24 / 55
とにかく恥ずかしいんです!*
しおりを挟む端正な顔が近付いてくるのを、歩夢は大した抵抗も出来ないままに見つめる。
それまでの性急さが夢だったのかと思うくらい、静かに、ゆっくりと重ねられた二人の唇。触れ合う瞬間伏せられた歩夢の瞼は、まどろむような快感に震えていた。
(……きもち、ぃ……)
ちゅっ、ちゅ、と小さな音を立てながら、お互いの体温を分け与えていくかのように繰り返される優しいキスの雨に、歩夢の身体からはいつの間にか、強張るような余計な力が抜けていた。
最後の抵抗とばかりにきゅっと閉じられた唇を、小田原の舌がノックする。まるで中に入れてとねだるみたいな仕草に、歩夢は初めて、歩夢自身の意思でそれを受け入れていく。
わずかに開いた隙間から、するり潜り込むように小田原の舌が入ってきた。
若い身体は巧みな行為からすぐに快感を拾い上げ、素直な反応を示す。口腔内をまんべんなく厚い舌でまさぐられば、歩夢のペニスはあっという間に兆し始めるのだった。
(うそ、まだキスしかしてないのに……っ)
恥ずかしさに腰を引こうとすればするほど、余計に小田原に強く腰を抱き込まれ、体格差のある身体を摺り寄せる結果になってしまう。
「あっ……!」
身体と身体が密着したことで、歩夢の腹に何か固いものが当たった。
(……っ、もしかして、小田原さんも……?)
自分との行為で目の前の男が欲情していることも信じられなかったが、なによりも衣服を挟んでもまざまざと感じられる質量に歩夢は驚愕した。
(お、おっきい……っ)
まだ完全な状態ではないはずなのに、歩夢のモノとは比べ物にならないほど成熟した男のそれに、恐怖なのか期待なのか良く分からない感情が体内巡り、背筋を震わせてしまう。
どきどきと、高鳴る鼓動が伝わっていないだろうか。
一体どんな顔をしているのかな。ちょっとした好奇心で歩夢がそっと、小田原の顔を仰ぎ見れば、思っていた以上に情欲の炎を灯した瞳が自分のことを見下ろしていた。
「歩夢」
その目に見つめられながら、しっとりとした艶のある声で名前を呼ばれただけで、歩夢の総身にぞくりとする快感が走る。怖いと感じるのに、目を逸らすことが出来ない。声とも呼べない小さな音で「はい……」とささやかな返事をする歩夢に、いつもの不遜な笑みを浮かべた小田原は、綺麗に染まった頬を満足そうに撫で上げると耳元で囁いた。
「寝室に行くぞ」
その言葉に自分がなんと返したのか、歩夢は覚えていなかった。
◇◇◇
寝室に入った歩夢が、緊張しながらも自分で服を脱ごうとしたところで、小田原に止められる。こういう時は相手の服を脱がせるのもマナーなのだ、という言葉に、そういうものなのかと若干首を傾げながらも歩夢はされるがままになる。
「んっ、ちゅ……ちゅく、ぁ……っ♡」
普段の粗雑な対応が信じられないくらい、甘く優しいキスに身体から力が抜けてしまう。ふらつく歩夢の腰を支えるように抱きかかえると、そのとろんと蕩けた顔に小田原はくくくと喉奥で笑った。
「ぼんやりしてないで、これから練習することちゃんと覚えろよ?」
「わっ、わかってるよ……!」
歩夢の着ているシャツのボタンが、一つずつゆっくりと外されていく。その間もキスの雨は止まることなく降り続いた。その合間にも、主張するように尖った乳首を小田原の指が掠めるので、歩夢の身体はその度に跳ねてしまうのだが、逃げそうになる腰を力強く引き寄せられては、苦情を申し立てるために開いた口を深く塞がれる。全部きっとわざとだろう。
「んっ♡ ん……っは、ぁ……ッ♡♡」
歩夢が酸欠でくらくらとし始める頃になって、ようやく満足したような小田原が、咥内を犯すように蹂躙していた舌を抜く。荒くなった呼吸で肩を喘がせながら、ホッとしたのも束の間。次には男の大きな手のひらが、もう隠しようもなく勃起している歩夢のペニスを覆った。
「……っ、そこ、ぅンっ♡ や、めて……っ」
「なんで? 気持ちいいだろ」
「ひぁっ♡ 馬鹿……っ!」
ぐっと力を込めてそこを包み込まれると、溢れ出た白濁と下着が擦れてぐちゅりと濡れた音が響く。直接的な快楽にまるで溺れているかのように、肩を喘がせながら歩夢がそう言えば、一刀両断に返される。
確かに。確かに気持ちいいのだけれど。
(……は、恥ずかしいんだよ……っ)
ただひたすらに翻弄されて、気持ち良くなって、喘いでしまう。目の前の男の冷静さが余計に、自分自身の淫らさを浮き彫りにさせているような気がした。
0
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺
高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる