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6月
リア充その1.休日に友達と遊ぶ
しおりを挟む痛いのや辛いのは嫌だから、ある意味有難いギフトなのかもしれないが……前提がいろんなプレイに励むためっていうのが、素直に喜べない要因だろう。しかもいくら小さな傷だとしても、一日で完治するなんてことが人間としてあって良いのだろうか? 下手したらどこかの研究所に軟禁されるコースなのでは……。
「ああ、それもバッドエンドっぽくて良いですねぇ……。インテリ研究員に凌辱される優くん……アイちゃんあたりが涎垂らして喜びそうですけど」
「アッ、そういうのは結構です!」
なるほどぉ……なんて呟いているミユを見たら、実験対象エンドが生まれてしまいそうで、必死になって否定する。
そ、そうなったら嫌だなっていう心配してただけだから!
「そうですかぁ? でも、大丈夫ですよぉ~傷の治りが早いことに対して、周りの人が違和感を感じないようになるのも、ちゃんとプログラム済みですから♡」
「そ、そうですか……」
随分と用意周到なんですね。ありがとうございます。
◇◇◇
そんな話をした後はただひたすらに、体育祭中にあったいろいろをまるで尋問みたいに聞き出された。
記憶から抹消したいと思っていた緑川先輩とのあれこれとかも、その場にいなかったはずのミユがしっかり把握しているのが恐ろしい。っていうか、知っているならわざわざ俺から聞く必要なんて無くない?って思って尋ねると、めちゃくちゃ良い笑顔で、
「恥ずかしがって真っ赤になってる優くんの口から、リアルな心情を聞くのが楽しいんじゃないですかぁ♡」
なんて、悪魔みたいな一言をいただきました。う、うん……ソウダヨネ。
ああそういえば、今度女神'sでパジャマパーティーをするから、優くんもどうですかぁ?と、夢みたいなお誘いをもらって、ホイホイ参加するって言っちゃったけど、後から考えるともしかして死亡フラグだった?
だって美少女三人組の女子会に参加出来るなんて、以前の俺だったら考えられない幸せイベントだったんだよ!絶対いい匂いするじゃん!
可愛い女の子と仲良くなりたいっていう、ささやかな童貞の願いくらい叶えさせてくれ!
「はぁ……」
「優ちゃん? なんか苦手なやつあった?」
「あっ、違うよ! ごめんね、ちょっと別のこと考えてて……」
心配そうな浅黄の声に、俺はハッと意識を取り戻して、すぐに否定をする。
そう。今日は浅黄と二人で約束していた食事に来ているのだ。
売れっ子モデルがオススメだと言う店は、めちゃくちゃお洒落なんだけど、男二人で入っても浮かないくらいの絶妙なラインを押さえている。
料理の量だって男が来ても満足できるメニューもあれば、多分女の子はこれくらいでお腹いっぱいになるよねっていう控えめなものも準備されていて、まさにデート向き。こういう店をさらっと案内出来るところが、さすが浅黄って感じだよな。
乙成くんの胃袋はそんなに大きくないので、あまりたくさんのメニューを食べることは出来なかったけど、それが残念だなぁって思うくらい美味しくて大満足だった。
でも腹が満たされると、ふと昨日のあれこれを思い出してしまって……無意識に溜息を吐いたことで浅黄にいらぬ心配をさせてしまったようだ。
「すごく美味しかったよ! こんな素敵なお店に連れて来てくれてありがとう」
せっかくだから、未来の俺がデートをする時に行くお店候補として、きちんと忘れずに覚えておくよ。
感謝の気持ちを込めてにこりと微笑めば、浅黄が表情を緩める。
「よかった~。優ちゃん、なんか今日は最初からぼんやりしてたし。せっかくのデートなのに上の空なんて酷いなぁ」
「えっ? デートって……ふふ」
男同士てデートだなんて、と思わなくもないが、俺は知っている。今時の子は「異性同性家族問わず遊びに行くことを「デートする」と表現する場合もある」という事を!(ネット調べ)
あまりにもデートというものと縁遠く、世の中の奴らが当たり前のように経験しているデートというのがどんなものなのか調べた結果、そういう事実に行きついた。
実際、使用頻度としては男女間の場合が多かったとしても、こうして同性同士の遊びでも使うという事を知れたのは僥倖だった。浅黄の言葉にムキになって訂正する必要もないし、その結果、同性同士でも使えるって知らないなんて遅れてる~と馬鹿にされることもない。
はぁ。本当に良かった。
「……否定しないの?」
「えっ、どうして?」
「いや……いつもの優ちゃんなら、もうっデートじゃないよ! とか言うかなぁって思ってたから、ちょっと驚いただけ」
いつも世間知らずなところを露呈している影響もあってか、その言葉のとおり少し驚いた顔をしている浅黄に、俺は思わず笑ってしまう。
「否定しないよ。だって本当のことだもんね?」
「えっ、う、うん……」
ふふん。どうせまた俺を揶揄うつもりだったんだろうけど、そうはいかないぞ。
堂々たる俺の返事に浅黄が戸惑いを隠せない様子が面白い。いつも浅黄の言動には振り回されてばかりだが、たまには俺だってやり返すことだって出来るんだ。
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