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6月
大丈夫だけど、大丈夫じゃないっ!
しおりを挟む格好良くて、スポーツも出来て、それでいて優しさ最上級とか、やばくね??? ドSな大魔王に痛ぶられた後に、青島の優しさが染み渡るようだった。
「ありがと。青島くんは優しいね」
そう言った俺は、心からの笑顔で笑えたと思う。
はじめは青島も攻略キャラの一人なんじゃないかって疑ってたけど、浅黄みたいなあからさまなアピールもないし、黒瀬みたいに手を出してくるわけでもない。ただ純粋に、俺の友達になってくれた貴重な存在なのかも。
そう思うとなんだか気恥ずかしくて、顔が見れないや……。にやけた顔を晒さないように、誤魔化すように俯いていると、まだ体調が悪いと勘違いしたのか、青島が心配そうな声をかけてきた。
「午後も無理するなよ?」
「もう大丈夫だよっ! ほら、ちょっと休んだら元気になったから」
いけない、いけない。優しい友達にこれ以上心配かけちゃダメだよな。俺は、元気だよーとアピールするために、グッと力こぶをつくるようなポーズを取って、青島に向かって微笑んだ。
「そうか? ならいいが……」
「うんっ、じゃあ行こうか? もうすぐ午後の競技がはじまるよね、っあ……ッ」
弾む心で一歩踏み出そうとした時、気持ち的にはばっちり元気だったものの、身体の疲労感は全く癒やされていなくて。頭で考えていた動きについてこれなかった足が絡れ、ぐらりと全身が傾いた。
「危ない!」
「ぁうっ♡」
間一髪、倒れ込みそうになる俺の身体を、青島が抜群の瞬発力で腕を出して支えてくれた。支えてくれたんだけど……!
「大丈夫か? ふらついてる。やっぱり保健室に行った方がいいんじゃ……」
大丈夫なんだけど、大丈夫じゃない!
青島の手が! というよりも指が! ピンポイントで俺の乳首にジャストミートしてるんですけど!
ってたしか、前もこんなことあったよな?
わざと出来る事でもないし、青島に限って偶然に決まってるんだけど……。だけど、憎っくき緑川先輩に散々痛め付けられた乳首は、今些細な刺激にも反応しちゃうくらい敏感なんだよー!
「ん? なんだ……?」
「っ! ぁっ……♡ ふ、ぅ……っ♡♡」
ジャージの上からでもしこりを感じ取ったのか。男の平らなはずの胸に、あり得ないほどの存在感をもってピンと立つ乳首に、違和感を覚えたらしい青島は、しきりに捏ねるように指を動かしてくる。
「乙成? ここ、何か……」
これ以上されたら、変な声が出てしまう……!
もう手を動かしてくれるなと、必死になって上から握りしめる。
「あ、あおしまく……っ、とめてぇ……っ♡」
思ったよりも情けない声が出てしまったが、これで伝わっただろうか。涙目になっているだろう俺は、必死の面持ちで青島を仰ぎ見た。
俺の顔と自分の手の位置を交互に見比べた青島の顔が、途端に真っ赤になる。
ごめんな……。お前が心配してくれたそれ、俺の乳首なんだ……。
「わっ、悪い……!」
「だ、大丈夫、びっくりしただけ、だから……」
すぐさま手を引いた青島は、俺の二の腕に手を移動すると、極力身体を離すようにして視線を逸らしてくれていた。
くそぅ。こんな時まで紳士なのかよ。心の友よ、本当にありがとう。
乱れた息を整えながら、俺は自分の身体に視線を走らせる。うん、さっき散々出し尽くしたからか、乙成くんの敏感なちんこもまだ反応してないようだ。ぎりぎりセーフだな。
「青島くん、支えてくれてありがとう。僕もう大丈夫だから、クラスの方に戻って?」
「あ、ああ……でも、本当に大丈夫なのか」
「うん。この後も応援しかしないし、慌てないでゆっくり行くから」
ね? と首を傾げれば、少しだけ視線を泳がせた青島は、困ったように眉を寄せて念を押すように言い含めてくる。
「絶対走ろうとするなよ? ジャージも脱ぐな。日陰の涼しいところでのんびり観戦していればいいから」
「ふふ、分かったよ。心配させてごめんね」
「じゃあ先に戻る。絶対、無理するなよ?」
「ありがと。青島くんは午後も頑張ってね」
そう言って手を振ると、ようやく納得した様子の青島が背中を向けた。本当にいい奴だな。
長い足を動かして颯爽と歩いてる……って、あれ? グラウンドじゃなくて校舎に向かってるけど……。まぁ、いっか。
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