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6月
約束と約束
しおりを挟む「はい、もちろんです。俺、優太先輩に可愛がって貰ってるんで。先輩のこといつも守ってくれて有難うございます」
「……別に君にお礼を言われる筋合いはないけどねぇ? まぁいつもそばに居れる者として当然のことかな」
「ねぇ、守るって僕のこと? ちょっと大袈裟すぎない? なんの話してるの?」
なにやら俺のことを話しているらしい二人の会話の内容が、どうも突拍子もなくて俺の頭にはハテナが浮かびまくりだ。
こいつら俺のことどこぞのお姫様と勘違いしてるんじゃないだろうか。ごく普通の男子高校生なんですけど。にこにこと笑顔で見つめあっている二人の顔を見比べながら首を傾げていると、パッとこちらに向き直った赤塚に両手を握られる。
「先輩っ、俺の競技は騎馬戦なんで! 昼食の後すぐですから、絶対見逃さないで応援してくださいねっ」
「う、うん。任せて!」
ギラギラした目で懇願されて若干引いてしまったが、同じチームだというし言われなくても応援していたと思う。俺が了承の意を表すと、赤塚は嬉しそうな顔をして「約束ですよー!」と叫びながら、離れたところで待つ友人の元へと戻っていった。
「優ちゃん、あいつナニ? いつの間にあんなのと仲良くなったの」
「あれ、話してなかったっけ。校内迷子だったところを助けてあげた、後輩の赤塚くんだよ。最近よくご飯食べに行ったりしてるの」
その場に残ったのはなんでか不機嫌そうな浅黄と俺の二人。今朝から喜怒哀楽の激しい奴だなぁ。いつも赤塚としている練習内容に関しては、彼の尊厳にも関わることだから勝手に教えるわけにはいかない。大事なところは隠しつつ、出会いの経緯などを浅黄に説明した。
「ふーーーーーん。やっぱり俺仕事の本数減らそうかなぁ」
「えっ、どうして?」
「だって可愛い俺の彼女に変な虫が付くんだもん。そばで見守ってなきゃ心配で」
はぁ…と溜息を零しながら腰に手を回してきた浅黄は、流れるように俺の尻を撫でている。おいおい。いくら体育倉庫の周りは人がいないからってそんなえろっちく触られたらムズムズしちゃうだろ!
「彼女って……冗談ばっかり、やめて……っ」
「ん? 彼女でしょ? この間は俺の手で弄られて、あんなに可愛く喘いでたじゃん♡」
「あっ、あの時の話は、もうしないって約束……! 恥ずかしいから忘れてよぉ~」
浅黄の手が妖しく蠢いて、俺の尻たぶを拡げるようにしたり、ギュウッと締めたり、とにかくいやらしく揉みしだく。
こ、こいつ……! 冗談にしても悪質すぎんだろ!
ちょっと勃っちゃったじゃないか!
「ごめん、ごめん。でもさ、忘れられるわけないよ。好きな子が自分のせいでヤラシくなっちゃうなんて、男冥利に尽きるじゃん?」
「そんなぁ……ぁんっ、恥ずかしいよぅ~」
「んーーそうだよねぇ♡ 優ちゃんは恥ずかしがり屋さんだもんね~♡」
でれでれに相好を崩した浅黄は、ぎゅーっと俺の身体を抱きしめて首筋に顔を埋める。その瞬間、浅黄が触れたところからチクッとした刺激が走った。
「い、たっ……!」
尻を揉まれる心地よさに、思わず場所も忘れてぼんやりしていた俺は、吸いつかれたような、抓られたような、突然襲われた首筋の痛みに驚いて浅黄から身体を離した。
「? 何、したの?」
「ん? 俺の物ってシルシ、付けちゃった♡」
トントンと、先ほど俺が痛みを感じた箇所と同じところを、自分の首筋で指差しながら浅黄が悪戯っ子のように笑った。
「それってもしかして……」
「そ、キスマーク♡ 白い肌に映えるね~えっちだわ」
「ひどいっ! そんなの付けたらジャージの上、脱げなくなっちゃうのに……!」
「脱がなくて良いの~。誰が見てるかも分からない場所でTシャツ一枚になるなんて危険だから。可愛い乳首の場所も丸わかりだし」
「ひぁんっ!」
じん…っとした熱を持った首筋を押さえながら、俺が文句を垂れていると、浅黄はピンポイントで乳首を突きながらそんな事を言ってくる。
「えっちすぎるから、隠して?」
口の端をクッと持ち上げた浅黄の表情にどきりとして、顔面に血液が集まるのを感じる。ちょっと突かれただけで喘ぎ声のような悲鳴を出してしまったのも恥ずかしかった。
(た、たしかに最近みんなに弄られすぎて、いつも乳首が勃つようになっちゃった気がするけど……!)
風呂に入るたび、日に日に存在感を増していく乳首から目を逸らしていたのだが、まさかTシャツすら押し上げていたのだろうか。
「でも……暑くて、熱中症になっちゃうよ……」
「優ちゃん、競技には出ないでしょ? 応援席の日陰でゆっくりしてなよ」
「ううう……」
問答無用でジャージのファスナーを首元まで上げてくる浅黄。顔を真っ赤にしながら首元まで隠されたジャージの裾をぎゅっと握りしめた俺の姿を見て、満足そうな顔をする。
イケメンは、存外独占欲が強いらしい。
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