112 / 162
6月
試練のあとの試練
しおりを挟む「……うちゃん、優ちゃーん。そろそろ起きて~」
「……、ぅ……んーー?」
あれ? 俺、いつの間に寝たんだっけ。
浅黄の家に行って、ツッコミの練習するはずが何故かセックスすることになって。それで……
「おはよ♡」
「ふぁっ?! あ、浅黄くん……っ」
うおっ?! 起き抜けのイケメンスマイル、心臓に悪いな?!
っていうか、とにかく顔が近い!
驚きのあまり寝起きでぼんやりしていた頭が一気に覚醒し、思い出したくないことまで思い出してしまった。そうだ。浅黄家にやって来た俺は、浅黄にツッコミをするんじゃなくて、浅黄のナニを突っ込まれたんでした……。
恐ろしいことに途中から記憶がないんだけど、どうなったんだっけ。服は……着ているな。なんで浅黄のベッドで昼寝してたんだ? 俺がそわそわと自分の身体を見回したり、落ち着かない様子を見せているからか、浅黄はくすりと笑いながら事の経緯を説明してくれる。
「初めてなのに無理させすぎてごめんね。優ちゃんが途中で気ぃ失っちゃってびっくりしたけど、呼吸は普通だったから、そのまま寝かせてたんだよね……大丈夫? 気分悪かったりしない?」
な、なるほど……途中で意識を手放したのか。
しかし、そのまま寝ていたという割に、いろんな体液で汚れていたはずの身体はスッキリしているんだけど、これも女神のギフトのおかげなのだろうか。
「一応身体拭いたり、中綺麗にしたり、出来ることはしたつもりなんだけど。良かったらシャワー使う?」
あっ、デスヨネーーー!!!
何から何まで……って思ったけど、ほとんど浅黄のせいなわけだし、感謝する必要はないよな?! 礼は言わんぞ!
「だ、だいじょうぶ……」
朧げにも行為の最中に、浅黄に中出しされたような記憶がある。中を綺麗にしたって言っていたし、きっとそういうことなんだと思うけど、まさか浅黄とも……あんなことをしてしまうなんて……。
走馬灯のようにいろんなアレコレが蘇ってきて、頬が熱くなるのを感じた。っていうか浅黄はなんでこんなに普通なんだ?! 俺は恥ずかしくて目を見ることすら出来ないというのに! いつもと変わらぬ浅黄の態度に反して、俺が頑なに視線を逸らし目を泳がせていると、浅黄が勢いよく抱きついてきた。
「わぁっ?!」
「優ちゃん、照れてる? 可愛いーー♡」
「っ、揶揄わないでよぉ~!」
可愛い可愛いと連呼して、頭を擦り付けてくる男から逃げたい俺は、散々藻がいて脱出を試みるものの、すぐに体力が底をつきされるがままになる。さすがに身体を這う手のひらが、怪しい動きをし始めた時には力の限り抓つねってやったけどな。
「あ、そうだ。実は今日、俺が夕食当番なんだよね。もうすぐ母さんと花ちゃん帰ってくる時間だし、先に作らなきゃなんだけど……良かったら優ちゃんも食べてって。それから家まで送るよ」
「えっ!? そんな、いいよっ」
浅黄が夕飯を作ることがあるということにも衝撃を受けたが、何より想定外のご挨拶が必要になりそうなことに焦りまくる。
「突然お邪魔して、ご飯までご馳走になるなんて申し訳ないし! 僕、一人で帰れるから……」
花瑛ちゃんに会いたいとは思っていたけど、お母さんと話す心の準備が出来てない。更にはめちゃくちゃ後ろめたい事をしたわけなので、なるべくお会いすることなく失礼したいのだが!!
そう思ってベッドから立ち上がろうとすると、地面に着いた足からカクンッと力が抜けた。
「あっ……!」
「うおっ?! 危なっ! ほら~だから言ったでしょ」
「……あり、がとう……」
床に倒れ込みそうになるところを、浅黄に抱きとめられる。一眠りしたわけだし、痛みも感じないから大丈夫だろ、と思っていたのだが、流石に女神のギフトといえど即効性はないらしい。どっかの誰かさんに酷使された身体は限界を迎えていたようで、一人で歩くこともままならなかった。
「ということで、あとで送ってあげるから。ゆっくりしていって」
「ううう……はい…………」
仕方ない。
こうなったら腹を決めて、現代人の強い味方、「友達 親 挨拶」で、ネット検索するか…………。
キッチンから美味しそうな匂いが漂いはじめた頃、玄関の鍵が開く音がする。
(か、帰っていらした……!)
ダイニングテーブルに着席していた俺は、慌てて立ち上がるとピシッと背筋を伸ばした。しばらくすると、ととととっ、と小さな足音が聞こえてきて、リビングに繋がる扉が開く。
「ただいまーーーっ!」
「ただいま~お腹すいたわぁ。って、あら?」
「あーーー! ゆうちゃんだぁっ!」
これから家族三人で一家団欒が始まるはずだったのに、突然現れた部外者に二人とも目を丸くする。それでも救いだったのは、花瑛ちゃんが驚きから一変、嬉しそうな笑みを浮かべて駆け寄ってきてくれたことだ。可愛い……。
「ゆうちゃんっどうしているの? はなにあいにきてくれたのっ?」
「ふふ、おかえり。花瑛ちゃん」
手と手を握り合ってぶんぶんと大きく振る。
小さい×可愛いの最強コンボを繰り出す幼女に、俺はデレデレだった。
1
お気に入りに追加
1,347
あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる