乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

文字の大きさ
上 下
99 / 162
6月

やったー!って、なんでそうなるのぉ?!

しおりを挟む


「そういや来週からバイトに来れるって言ってたけど、テスト勉強とか平気なのか?」
「え?」

 腹がはち切れそうなくらい弁当を食べ続けた後、食休みをしていると思わぬ話の内容にぽかんと口が開いてしまった。

「『え?』って……。体育祭が終わったら、すぐに期末試験の時期だろ? 勉強の方はどうなんだ?」
「あ、うーーんと……ど、どうなんでしょう?」

 以前の俺は勉強に関しても中の中。悪くもなければ良くもない。しっかり事前勉強をすれば赤点にはならないが、満点を取るにはほど遠いような成績だった。果たして乙成くんはどれくらいの賢さなのだろうか。

「どうなんでしょうって、なんだそりゃ」
「あはは……えっと、どこが分からないか分からないというか。なんというか……」
「おいお前、それ一番ヤバいやつじゃないかよ」

 誤魔化すように笑う俺に、黒瀬は本当に大丈夫なのか?と心配がありありと浮かんだ表情で眺めてくる。

「俺もめちゃくちゃ出来るわけじゃないが……バイト終わりにうちで勉強会でもするか?」
「えっ、勉強会⁈ いいの⁈」
「あ? ああ、もちろん。って、そんな喜ぶことかよ」

 だって! だって!
 テスト前の勉強会なんて、リア充の友達がいる奴にしか、なし得ない特別イベントだぞ!ただの憂鬱なテスト勉強が、友達が居るだけで楽しくて賑やかなものになるんだ。それが教えられる側でも教える側でも一緒だ。「こんなのも分かんないのかよ」とか「ここはこう解くんだぜ」なんて軽口やアドバイスを言い合いながら進めるテスト勉強は、一人寂しく一夜漬けするのと違い、どれだけ楽しいものだろうか。

「僕、勉強会なんて初めてだよ! ありがとう黒瀬くん!」

 満面の笑みでそう伝えると、眩しいものを見るような顔をした黒瀬が優しく微笑んだ。うあああ、久しぶりに見た。黒瀬のこの笑顔。やっぱ破壊力すげえなぁ……。
 男相手だというのにドキドキしてしまう胸を抑えながら、平常心を装っているけど顔は赤くなっていないだろうか。
 自然と泳いでしまう視線に気付いているのか、いないのか。黒瀬は俺の頭にポンと手を置くと、何でもないことのように言葉を発する。

「じゃあ来週、よろしくな」
「っ、うん!」
「よし。飯も食ったし、そろそろ行くか。俺はともかく、乙成は実行委員だからサボるわけにもいかないだろ?」
「いやいやっ、黒瀬くんもサボっちゃ駄目だからね?! 一緒に戻りたいけど……午後の部開始前に集まりがあったはずだから、ちょっと寄ってから行くね」

 携帯で時間を確認すれば、まだ少し余裕があったが早めに行っておくに越したことはないだろう。居心地の良い場所だったので戻るのが惜しいくらいだが、重い腰を上げて立ちあがる。

「あ、そうだ」

 二人になった時に言おうと思っていたことを思い出した俺は、念のため周りに他の人がいないかを確認した後、少し高い位置にある黒瀬の耳元に唇を寄せた。

「ほんとは敵同士だから大きな声じゃ言えないけど……黒瀬くんも頑張ってね。僕、内緒で黒瀬くんのこと応援してるから」

 誰が聞いているわけでもなかったが、囁くようにそう告げた。すると、若干肩を揺らしたように見えた黒瀬が、俺の手首を掴んでそのまま身体を抱き締めてきた。

「わっ、く、黒瀬くん……⁈」
「……今のは、お前が悪いよな?」
「え⁈ 嘘、僕なにかした⁈」

 明らかに不機嫌そうな声が耳元で響く。えっ、何でいきなり怒ってんの?! さっきまであんなにご機嫌だったのに!!!

「いいから。キスしていいって言え。言わないと絶交だぞ」
「えぇっ、な、なんで……!」

 そしてさらに意味の分からない要望をぶつけられた俺は、とにかく離れようと藻搔いてみるが、まぁいつもの通り抜け出せるわけないですよね。うん、わかってた……。
 何度理由を聞いても「いいからキスさせろ」としか言わない黒瀬に、とうとう俺が根負けすると、せっかく落ち着きを見せていた身体に、再び火を付けるには十分なほど濃厚なディープキスをかまされて、俺はふらふらな足取りで逃げるようにその場を去るのだった。



しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

パパの雄っぱいが大好き過ぎて23歳息子は未だに乳離れできません!父だけに!

ミクリ21
BL
乳と父をかけてます。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

弟の可愛さに気づくまで

Sara
BL
弟に夜這いされて戸惑いながらも何だかんだ受け入れていくお兄ちゃん❤︎が描きたくて…

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...