乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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6月

試練のあとの試練

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「……うちゃん、優ちゃーん。そろそろ起きて~」
「……、ぅ……んーー?」

 あれ? 俺、いつの間に寝たんだっけ。
 浅黄の家に行って、ツッコミの練習するはずが何故かセックスすることになって。それで……

「おはよ♡」
「ふぁっ?! あ、浅黄くん……っ」

 うおっ?! 起き抜けのイケメンスマイル、心臓に悪いな?!
 っていうか、とにかく顔が近い!

 驚きのあまり寝起きでぼんやりしていた頭が一気に覚醒し、思い出したくないことまで思い出してしまった。そうだ。浅黄家にやって来た俺は、浅黄にツッコミをするんじゃなくて、浅黄のナニを突っ込まれたんでした……。
 恐ろしいことに途中から記憶がないんだけど、どうなったんだっけ。服は……着ているな。なんで浅黄のベッドで昼寝してたんだ? 俺がそわそわと自分の身体を見回したり、落ち着かない様子を見せているからか、浅黄はくすりと笑いながら事の経緯を説明してくれる。

「初めてなのに無理させすぎてごめんね。優ちゃんが途中で気ぃ失っちゃってびっくりしたけど、呼吸は普通だったから、そのまま寝かせてたんだよね……大丈夫? 気分悪かったりしない?」

 な、なるほど……途中で意識を手放したのか。
 しかし、そのまま寝ていたという割に、いろんな体液で汚れていたはずの身体はスッキリしているんだけど、これも女神のギフトのおかげなのだろうか。

「一応身体拭いたり、中綺麗にしたり、出来ることはしたつもりなんだけど。良かったらシャワー使う?」

 あっ、デスヨネーーー!!!
 何から何まで……って思ったけど、ほとんど浅黄のせいなわけだし、感謝する必要はないよな?! 礼は言わんぞ!

「だ、だいじょうぶ……」

 朧げにも行為の最中に、浅黄に中出しされたような記憶がある。中を綺麗にしたって言っていたし、きっとそういうことなんだと思うけど、まさか浅黄とも……あんなことをしてしまうなんて……。
 走馬灯のようにいろんなアレコレが蘇ってきて、頬が熱くなるのを感じた。っていうか浅黄はなんでこんなに普通なんだ?! 俺は恥ずかしくて目を見ることすら出来ないというのに! いつもと変わらぬ浅黄の態度に反して、俺が頑なに視線を逸らし目を泳がせていると、浅黄が勢いよく抱きついてきた。

「わぁっ?!」
「優ちゃん、照れてる? 可愛いーー♡」
「っ、揶揄わないでよぉ~!」

 可愛い可愛いと連呼して、頭を擦り付けてくる男から逃げたい俺は、散々藻がいて脱出を試みるものの、すぐに体力が底をつきされるがままになる。さすがに身体を這う手のひらが、怪しい動きをし始めた時には力の限り抓つねってやったけどな。

「あ、そうだ。実は今日、俺が夕食当番なんだよね。もうすぐ母さんと花ちゃん帰ってくる時間だし、先に作らなきゃなんだけど……良かったら優ちゃんも食べてって。それから家まで送るよ」
「えっ!? そんな、いいよっ」

 浅黄が夕飯を作ることがあるということにも衝撃を受けたが、何より想定外のご挨拶が必要になりそうなことに焦りまくる。

「突然お邪魔して、ご飯までご馳走になるなんて申し訳ないし! 僕、一人で帰れるから……」

 花瑛ちゃんに会いたいとは思っていたけど、お母さんと話す心の準備が出来てない。更にはめちゃくちゃ後ろめたい事をしたわけなので、なるべくお会いすることなく失礼したいのだが!!
 そう思ってベッドから立ち上がろうとすると、地面に着いた足からカクンッと力が抜けた。

「あっ……!」
「うおっ?! 危なっ! ほら~だから言ったでしょ」
「……あり、がとう……」

 床に倒れ込みそうになるところを、浅黄に抱きとめられる。一眠りしたわけだし、痛みも感じないから大丈夫だろ、と思っていたのだが、流石に女神のギフトといえど即効性はないらしい。どっかの誰かさんに酷使された身体は限界を迎えていたようで、一人で歩くこともままならなかった。

「ということで、あとで送ってあげるから。ゆっくりしていって」
「ううう……はい…………」

 仕方ない。
 こうなったら腹を決めて、現代人の強い味方、「友達 親 挨拶」で、ネット検索するか…………。














 キッチンから美味しそうな匂いが漂いはじめた頃、玄関の鍵が開く音がする。

(か、帰っていらした……!)

 ダイニングテーブルに着席していた俺は、慌てて立ち上がるとピシッと背筋を伸ばした。しばらくすると、ととととっ、と小さな足音が聞こえてきて、リビングに繋がる扉が開く。

「ただいまーーーっ!」
「ただいま~お腹すいたわぁ。って、あら?」
「あーーー! ゆうちゃんだぁっ!」

 これから家族三人で一家団欒が始まるはずだったのに、突然現れた部外者に二人とも目を丸くする。それでも救いだったのは、花瑛ちゃんが驚きから一変、嬉しそうな笑みを浮かべて駆け寄ってきてくれたことだ。可愛い……。

「ゆうちゃんっどうしているの? はなにあいにきてくれたのっ?」
「ふふ、おかえり。花瑛ちゃん」

 手と手を握り合ってぶんぶんと大きく振る。
 小さい×可愛いの最強コンボを繰り出す幼女に、俺はデレデレだった。



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