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7月
悪夢のような一日。ふきつな予感?
しおりを挟む「ふぅ…………」
重だるい身体は一晩経っても解消されず、今日の俺は大変憂鬱である。何度目になるかわからないため息を吐きながら、頬杖をついている俺はぼんやりとこれからのことを考えていた。
乙成くんとして新たな人生を歩み始めてから、三ヶ月が過ぎた。というかまだ三ヶ月しか経っていないのに、気付けば三人の男と致してしまった俺。ほんとどうなってるんですかね? 今まで生きてきて、女の子とはラッキーすけべにすら見舞われなかったのに。これが腐女神の御加護もとい、呪いだというのか……はぁ……。
そもそも攻略対象達のエロスイッチが入るタイミングが俺にはよく分からない。それまで普通に別の話をしていたのに、やれ誘ってるだの、やれ練習だだの、突然すけべに縺れ込むのはどうにかしていただきたい。
確固たる意志を持ってお断りしろと言われたらそれまでなのだが、だって俺童貞だぜ? 乙成くんの力では現状太刀打ち出来ないし、あんな……気持ちいいの、我慢できなくなっちゃうじゃん。
(って、それがだめなんだよ~~~!)
練習だからといって何度も何度も赤塚に「気持ちいい♡」と伝えまくっていた昨日の自分を思い出し、俺は赤くなる顔を隠すように机に突っ伏した。
「優ちゃん具合悪い? 保健室いこ?」
明らかに挙動不審な俺の様子を見かねたらしい浅黄が、休み時間に声をかけてきた。浅黄は朝からずっとこの調子だ。のろのろと登校してきた俺の顔を見るなり、今日は帰った方がいいと言われていたのだが、身体がだるいだけで熱があるわけでもないので断っていた。気持ちも底辺まで沈んでいますがね。
「ん、平気……」
心配かけてごめんな、の一言くらい添えるべきなのかもしれないが、正直浅黄も原因の一人なので、純粋に感謝することができない俺がいる。
「うーーん、ていうかこのままだと、他の奴らがやばいことになりそうなんだよねぇ。とりあえず外行かない?」
(他の奴ら……?)
どういうことだ? と、辺りを見渡せば、目の合ったクラスメイト達が一斉に視線を逸らした。あ、もしかしてみんな、俺が風邪引いてるくせに教室に居座ってるから、自分に移っちゃうって心配してるのかな。風邪じゃないんだよ~って説明したところで、じゃあなんでそんなダルそうなんだよって追求されたら、それ以上話すことは出来ない。俺の沽券に関わる問題だからな。
「うん……。そうだよね、わかった……」
それにしてもこれでまた、このクラスでの俺の評価はガタ落ちしたのでは? 教室出た瞬間に「さっさと帰れよな~」とか陰口言われたら泣いちゃいそう。ことごとく上手くいかない現状に、しょんぼりと肩を落とすと浅黄が苦笑いを浮かべる。
「ん~~? 多分わかってないけど、まぁいいや。行こっか」
ん? わかってないって、なにが……?
***
せっかくの昼休みだというのに、わざわざ付き添って一緒に保健室へ行ってくれる浅黄は本当にいい友達だ。俺だったら勝手に行ってこい、とか言っちゃいそうだもんなぁ。
ここを左に曲がってしばらく行けば保健室……というところで、ふと立ち止まった浅黄は俺の手を引いてトイレへと向かう。
「浅黄くん? 保健室に行くんじゃ……」
「うん。でもちょっとその前に寄り道」
「えっ、う、うん?」
え、そんなにトイレに行きたかったなら言ってくれれば、一人で来たってば。浅黄が我慢することないのに。
それにしても、なんで俺まで連れてこられてるんだ?
別に俺は行きたくないし、外で待ってるけどっていうか、なんで一緒の個室に入るの?! どんな公開プレイをお望みで?!?!
「あ、浅黄くん……?」
カチャリ、と個室の扉の鍵をかけた浅黄は、狭い密室のせいで至近距離になった顔にニッコリと笑顔を浮かべた。
「さて、と。どうして優ちゃんはそんなことになってるのかな?」
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