乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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6月

side 青島-4

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「……乙成。転ぶ前に何か、言いかけてなかったか?」
「え……」

 とにかく俺は無心になって、素数を数え、今のこの現状を打破することだけを考えた。一つでも選択を間違えたら、俺は半密室で一人で勝手に完勃ちした変態野郎になる。彼に気付かれる前に早く距離を取らなくては……。

「あ、あのね、あそこの上に、他の備品に隠れて見えにくい箱があって。それに飾りが入ってないかなって思ったの」

 俺の意図を汲んでくれたのか、優太きゅんは先ほど見つけたという箱について一生懸命説明をしてくれた。しかし、そこからがいただけなかった。俺の制止をまったく聞くことなく、頑張り屋さんの優太きゅんは、無理して自分一人で解決しようと不安定な足場へと飛び乗ってしまったのだ。
 落ちたら大変だ! と、ハラハラしながら、箱と奮闘する優太きゅんの後ろ姿を見守る俺。

 あー、ぴょんぴょん跳ねるのクッソ可愛い……。
 うおっ⁈ あんなお尻振って……魅惑のお尻ダンスリターンズだと⁈⁈
 って、いやいや、だめだめ。冷静になるんだ俺。このままでは暴発待ったなしだぞ……

「んっ……もう少し、奥……届きそ、ぅ……」

 んんー????????
 優太きゅんの少し苦しそうな声が聞こえたんだけど、その内容が明らかにえっちなそれなんですがぁ????????

「あと、ちょっと……ん」

 後ちょっとでどうなっちゃうの⁈
 ねぇ、もしかして優太きゅんの奥に届いちゃうの⁈ ナニが⁈⁈

「あっ! 取れたっ」

 鼻息荒く、ちんこをギンギンにさせた俺は、その声に現実へと引き戻された。
 まずい、非常にまずいぞ。これは確実にバレるレベルで勃ってしまっている。自慢じゃないが、俺のちんこはでかいんだ。ユルっとしたジャージではあるけど、テントが張っているのが丸わかり、だと思う……。
 自分の股間事情を心配していた俺なのだが、目の前をふらふらと歩く優太きゅんはもっと心配だ。

「乙成、無理するな」
「大丈夫……あと少、し……っわぁ⁈」

 そう言ったが最後、優太きゅんはバランスを崩して倒れ込んでしまった。

(まずい……!)

 俺の推しに傷一つでも付けてなるものか!
 今日、この日のために野球の練習を頑張ってきたのかもしれない。俺は逆転スリーランでホームベースへ帰ってきた時かの如く、力強く地面を蹴り上げると、優太きゅんと地面のその隙間に身体を滑り込ませるのだった。

 なんとか全身を使って優太きゅんの身を守ることが出来た。のだが……。

 ――― ゴリッ

「ひゃぅっ⁈」
「ウッ……」

 俺の上で身動ぎをした優太きゅんのふんわりとした股座と、俺のガチガチに硬くなった勃起ちんぽが擦れてしまうという大事件が勃発した。勃起だけに。

 って、そんなふざけて現実逃避している場合じゃなくて! もう言い訳のしようも無い程に、完全なる現行犯逮捕案件。終わった俺のハッピーライフ。ごめんね優太きゅん、オタクはオタクらしく、やはり陰で見守るのが一番だったんだよな……。

「あ、あのっ、ごめんね……! すぐ退くからっ」
「っ乙成! 急に動いたら危ない……っ」
「ぁ……っ?」

 どんな罵倒をされるかと思っていたら、逆に謝り出した優太きゅんは、顔を真っ赤にして慌てて立ち上がる。そんな急に動いたら危ない!そう思って止めるが、時すでに遅く。くらりと身体を傾けた優太きゅんは、そのままサッカーボールの入ったカゴに頭を強打して気を失ってしまった。

(ま、まずい! 最悪、脳震盪のうしんとうになってるかもしれないから、身体をすぐ動かすことも出来ないし……)

 ぶつけた頭部から、血が出ていないことだけを確認すると、俺は患部を少しでも冷やすために、自分が着ていたTシャツを脱ぎ、倉庫の外へと走った。近くにあった水道の水で濡らしたそれで、優太きゅんの頭を押さえる。しばらくその場で様子を見るものの、どうすることが最善なのか一人で判断をすることは難しかった。

(まだ意識は戻らない……ここは空気も良くないし、やはり保健室に連れて行こう)

 暑くて息苦しさを感じる倉庫へずっと寝かせておくわけにもいかない。俺はなるべく優太きゅんの頭を揺らさないように、しっかりと固定したままに、最短距離を計算して保健室へと急いだ。


 ***


「先生、怪我人だ! 鉄のカゴで頭を強打して気を失ってる。急いで診てくれないか⁈」
「えぇっ⁈ なんでそんなことに……って、君上半身裸でどうしたの⁈」
「俺のことはいいから! 早く乙成の具合を診てくれよっ」

 どうでもいいことばかりを気にする保険医をせっついて、ベッドへ寝かせた乙成の怪我の具合を確認してもらう。
 頭をぶつけた時の様子や、此処に連れてくるまでに自分がしたこと、時間など、聞かれるままに全部答えていく。

「うん。それなら大丈夫そうだね。一度目が覚めてみないことには分からないけど……当たりどころが相当悪くない限りは数十分もすれば目が覚めると思うよ」
「そ、そうか……よかった……」
「ふふ。青島くん? 君の処置が的確だったのも彼にとっては僥倖だったね。起きるまで此処にいるかい? 俺はこれから職員会議があるからちょっと席を外しちゃうんだけど……」
「はい、しばらく様子を見てます」
「そっか、じゃあよろしくね。他の生徒が来たら、30分後にまた来るように伝えておいてよ」
「わかりました」



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