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2話
しおりを挟む「……よかった、今日も居た♡」
俺はこの数年通っている、スポーツジムへと来ていた。そこはトレーニングマシンが豊富で、ダイエット目的の軽い感じで訪れる人や、本格的な筋力アップを目指して鍛え上げている人まで、年齢も目的もさまざまな人が通っているジムだった。
そこで最近よく会う男の子がいる。
多分大学生くらいの若い子で、なかなか逞しくていい身体をしたイケメン。なによりちんこがデカそうなのだ。少し薄い生地のジャージを着ている時なんか、服の上からでもずっしりとした質感が見てとれた。
そんな成熟した身体とは相反して、チラチラと視線を感じてそちらを見てみると、目が合った瞬間パッと顔を逸らされる。あれくらい身なりが良ければ、相当モテてきたと思うのに、あまりに初心すぎる反応に初めは驚いたものだ。ああいうタイプは大抵「俺がお前を抱いてやるよ」っていう感じの、押し付けがましい感情を全面に出して迫ってくるのがよくあるパターンだった。しばらく様子を見ていても、彼の態度は一向に変わらなくて。そこで俺の童貞センサーがビンビンに反応したってわけ。嬉しい誤算だったよね。
こちらの様子を窺うようなその行動と、目を逸らした後の赤くなった耳を見れば、100%俺のことを意識していることが分かる。だが、童貞(仮)の彼は自分から行動を起こすことはしなかった。
(ただこっそり眺めるだけで満足してるなんて。可愛いなぁ。ま、こちらはそれに気付いてるんだけどね)
なにせ生まれた時からずっと目立つ容姿をしているのだ。羨望・好奇・嫉妬……様々な感情をぶつけられてきたので、自分に向けられた視線に敏感になっても仕方ないだろう。
彼を次のターゲットと決めたからには、なんとか接点を作らなくてはならない。獲物が腹筋を鍛えるためのトレーニングマシンを終え、別のところに移動しようと準備を始めた瞬間。俺はその動きを遮るように相手に話しかけた。
「あの、次それ使ってもいいかな?」
「え……、っは、はい!」
突然声をかけられて振り返るも、その相手が俺だと気付いて明らかに動揺している。
(あ~、顔真っ赤だし。かっわいーなぁ♡)
ジムに置かれた物を共同で使う際のマナーとして、使用後のマシンについた汗を拭いているが、慌てているため色んな所に身体をぶつけていた。
「ふふっ。急いでないので、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ?」
「あ、は、はい……すみません」
そう言われて、はにかんだ様に笑う顔が可愛らしい。大人っぽく見えていたが、こういう表情をすると年相応な雰囲気になるようだ。まさに好青年って感じで好感が持てる。
「はじめまして、だよね? 俺、柳瀬美鳥っていいます。26歳なんだけど……君は大学生、かな?」
「あ、はい! 市川浩平ですっ常誠大3年で、理学療法の勉強をしてます! 好きな食べ物は焼肉です!」
「あははっ、なんか合コンみたいだね。教えてくれてありがとう」
よくあるテンプレに沿って、聞いてもいないことをつらつらと話し出した相手に、素で笑ってしまう。
常誠大といえば、このジムから2駅くらい離れたところにある大学だったかな。学校から少し離れた駅が最寄りのジムに通ってるということは、家がこの辺りにあるんだろう。
(ご近所さんか~。ちょっと面倒かもだけど、最悪ジムも辞めれば良いし。なんとかなるか)
思いがけず仕入れることに成功した個人情報から、素早く相手を見極める。気になっていた人に突然話しかけられて動揺する姿も、一生懸命アピールしようと自己紹介する姿も、なんとも可愛らしくて感じて俺には無いはずの母性を擽ってくるのだ。
こちらが少し笑顔を見せれば、ぽやっとそれに見惚れるような表情をして。あまりに分かりやすいので面白いぐらいだが、この子とならきっと楽しい脱童貞セックスを出来そうだと判断する。
「あまりこのジムで仲良い人いなかったから、年齢が近い子と知り合えてよかった♡ あ、でも26歳なんて、君からしたらおじさんだったりする?」
「そんなことないっす……! 柳瀬さん、めちゃくちゃ綺麗ですし!」
「えー、そんなストレートに褒めてくれるんだぁ。照れちゃうな」
綺麗だと言われることは少なくないが、ここまで直球で褒められるのはあまり無い。キラキラした目をして、前のめりでそう言われると、演技でもなく照れ臭くなってしまうものなんだな。
「よかったら俺のことは美鳥って呼んで? 女っぽいって揶揄われる事もあるんだけど、結構気に入ってるんだ。そのかわり俺も浩平くんって呼ばせてよ」
「もちろんっ、そうしてください。俺も……み、美鳥さん、て呼びます!」
「うん。ありがとう♡」
トントン拍子で進みすぎて怖いくらいだけど、もしかしたら今日にもお持ち帰り出来ちゃうんじゃない?
本当にセックスするかは置いておいて、ちょっと味見するくらいなら許されるだろうか。大きそうな逸物も拝んでみたいしね。
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