43 / 55
喧嘩をしたみたいです!*
しおりを挟む押し付けられたペニスが、ぐぷ……とわずかに歩夢の後孔へと含まされる……――
「うっ、ううう……っ、ゔ~~~~っ!」
「……お、おい、歩夢?」
「うえぇぇっ……、も、やだよぉ……おっ、おだわらさん、怖いぃ……っ」
キスもしない。顔も見えない。
ただひたすらに小田原の怒っているような気配だけが伝わってきて、歩夢は快感に染まり切ることが出来ない。気持ちいいはずなのに、心と身体がどんどん冷えていく。
気づけば歩夢のペニスはくたりと力を無くしており、しゃくり上げながら涙をこぼす姿は憐憫の情を覚えずにはいられない。
「ちっ、くそ……っ」
さすがにまずいと思ったのか、小田原は早々に後孔を押し拡げていたペニスを抜いた。押さえ付けられていたものがなくなると、カクンと膝から力が抜けて、歩夢はそのままへたり込んでしまう。
「……悪い。やりすぎた」
ひっく、ひっく、と肩を揺らし顔を伏せている歩夢に、小田原がぽつりと呟いた。
「…………出てって……」
「歩夢……」
「っ、いいから、出てってよ……!」
小田原の方を一切見ずに、歩夢はそう言い放つ。
顔なんて見たくなかった。
とにかく早く一人になりたくて、嗚咽を堪えて小田原が居なくなるのを待っていた。
「……悪かった。監督には……少し遅れるかもって伝えておく」
「…………」
元より用意していたのだろうか。歩夢のそばにタオルを置きながらそう呟いた小田原に、返事もしないで無視していると、しばらくしてから静かに扉が閉まる音がした。
部屋の中から小田原の気配がなくなった途端、急に肌寒さを感じて身が震える。
一体何がどうなって、こんなことになってしまったのか。
「……っ、なんなんだよ……! 意味分かんない……っ」
涙をぬぐいながら、置かれたタオルを壁に投げつける。が、べたべたに濡れた身体や床を拭くために、自分で投げたそれをもう一度拾う羽目になった歩夢は、そのことすら小田原のせいだと腹を立てた。
(小田原さん意地悪すぎるよっ。なんか分からないけど、すごい怒ってたし……)
なんであんなこと、するんだろう?
そんなに自分のことが気に食わないのか?
いいや。確かに今日はおかしかったけれど、いつもの練習ではもっと優しい。耳元で囁かれる言葉も、身体を撫でる大きな手のひらも、蕩けそうなくらい甘くて、壊れモノを扱うみたいに優しくて……。
「……っ」
その時のことを思い出しだだけで、背筋にゾクゾクした痺れが走る。
では、どうして今日はあんなに意地悪だったのだろうか。いつもの練習と違ったことはなんなのか、記憶を辿ってみる。
「……俺が永瀬さんと話してたから、とか……?」
永瀬のすけべな悪戯から助けてもらったのは二回目だ。ただそのことに怒っていたという可能性もあるが、控室から出たばかりの時はいつも通りだった気がする。そのあと口論みたいな感じになって……その時は少し様子がおかしかったような。そう思ったら練習の最中も、やたらと永瀬さんの話をしていた気がしてきた。しかしそれが何故なのかは、歩夢にはわからない。
「もしかして、ヤキモチ……なんてことは……」
ふと頭に浮かんだことを口に出し、歩夢は自分で言った内容に思わず照れてしまった。
(まさかとは思うけど、小田原さんって俺のことが、す、す、好き……、だったりして……っ!?)
そう考えれば、いろんなことがなんとなく辻褄があってくるような気がする。
こんな練習にいつまでも付き合ってくれているのも。
意地悪だけど、困った時にはいつも助けてくれるのも。
永瀬との関係を疑ってきたりするのも。
全部、自分のことが好きだから……だとしたら? そんなことを考えていたら、歩夢の心臓はおかしいくらいドキドキと音を立て始める。先ほどまでの、意味不明な悲しみに襲われるのとは少し違う、なんとも言えない変な気分だ。
もっと他になにか理由があったのかもしれない。歩夢がした何かが気に食わなかったのかもしれない。そうだったとしても、理由も分からずモヤモヤしていることが歩夢は気持ちが悪くて仕方がなかった。
(小田原さんに会って、聞いてみたい。練習は、いい、けど……ああいう無理やりなのは嫌だって、ちゃんと話をしよう……)
――……そう思っていたのに。
身なりを整えて向かったスタジオには小田原の姿はなく。不思議に思いながらも収録を終えて楽屋に戻ると「今日は電車で帰ってください」というメモだけが歩夢の荷物の近くに残されていた。
0
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる