームなのだということを思い出した。
(まずいまずい……。さすがに公衆の面前で、やましいことをしたい訳ではないんだ)
「ご、ごめんねっ変な声出して! 俺、擽ったがりで……」
自然と赤くなった顔で浩平の方を見ると、俺以上に頬を染め上げた男は、ギラギラとした眼でこちらを見ていた。
先ほど出てしまった声は計算ではなかったが、どうやら彼をその気にすることは出来たようだ。このまま一気に進めてしまおうじゃないか。
「浩平くん……」
「……た、体質的な物もあるかもしれないすけど、トレーニング内容に問題がないなら、食事ですかね。普段どんなもの食べてます?」
「えっ? えと、仕事がけっこう不規則だから、コンビニが多いかも……?」
「それだとやっぱりダメかもですね。腹筋を鍛えたいなら……―――」
あ、あれれー??
たしかに顔は真っ赤なのに、急に真面目な雰囲気になってしまったぞ。理学療法の勉強中って言ってたし、なんか変なポイント突いちゃったかな。
(ま、今日は様子見だし。脈ありだって分かっただけでもいいか)
結局その日はそのまま、真剣に俺の肉体改造について考えてくれている浩平の話を聞きながら、腹筋用マシンや他のものを試すだけで終わった。でも、帰る前にメッセージアプリのIDも交換したし、次も予定を合わせてジムに来ることが決まったので良しとしよう。
その日の俺は、近々美味しく食べることの出来そうな、極上の体躯に想いを馳せて、意気揚々と帰路につくのだった。
***
さて。今日は浩平と約束していたジムの日。
あれから元彼には適当に理由をつけて別れ話をした。めちゃくちゃ引き止められたし、今でも引っ切りなしに連絡が来るが、残念だけど俺にはもう新しい童貞クンがいるからさ。新しい彼氏か彼女を見つけて、俺が磨き上げた巨根で、どうかその子を気持ちよくしてあげて欲しい。
「美鳥さん!」
「浩平くん。遅くなってごめんね~」
「いえっ、お仕事お疲れ様です」
俺の姿を見付けると、まるで大型犬みたいに全身で喜びを表現してくれる。見えない尻尾がぶんぶんと振られているのが想像できるくらいだ。
「柔軟してたの? 俺もやろっと」
「はい。ここのスペース使ってください!」
今日は勝負を仕掛ける日。この間会った日から今日まで、毎日メッセージを送り合っていた。1日一通だけの日もあれば、何通もやり取りをすることがあったり、その頻度はまちまちだったが、だいぶお互いのことも話してきたと思う。浩平が俺に好意を持っていることは文章からも明らかで。直接的な言葉は言われていないが、今日はその背中を押すために、ちょっとだけこちらから誘惑してみようと思う。
「浩平くん、本当に身体固いんだね~」
筋肉がつきすぎたせいなのか、身体が固いことが悩みなのだと話していたのを持ち出して、開脚して身体を前に倒している浩平の背中へ近づいて行く。するりと背中を撫でると、彼の身体が面白いくらいビクついた。
「っは、はい。だから、柔軟は多めにやらないと……」
「俺が手伝ってあげるよ♡ こういうのって一点を集中して押すのは良くないんだって。ちょっと体重かけるから、重かったら言ってね?」
「っう……!」
目の前で背中を丸めているところへ、沿うように身体密着させる。のし掛かるように体重を預けると、伸ばした腕を床につけ、重さを調整した。浩平とは上背が違うので、その背を乗り越えて手をつけるには、下腹部の方までその身体にくっ付けるしかない。
要は俺のちんこが浩平の背中へ、ばっちり押し付けられている状態なのだ。
流石に何もしていないのに勃起ちんこを擦り付けていたら、ただの変態になってしまうので、まだそこは兆していない。とはいえ一般男性として通常サイズではあるおれのモノは、柔らかな感触を浩平の背中へ伝えているだろう。
「ん~ほんと、カタいなぁ♡ 頑張れ、頑張れ♡」
「………っ」
グイグイと、ふにゃりとしたソレを押し付けるようにしながら、少しずつ体重をかけていく。ぷるぷると震える身体は痛みのせいか、興奮のせいか……。
どれくらい持つかなぁと考えていると、床についていた手を掴まれて、そのまま俺の体重に逆らって勢いよく身体を起こされてしまう。
「あっ♡」
「っ、美鳥さん……っ」
(もしかして、このまま直行お持ち帰りコースもアリかも?)
起き上がる勢いに負けて、そのまま後ろへ尻餅をついた俺は、開脚をして先ほどまで密着していた股間を晒す格好をして浩平を見上げた。浩平は目論見どおり欲情に揺れる瞳で俺を見る。
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