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とにかく恥ずかしいんです!*

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 端正な顔が近付いてくるのを、歩夢は大した抵抗も出来ないままに見つめる。
 それまでの性急さが夢だったのかと思うくらい、静かに、ゆっくりと重ねられた二人の唇。触れ合う瞬間伏せられた歩夢の瞼は、まどろむような快感に震えていた。

(……きもち、ぃ……)

 ちゅっ、ちゅ、と小さな音を立てながら、お互いの体温を分け与えていくかのように繰り返される優しいキスの雨に、歩夢の身体からはいつの間にか、強張るような余計な力が抜けていた。
 最後の抵抗とばかりにきゅっと閉じられた唇を、小田原の舌がノックする。まるで中に入れてとねだるみたいな仕草に、歩夢は初めて、歩夢自身の意思でそれを受け入れていく。

 わずかに開いた隙間から、するり潜り込むように小田原の舌が入ってきた。
 若い身体は巧みな行為からすぐに快感を拾い上げ、素直な反応を示す。口腔内をまんべんなく厚い舌でまさぐられば、歩夢のペニスはあっという間に兆し始めるのだった。

(うそ、まだキスしかしてないのに……っ)

 恥ずかしさに腰を引こうとすればするほど、余計に小田原に強く腰を抱き込まれ、体格差のある身体を摺り寄せる結果になってしまう。

「あっ……!」

 身体と身体が密着したことで、歩夢の腹に何か固いものが当たった。

(……っ、もしかして、小田原さんも……?)

 自分との行為で目の前の男が欲情していることも信じられなかったが、なによりも衣服を挟んでもまざまざと感じられる質量に歩夢は驚愕した。

(お、おっきい……っ)

 まだ完全な状態ではないはずなのに、歩夢のモノとは比べ物にならないほど成熟した男のそれに、恐怖なのか期待なのか良く分からない感情が体内巡り、背筋を震わせてしまう。

 どきどきと、高鳴る鼓動が伝わっていないだろうか。

 一体どんな顔をしているのかな。ちょっとした好奇心で歩夢がそっと、小田原の顔を仰ぎ見れば、思っていた以上に情欲の炎を灯した瞳が自分のことを見下ろしていた。

「歩夢」

 その目に見つめられながら、しっとりとした艶のある声で名前を呼ばれただけで、歩夢の総身にぞくりとする快感が走る。怖いと感じるのに、目を逸らすことが出来ない。声とも呼べない小さな音で「はい……」とささやかな返事をする歩夢に、いつもの不遜な笑みを浮かべた小田原は、綺麗に染まった頬を満足そうに撫で上げると耳元で囁いた。

「寝室に行くぞ」

 その言葉に自分がなんと返したのか、歩夢は覚えていなかった。


◇◇◇


 寝室に入った歩夢が、緊張しながらも自分で服を脱ごうとしたところで、小田原に止められる。こういう時は相手の服を脱がせるのもマナーなのだ、という言葉に、そういうものなのかと若干首を傾げながらも歩夢はされるがままになる。

「んっ、ちゅ……ちゅく、ぁ……っ♡」

 普段の粗雑な対応が信じられないくらい、甘く優しいキスに身体から力が抜けてしまう。ふらつく歩夢の腰を支えるように抱きかかえると、そのとろんと蕩けた顔に小田原はくくくと喉奥で笑った。

「ぼんやりしてないで、これから練習することちゃんと覚えろよ?」
「わっ、わかってるよ……!」

 歩夢の着ているシャツのボタンが、一つずつゆっくりと外されていく。その間もキスの雨は止まることなく降り続いた。その合間にも、主張するように尖った乳首を小田原の指が掠めるので、歩夢の身体はその度に跳ねてしまうのだが、逃げそうになる腰を力強く引き寄せられては、苦情を申し立てるために開いた口を深く塞がれる。全部きっとわざとだろう。

「んっ♡ ん……っは、ぁ……ッ♡♡」

 歩夢が酸欠でくらくらとし始める頃になって、ようやく満足したような小田原が、咥内を犯すように蹂躙していた舌を抜く。荒くなった呼吸で肩を喘がせながら、ホッとしたのも束の間。次には男の大きな手のひらが、もう隠しようもなく勃起している歩夢のペニスを覆った。

「……っ、そこ、ぅンっ♡ や、めて……っ」
「なんで? 気持ちいいだろ」
「ひぁっ♡ 馬鹿……っ!」

 ぐっと力を込めてそこを包み込まれると、溢れ出た白濁と下着が擦れてぐちゅりと濡れた音が響く。直接的な快楽にまるで溺れているかのように、肩を喘がせながら歩夢がそう言えば、一刀両断に返される。

 確かに。確かに気持ちいいのだけれど。


(……は、恥ずかしいんだよ……っ)


 ただひたすらに翻弄されて、気持ち良くなって、喘いでしまう。目の前の男の冷静さが余計に、自分自身の淫らさを浮き彫りにさせているような気がした。



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