乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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7月

可愛い後輩へのご褒美とは?

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 それからの俺はというと、とにかく死に物狂いで勉強した。
 危険なフラグだらけの同級生に頼ることなく、自力で。必死に。その結果、なんとか及第点をとることが出来そうだ。おそらくギリギリで補講は免れるはず。
 地獄のような試験期間も終わりを迎え、これで晴れて自由の身! 次はこんな苦労しないように、日頃から勉強頑張ろうと心に決めたのだった。

「せーんぱい? 何考えてるんですか?」
「あ、ううん。テスト大変だったなぁって」

 遠い目をしてここ最近の怒涛の日々を振り返る俺に、声を掛けて現実世界へと引き戻したのは赤塚だった。俺は今、体育祭で約束した「ご褒美」を赤塚に与えるために、いつものビジネスホテルへ来ている。それなのに主役の赤塚をほったらかしで、一人で思い耽っていたら寂しいよな。ごめんねと謝りつつ赤塚に向き直ると、首を傾げた後輩は心底不思議そうな顔をする。

「先輩勉強苦手なんでしたっけ? そつなく出来ちゃいそうなのになぁ~」
「あはは……」

 うん、俺もそう思ってたんだけどね。現実は甘くなかったんですよ、赤塚くん。

「でも、無事終わったならよかったですね! あとは結果待ちですけど、もうすぐ夏休みですし」
「ふふ。うん、そうだね」

 楽しみですねー! と喜ぶ姿は無邪気そのもの。一歳しか違わない男相手に可愛いなんて思うのはおかしいかもしれないけど、赤塚の笑顔はこっちまで嬉しくなるんだよなぁ。明るい気持ちが伝染してくるというか。だからこそ、しょんぼりしている時は、俺が何とかしてあげなきゃって思うんだろうな。

「それより、本当にここでよかったの?」

 あれだけ念を押されたご褒美。正直何を求められるのか心配で堪らなかったが、可愛い後輩の為だから、と貯金をいくらかおろしてきた。それなのに待ち合わせ場所に訪れた赤塚が提示したのは、いつものビジネスホテルに一緒に行くことだった。

「高い物は無理って言ったのは僕だけど、少しくらいなら貯金もあるし……」
「やだなぁ。お金は一切かからないようにするって言ったじゃないですか~♡」
「そうだけど……」

 せめて支払くらいは任せて欲しいと思っていたのに、ホテルの予約も赤塚が済ませていて、すでに清算は完了済み。実はこの流れは毎度のことで、いくら後から折半にしようと言っても、毎回のらりくらりとかわされるんだよなぁ。本当に何から何までいつもと変わらなくて、これって本当にご褒美になるんだろうか?

「心配しなくても、ご褒美の本番はここからですよ」
「ここから?」

 ここからできる事……って、もしかしてルームサービスか? それともマッサージとか?
 ただの量産型ビジネスホテルだと思っていたけど、俺が知らなかっただけで、そういったサービスがものすごく充実したところだったのかもしれない。
 一体何が出来るんだ? と想像を巡らせていると、赤塚はにっこりと微笑みながらとんでもない願いを口にした。

「俺……セックスの練習がしたいです!」
「なるほど、セッ……って、えっ! ええええええ!?!?」

 セックス……今、セックスって言った!?
 俺の聞き間違いじゃない……!?!?

 むしろそうであることを願いたいのだが、赤塚の様子を見る限り、残念ながら間違いなさそうだ。ほんのり頬を赤らめながら、もじもじと恥じらう姿は、明らかに……うん。きっとそういうことなんだと思う! 深くは聞かないけどっ!
 いくら可愛い後輩のお願いと言えども、こればっかりは了承できない。だ、だってセックスだぞ!? なんでそんなぶっ飛んだことがご褒美になるんだ!!

「そ、そういうのは好きな子に取っておいた方が良いんじゃないかな?!」
「でも……俺まだ先輩でしか勃たないんです。いざしようって時に失敗したらって思うと、よけい不安になるし……」
「それは……だけどっ、僕たち男同士だし……!」

 道を踏み外しそうになったら、正しいところに導いてあげるのも先輩の務めだ。初めての時は不安だよな、分かるよ。いや、俺もまだ童貞だけどね? だからこそ分かる気持ちだってあるんだ。それでもそこで男でも良いって思考になるのはさっぱり理解が出来ない。
 っていうか、こんなこと言ってるけど赤塚は男同士のやり方を知っているのだろうか。俺は元々BLゲームも嗜んでいたから知識はあったけど、普通に暮らしていたらまさか尻の孔を使うだなんて知らない可能性も……。
 そんな一縷の望みをかけて、「男同士」であることを理由に抵抗してみる。だって男には挿れるところがないもんね!?




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