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6月
突撃!はじめてのお宅訪問☆
しおりを挟むまだまだ人様に見せられるレベルには程遠い俺は、恐る恐る浅黄に問いかける。
「いいけど……どこで……? ここじゃないよね?」
「えっ、ここ⁈ そりゃあ……誰かに見られちゃうかもって恥ずかしがってる優ちゃんが、見たくないと言えば嘘になるけど、それはまぁ、おいおいね」
えっ、なにそのドS発言⁈
初めての練習くらいは優しめにお願いしたいんですが!見てる人も素人のぐだぐだなツッコミとか見たくないでしょ!
「……はじめは二人だけ、が、いい…です……」
一人でテンパる自信しかない俺は、なるべく人が来ないだろうところでの練習を希望します。
どうかこの無茶振りを無かったことに出来ますように!と、乙成くんの顔面パワーを駆使してお願いをする。
すると、さすが乙成くん。美形揃いのモデル仲間を見慣れているだろうイケメンにも、ちゃんと効果があるらしい。ほんのり頬を染めた浅黄が目を泳がしながら、了承してくれた。
「そ、う、だよね。ってか、まじでおいおいだったらいいの? えろかわかよ……」
「? 浅黄くん?」
「なーんでも! じゃ、移動しよっか」
心の声が漏れているのか、たまに浅黄はぶつぶつ言ってるんだよな。まぁ聞こえてなくても大きな問題になったことがないし、別にいいんだけどさ。
どこに行くのか分からないままだが、俺は足取り軽く歩いていく浅黄の後ろを付いて行くのだった。
◇◇◇
そうして連れてこられたのは、浅黄の家だった。突然お邪魔するなんて、ご家族に迷惑なんじゃ……と尻込みする俺に、浅黄は平気平気と笑った。
「母さんは仕事に行ってるし、花ちゃんも保育園だから気遣わなくて大丈夫だよ~」
「あ、そっか。そうなんだね」
それならちょっと安心かも。友達の家に来るのとか初めてだし、マナーとか正直分からないからなぁ。
母子家庭だという浅黄は、家族のためにモデルの仕事を始めたと聞いたことがある。そんなことを知らなかった時は「イケメンは可愛い子に囲まれて、写真を撮られるだけでお金を稼げるんだなぁ」なんて失礼なことを考えていた事を、心の底から反省した。何より一日だけ経験した撮影は、簡単なんてものとは程遠くて。一枚の写真を撮るにも多くの人の協力と、モデルの努力があるんだと知ったんだよな。
「そうそう~はい、ここだよ。どーぞ♡」
「っお、お邪魔します……!」
浅黄の開いた玄関をくぐり、初めてのお宅訪問にドキドキする胸を押さえる。ふと横に視線を向ければ靴箱の上には、浅黄と、浅黄によく似た美人のお母さん、満面の笑みを浮かべた花瑛ちゃんの家族写真が飾ってあった。
公園で会った時よりも少し幼く見える。しかしとても幸せそうなその笑顔を見るだけで、緊張していた身体から力が抜けていく。
「花瑛ちゃんに会えないのはちょっと残念」
「あはは、花ちゃんも怒るだろうなぁ。『なんで、はながいないときに、ゆうちゃんよぶの?! ずるい!』って」
何それ、めちゃくちゃ可愛いんですけど……?
「ふふ、それはちょっと嬉しいかも」
ぷんぷんしている花瑛ちゃんを想像したら勝手に頬が緩んでしまう。また今度、浅黄にお願いして花瑛ちゃんに会わせてもらおうかな。美幼女尊い。
そんな話をしていたおかげか、簡単に家の間取りを説明する浅黄に合わせて、室内を観察できるくらいの余裕は出てきた。
「……で、ここが俺の部屋ね」
「わぁ……」
案内された浅黄の部屋は、なにやらお洒落なインテリアとかが置かれていて、雑誌に取り上げられてもおかしくない内装だ。こ、これがモテる男の部屋なのか……!
元俺の部屋はゲームや漫画で溢れていたし、乙成くんの部屋はシンプルでスッキリしてるけど、こういう小物は置いてないもんなぁ。なるほど、観葉植物か……。
「なんかそんなじっくり見られると、照れちゃうなぁ~」
「あっ、ごめんねっ! なんか夢みたいで、嬉しくって……」
キョロキョロと部屋の中を見回しては、置かれている家具を観察する。含み笑いを感じる声色で呟かれた言葉に慌てて振り返ると、今後の自分に活かすために必死な俺の姿を見て、浅黄は照れ笑いを浮かべていた。
さすがにじろじろ見過ぎだったか? でもでも、いつか彼女を部屋に招く時のために、盗めるところは盗んでおきたいし。それに、夢みたいだっていうのも本当だ。
だってこんな風に家に呼ぶとか、心を許してくれてる証拠だろ? 今まで仲のいいやつはネッ友ばかりだったから、ほとんどチャット上でのやり取りばかりだったし、オフ会はちょっと怖くて参加できなかった。そんな感じでずーっと引きこもってたから、友達を家に呼んだことも、呼ばれたこともなかったもんなぁ。
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