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7月
イヤ〜な再会
しおりを挟むその後、家まで送りますと言い張る赤塚をなんとか宥め、一人駅へと向かう。身体のことを考えたら送ってもらった方が良いのかもしれないが、そんなところをミユに見られたら困るからな。丁重にお断りをした。
しかし、俺の方は足腰ガクガクだというのに、赤塚の元気いっぱいな感じはなんでなんだ? むしろ肌艶が増しているというか……一歳しか違わないというのに、あれが若さってやつなのか? 女神のギフトで回復するはずの体力も、歩ける程度にはよくなったものの、未だに腰のだるさは抜けきらない。ミユのやつ……どうせ付けるんなら、ちゃんと効き目があるやるを付与してくれよなぁ……。
こんな生活を続けていたら、精も根も尽き果てて確実に死んでしまう。嫌な想像にぶるりと総身を震わせた時、改札へと向かう階段でふいに足から力が抜けた。
「あっ……!」
かくんっと音がするように傾く身体。まずい、落ちる……っ! 神社の階段から転げ落ちたあの時の記憶がフラッシュバックする。衝撃に耐えるようにぎゅっと目をつぶると、知らない男の叫び声が思ったよりも近くから聞こえた。
「あぶない!」
いつまで経っても訪れることのない痛みに恐る恐る目を開くと、片足を踏み外した状態で見知らぬ青年に抱き留められていた。
「きみ、大丈夫?」
「は、はい……ありがとうございました……」
ん? この人……どこかで見たことがある気が……。こちらを心配そうに覗き込む顔になんだか見覚えがあって、どこで会ったんだっけと首をかしげる。
「あ。あれ、君、前にナンパされてた子?」
は! そうだ!
バカ男一号にうざ絡みされていた時に助けてくれた人!
あの時はどうも……と言いかけた口は、男の次の言葉を聞いた瞬間ぴたりと止まった。
「その制服……男の子、だったんだ……?」
赤塚との練習は基本的に平日の放課後に行われる。そのため今日も制服のままビジホに直行していたんだけど。それを見て驚くってことは、俺のこと女の子だと勘違いしてたってことか。気まずそうに目を泳がせる男に、感謝の気持ちはどこかへ飛んでいき、言いようもないむかむかが湧き上がる。
なんだぁ、その顔は。男のくせに男にナンパされてたのかって、呆れてんのか? おお?
今の俺は心が狭いんだぜ、そんな困ったような顔をしていると噛みついちゃうんだからなっ。
「そうですけど、ちょっと失礼じゃないですか」
「えっ……」
「勝手に勘違いされたのはそちらでしょう? 僕だって女の子に間違われて、嬉しいわけじゃないんですよ」
だからそんな風に「せっかく美少女だと思って助けたのに、なぁんだ男かよ~」っていう風な顔されても困ります。さらっと助けるその手管は参考にさせてもらうけどな!
「ご、ごめん……っ」
「一度ならず二度までも助けていただき、ありがとうございました。それではさようなら」
「あっ……!」
キッと睨みつければ、怯んだ相手が支えるように掴んだままだった腰から手を離す。そうして距離をとった俺は、深々と頭を下げ、そのまま男を振り返ることなくホームに向かうのだった。
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