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ひと泡吹かせたいんです!

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 歩夢の演技が終わりだと知ると、小田原がゆっくり目を開け、不気味なほど爽やかな笑顔を浮かべた。

「30点。全然だめ」
「なっ……」

 渾身の出来だと思った内容がまさかの低評価。せめて80点くらいはくれても良いのではと、歩夢は小田原の辛口評価に愕然とする。

「とにかく最初から最後までお綺麗過ぎんだよ。昨日はもっと、とろとろになった声出してただろ」

 全部頭で考えて発声してるんだろうけど、それが計算っぽく聞こえて萎える。もっと自然な感じで声を出せ。なんて言われてしまったら、一体どうしたらいいのか。

(一つずつシーンをかみ砕いて、ようやくミオの気持ちが分かってきたと思ってたところなのにっ。そもそも自然な演技って何だよ?!)

 ただの意地悪と受け取ることも出来るが、小田原がマネージャーになってからの数週間、この男が仕事に関しては一切手を抜かないということが分かってきた歩夢は、その批評を真摯に受け止める。
 いくら虚構の世界であるとはいえ、そこに存在しているキャラクターたちがまるで生きているかのように感じさせるのが、自分たち声優の仕事だと思っている。分かってはいても、まだ自分の知識と実力が付いていっていないのだ。
 自分の力不足を痛感し、歩夢が思考の迷路に迷い込んでいると、それに見かねた小田原が細い腕を掴み引き寄せた。

「おら、こっち来い」
「わぁっ?!」

 突然の暴挙に驚いた歩夢は目を白黒させる。いきなり引っ張られた身体は、踏ん張ることも出来ず、ソファに座る小田原の身体に倒れ込んでしまう。自分を抱き留める逞しい体躯に昨日の出来事を思い出しそうになるが、そんな考えを必死に振り払いながら歩夢は口を尖らせた。

「ちょっと! いきなり何するんだよ!」
「いいから。ほら」
「っひぁん……っ!?」

 一切遠慮のない大きな手に、何の断りもなくペニスをまさぐられる。驚きの声が思ったよりも艶やかなものになってしまい、歩夢は慌てて両手で口を押えた。
 そんな歩夢の様子を面白そうに眺めていた小田原は、口の端をくっと上げると、してやったりという表情で手の動きを激しくしていく。

「ほらな。難しく考えんな。もっと頭空っぽにして……思わず出ちゃいましたって声がエロいんだよ」
「ぁあっ! ぁっ、あっ……♡ やだぁ……!」
「くく……上手上手」

 小田原の上から逃げようと藻掻いても、がっちりと抑え込まれた身体は手足をバタつかせるだけで解放されえることはない。必死な歩夢と対称的に、そのふざけた態度を崩さない小田原に歩夢は苛立ちが隠せなかった。
 なんとか一泡吹かせてやりたくて、ふと見上げたすぐ先にあった小田原の唇に、ぶつかるようにキスをする。まさか歩夢からキスをされるとは思ってもいなかった小田原は、今までにないくらい目を大きく見開き、流石に動きをぴたりと止めた。その様子を見てざまあみろとほくそ笑んだ歩夢だったが、次の瞬間、覆いかぶさりながら唇を奪ってきた小田原に、すぐさまその余裕はどこかへ行ってしまった。

「んっ……! ふ、ぅ……♡ ん、ン……っ」
「は、お前……馬鹿なのか……?」
「ぁ、んっ♡ ばかって、いうな……っあ! んぅっ♡」

 逃げるように縮こまった唇を絡み取られ、唇でしごくように吸われる。咥内をくまなく舐めしゃぶられるような愛撫に、歩夢の息はもう絶え絶えだ。

 ――じゅぷ、じゅる、ちゅ、ちゅく……

 耳を覆いたくなるようないやらしい音がこだまするが、押さえつけられた両手ではどうすることも出来ない。両脚の間に割り込むように押し入られた体躯のせいで身動きすらままならない。
 歩夢のペニスはもう隠しようもないくらい屹立していて、小田原の腹筋に擦れる度甘美な刺激に身体が跳ねてしまう。そして歩夢の柔らかな臀部には、兆し始めている小田原の熱も伝わって来て……――。

「は、ぁ……っ、くそ」
「っ、ん♡ ふぅ……っ、はぁ、はぁ……♡」

 歩夢の身体をソファに押し倒したまま、小田原がその首元に顔を埋める。その様子に前回よりも小田原が近くに感じられて、歩夢はなんだかホッとしてしまった。
 自分だけじゃないと思った瞬間、少しだけ余裕の生まれた歩夢は、ふと永瀬に言われた言葉を思い出す。

「……小田原さん、は……俺のお尻、使わないの……?」
「はぁ?!」



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