乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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5月

side 赤塚-1

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 そしてついに先輩を捕まえた。

 まずは胃袋から掴んでやろうかと、金に物を言わせて奢り尽くして「赤塚くんすごいねっ美味しいよ♡」って喜んでもらう予定が、欲のない先輩はファミレスでいいとか言うんだもんな。
 これじゃあ、中坊の時にたむろってたのと変わらないし。
 でもファミレスが好きだと嬉しそうにメニューを眺める先輩が可愛いからいっか。

 そんな事を考えていると、先輩から突然不思議な質問をされる。

「赤塚くんは、どうしてこんなに僕に良くしてくれるの? 迷子だったのを助けはしたけど、それだけでここまでして貰うのも……なんか気が引けちゃうな」

 本当にこの人は自分に対する好意というものに無頓着というか、周りからどうやって思われているのか分かっていないんだろうか。なんというか驚きだ。しかし今日俺は、この人のそんなところを分かった上で、それを逆手にとって自分のいい様に事を進めようと思っているのだ。


「実は……先輩に相談に乗って欲しいことがあって……」


 多少の罪悪感で、目を逸らしてそう話を振る。

「えと、でも、僕でお役に立てるかな……?」
「先輩じゃないと駄目なんです。他の人じゃ……先輩にしか相談出来なくて」
「わ、わかった! それなら僕に聞かせて。僕に出来ることなら、何でもするよ!」

 ―――ああ先輩。優しいなぁ。

「……本当ですか?」
「うんっ、任せて!」

 ―――でもごめんね。

「実は俺」

 ―――全部が嘘ではないけど、優しい先輩の同情を誘うように話をさせてもらうよ。

「俺、EDかもしれないんです……」
「ごほっ……ぃ、いーでぃー……」


 飲みかけのアイスコーヒーを咽せ込む先輩。
 まぁ突然のED宣言は焦るよな。


「恋人は欲しいって思ってるんですけど、少し女の人が、怖くて……。いざそういう関係になるって時に、勃たないんです」
「そ、そっか……」
「童貞のままで一生過ごす事になるのかなって思ったら……辛くて」


 実を言うと、これは半分くらいは事実だ。

 自分にとってメリットがある男には全力で擦り寄る様な女の本性を何度も目の当たりにして、恐ろしいと思っているのは事実で、そんな奴らにいくら跨がられたところで俺のちんこは一切反応しなくなっていた。
 童貞なわけではなく、これからしばらくはセックスしなくても良いかなと思える程度には経験も積んできたので焦りはない。ただ、もしこれが童貞なんだと想像すると……可哀想すぎて辛くなる。

 想像に顔を顰めていると、もっと辛そうな顔した先輩が慰めの言葉をかけてきてくれる。
 よし、ここからが勝負所だ。


「赤塚くん、そんなに思い詰めなくても……」
「だから、先輩で練習させてくれませんか?!」
「ええっ、練習……?!」

 やはり先輩もこれは断るだろうか。
 ドキドキしながら畳み掛けるようにお願いをしていく。

「女の人は怖いけど、先輩ならこんなに綺麗でも本当は男ってわかってるから」
「う、うん……?」
「一生童貞なんて、辛すぎます。だから先輩、俺が女の人に慣れるように協力してくれないですか?」

「赤塚くん……」


 ダメかな……。
 そう思った時、先輩から承諾の返事が返ってきて、俺は小さくガッツポーズをした。

 そうして先輩を連れ込んだのはよくある普通のビジネスホテル。予算の問題でラウンジのあるような高級ホテルは用意できなかったのが悔しいけど、この一回で終わらせるつもりもないしね。なんで? と不思議がる先輩を、とってつけたような理由を並べ連ねて納得させる。

「先輩に触るんだから、ちょっといろいろ綺麗にしてきます! 待っててくださいね♡」

 そう言い残して一人バスルームに入った俺は、さっそく準備に取り掛かる。EDを理由にここへ連れ込んだのに、興奮して勃起してしまったら全てが水の泡だからな。何発か抜いて、落ち着いたところで戻らないと。
 これから先輩とすることを想像するだけで、俺のちんこはあっという間にギンギンになる。

(これでEDかもしれない、なんて。よく言ったもんだよなぁ……)

 自分のことながら、ひどい嘘だと思う。ごめんね、と心の中で呟きながらも、興奮の止まらない感情を持て余して、吐き出した欲望をシャワーで流す。
 なんでもないような顔をしながら、部屋へと戻った俺は、「僕もシャワー浴びてくるね?」と控えめに言ってきた先輩を全力で止めてしまった。いや、ほんとなんとなく。自分がマスかいたところに行かせるのが忍びないというか、うん……。先輩に汚いところなんてあるはずない、というのは本心なので、正直にそう言ったら若干引かれた気がする。本当のことなのに。



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