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6月
なんということでしょう
しおりを挟む大丈夫なのかと心配する黒瀬を押し切って、強行突破で決行した勉強会。……結論から言うと、体調面は全く問題なかったが、残念ながら乙成くんの頭が大丈夫じゃなかった。
「これは……思っていた以上だな……」
「うう、ごめんなさい……」
想像以上だったのは俺もです。
半泣きの状態で、数学の問題集を拡げながら頭を抱えてしまう。
乙成くん、意外とあほの子だったんだね……。授業は真面目に受けているし、先生の話も理解できないわけではないから、正直こんなに問題が解けないなんて思わなかった。
というか、授業中は分かっていた問題も今は分からなくなっている、っていうか。なんらかの記憶障害を疑うレベルで、授業の内容がほとんど残っていないのだ。
(も、もしかして、ミユのせいとかじゃないよね……? いや、でも聞いてみて、もし違った時のショックが大きすぎる…)
問題を解こうとする俺の手があまりに進まないものだから、黒瀬も解答の導き方を説明しようと頑張ってくれている。しかしどうやら黒瀬は感覚型の天才気質らしく、授業を聞いただけでなんとなく解けてしまうから、どうしてそうなるのかということを説明するのが苦手なようだ。
「あ~……俺が教えられるのも、これくらいが限界だからなぁ……」
「十分だよ! ありがとう、自分の勉強もあるのに……ごめんね」
「いや、それは構わないが」
く……! 楽しみにしていた勉強会だけど、こんな落とし穴があったなんて。
自分の頭の問題なので何を恨むことも出来ないが、厳しい現実に少しだけがっかりしていると、黒瀬が頭を優しく頭を叩いてくる。
「教えられることは少ないかもしれないが、こうしてたまに勉強するか」
「! うんっ、ありがとう黒瀬くん!」
黒瀬って普段はクールな印象が強いけど、なんだかんだ俺のお願いは聞いてくれるし、今も自然に慰めるようなことをしたりと意外と優しいんだよな。
夢にまで見た勉強会がこれきりじゃなくて、今後も続けられるのだと思うと自然と笑顔が浮かぶ。
ああ、黒瀬よ! 心の友よ……!
ありがとう、ありがとう!!!
「あーーーー……今、めちゃくちゃお前のこと、抱きしめたくなった」
「えっ!?」
いきなりどうした!?
お前、突然そういうこと言い出す傾向あるぞ……ってあれ、そう思ったらやはり黒瀬のやつって、全然クールじゃないのでは???
「俺、今日頑張ったと思わないか? ちょっとくらい触ってもいいだろ」
なぁなぁと近づいてくる黒瀬を、腕を突っ張りながら押し留める。
「で、でも、下に? 部屋に? 克さんいるし……っ」
「今日は昔からのツレと飲みに行くって言ってた。もう八時だし出てるだろ。居たとしてもこの部屋に来たりしねぇよ」
「っ、でも……」
「乙成」
うぐぅ……! イケメンの目力よ……!
じっと見つめてくる真剣な瞳に、負けそうになってきた。
抱きしめられるくらいだったら、いい……かな?
キスもセックスもするわけじゃなくて、抱きしめるだけだもんな??
「う、ううう~~~...…いっ、いいよ……っ」
絞り出すような声でそう告げた瞬間、俺は黒瀬の腕の中に捕まっていた。
(うわぁぁぁぁーーーーっ!!!!)
黒瀬はこちらがいいと言わないと、手を出してこないという安心感があるんだけど、逆を言えば俺がいいって言ったから、今こういう状態になっているわけで。
それを実感してしまうと、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなってしまう。
きつく抱きしめられた俺は、黒瀬の胸にぴたりと耳を付けたまま、ギュッと目をつむり息を殺した。
(あ、黒瀬くん……ドキドキしてる……)
黒瀬でもこんな風にドキドキするんだ。今、どんな顔してるんだろう?
っていうか、俺を抱きしめるのでこんなにドキドキしてるんだ。
ううう、なんだか俺まで緊張してきたんだけど、黒瀬に聞こえたりしてないかな……!
いろんな考えが頭の中をぐるぐるして、身動きひとつ出来ないままに、無言で抱きしめられる時間が続く。
そうやって、いつもみたいに抵抗しなかったのがいけないのだろうか。おとなしく抱き締められたままの俺に何を思ったのか、黒瀬がとんでもないことを言い出した。
「……なぁ、今日は挿れてもいいか?」
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