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7月
新キャラはもうお腹いっぱいです!
しおりを挟む「うーーん、だめだ……さっぱり分からない……」
俺の数少ない友人たちを頼ることが出来ないと分かって、俺は仕方なく自主勉強を頑張ることにした。家に帰ったら絶対だらけてしまうので、今日は初めて学校の図書室へと訪れた。前の世界でもほとんど足を踏み入れることのなかった場所だけど、静かだし、部屋の中に充満している本の匂いがなんだか落ち着くな。
勉強も可能なフリースペースを探し、席に着く。テスト範囲を確認して、あとは黙々と勉強するだけ……。
(うーーん、参考書とかあったらもう少し捗るかな。探しに行こう……)
しばらくそうして頑張っていたのだが、自分の力だけではどうしても限界があって。分からず飛ばしたところは、依然正解が見つからないままだ。近くに勉強している人がいたら、無い勇気をふり絞って声を掛けることも出来たかもしれない。……しかし、それすらも出来ないのには理由がある。
(なんでこの机だけ、こんなにガラガラなの……?)
六人掛けの机は、他のところは満員に近く埋まっているというのに、何故か俺の使っていた机だけ、他に人がいないのだ。なぜなんだ。え、まさか俺ってば全校生徒に嫌われてんの? そんな大々的にハブられることとかある? 静かに使えるからいいけどね(泣)
溢れ出そうな涙を堪えて、俺はすごすごと役立ちそうな本を探しに行くことにした。
「あった! ……けど、届かないなぁ~……」
それらしい本を見つけたものの、最上段にあるそれは俺の身長では脚立でも使わないと届きそうに無かった。周囲を見渡してもそれらしい物は見当たらないし、どうしたものかと頭を悩ませていると、ふっと頭上に影がかかる。
「――……これ?」
「あっ! は、はい」
頭一つ大きな身体をした男が、俺の取りたかった本を手にしている。え、もしかして取ってくれたの?
本を片手にこちらに微笑んでる相手に見覚えは無かったが、これまたむかつくくらいのイケメンである。ふわりと少し癖のある髪に眼鏡をかけて。俺のイメージでは眼鏡ってもっと野暮ったい印象があったのに、イケメンがかけるとそれすらオシャレの一部になるんだな。思わずじろじろと観察するようにその顔を見つめていると、眼鏡イケメンがふっと目を細めた。
「はい、どうぞ」
「っあ、ありがとうございます」
うわーーー! インテリ眼鏡イケメンの笑顔やばーーーー!!!
そろそろ俺も分かってきたぞ。こいつもミユの作った攻略対象の一人だな。ただのモブにしては顔が出来過ぎているし、何より乙女ゲームにはインテリ眼鏡イケメンが一人はいるものだ。きっとこいつは頭いい系ポジションの攻略対象に違いない。
「ふふ、どういたしまして。それにしても、君は本当に綺麗な顔してるね」
「え?」
「乙姫様が図書室に来るなんて珍しいんじゃない? こんなところでどうしたの?」
お、乙姫様……? なにを言っているんだこいつは。
頭いい系ポジションかと思ったけど、まさかの電波系??? これはあまり関わり合いにならない方がいいやつだろうか。ここ最近の爛れ具合を考えると、俺の貞操的にもその方が安全だろうし、ここは無難にやり過ごそう。
「えっと、テスト勉強、です……」
「ふーん、そっか」
それ以上発展することない会話。ニコニコと微笑むだけの男が気味悪くなり、俺はぺこりと会釈をして立ち去ることにした。
……んだけど。何故か俺の後を付いてくるインテリ眼鏡イケメンもとい、電波系眼鏡イケメン。ええ……もう、本当に何なの……? 意味が分からず戸惑いながらも、元々座っていた席に戻ると、男はそのまま俺の隣に座りだす。
「……あの、まだ何か……?」
「ん? いや、俺もここで勉強しようかなと思って」
「えっと、どうしてここで……?」
「だって他の席は埋まっているから。この机は君しか使ってないみたいだし、別に構わないよね?」
「は、はい……」
ああああ、なんでこの席は他に人が座ってないんだよ! 俺が嫌われてるからですよね! 分かってます!!!
半泣きになりながら、なるべく電波系眼鏡イケメンを意識しないように目の前の参考書に集中する。勉強するといった男は、机の上に何も出さずにずっとこっち見てるけど、そんなの気にしない。死ぬほど視線がうるさいけど、絶対、気にしないんだからな。
「それ、こっちの公式使った方が良いよ」
「え?」
「ほら、これ。ここの数字をこっちに代入して、こうして……こう」
横に置いてあった俺のペンを使ってすらすらと公式を書いていく。参考書を手にしたところで、分からないものは分からず思考が止まっていた問題を、いとも簡単に解いてしまった。魔法みたいに導き出される解に俺は思わず感嘆の声を上げてしまう。
「あっ、本当だ……!」
「ね? 簡単でしょ」
「すごいっ、じゃあこれは?」
「これは、さっきの応用。この関数に……」
男の言うとおりにペンを動かすと、今までさんざん悩んでいたのが嘘みたいに、もう一生解けないのではないかと思っていた問題が解決してしまった。
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