乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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6月

side 青島-1

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※青島のイメージが著しく損なわれる可能性があります。硬派な青島くんを好きになってくれた方は…あまり見ることをお勧め出来ません…笑
※どんな変態もバッチコイ!という方は、是非一緒に楽しんでください!




*****



 
 硬派。
 クールで無愛想。
 なに考えているか分からない。

 これまでに俺を評して言われたことのある言葉だ。


 俺はただ、野球が出来ればよかった。ただ上手くなりたくて夢中になって練習をしていただけなのに、ある年齢を超えた頃から、徐々に外野の声がうるさくなってきた。
 見た目だけで判断してきゃーきゃー騒ぎ立てる女子や、それを僻んでなにかと文句をつけてくる男子。それらのしがらみが面倒で、もういいかなぁ、なんて思ったこともあったけど、に出会って俺の世界はガラリと変わったのだ。


「っはぁ~~~♡ しおたん、今日も史上最強可愛い過ぎるんだが……」


 しおたんは、Lovely♡Planet、通称ラブプラと呼ばれる5人組アイドルグループで、センターを務めるこの世の宝だ。

 一番苦しかった中学時代、あと一歩で引きこもりになるかもしれないといった瀬戸際にいた俺は、何気なく付けていた深夜番組で、初めてラブプラに出会った。まだまだ彼女たちの知名度が少なかったその頃、番組中のチャレンジ企画で身体を張って頑張っている彼女たちの姿を見て、俺は自然と笑顔になっていた。なぜだか途中で消すことが出来なくて、そのまましばらく見入っていると、彼女たちが新曲を歌うコーナーに切り替わる。


 その歌を聴いて、踊る彼女たちを観た時、俺は新しい世界の扉を開いたんだ。


 "だいじょうぶだよ"。そんな、ありきたりにも思えるタイトルの曲。
 今まで歌を聴いて泣いたことなんて一度も無かったのに、なぜだかその時の俺は、その曲の歌詞がぐさぐさと胸に突き刺さった。画面の中でキラキラと輝いて、くるくるぴょんぴょん舞い踊る彼女たちの姿を観ていると、不思議と元気が出てくるような気すらした。

(なんて可愛いんだろう……)

 特にセンターで踊るしおたんの、弾けるような笑顔からは目を離すことが出来なくて。

『頑張らなくていいんだよ』
『いつでも私が傍にいるからね』
『絶対、だいじょうぶ!』

 歌の中でしおたんから伝えられたその言葉は、人知れず傷ついていた俺の心にじわじわと広がっていく。

 恋に落ちたのは、一瞬だった。






 それからというもの、部活と学校以外の時間は、ほとんどラブプラの追っかけに費やした。しおたんはいつ見ても可愛くて、俺のことを応援してくれていた。

 初めて握手会に行った時には、楽しみにするあまり数日前から一切眠れなくなって、肝心の握手会当日に熱を出してしまうという大失態を犯した。それでも諦め切れなかった俺は、彼女たちに風邪を移してしまうことのないように、寒気対策の防寒をがっつりした上で、マスクを3枚重ね、眩しさのあまり目が潰れてしまわない様にサングラスをして会場へと向かった。
 途中で数回職質されるというトラブルに見舞われたが、念願の生しおたんと握手することの出来た俺は、天にも昇るような気持ちだった。

「ず、ずっと大好きでした……! 頑張ってください……!」
「ありがとう~♡ しおも、ずっと貴方の味方だよっ! これからも応援よろしくね♡」
「はっ、はい!!!!!!」

 これからもずっと、俺はしおたんだけを愛し続ける。
 彼女以上の人物なんて、この世に存在するはずなどないのだから。


 そう信じていた俺は、野球推薦を受けて強豪校である高校への外部入学を決めた。
 外部入学希望生のみを集めた入学試験会場で、一定レベルさえクリアしていれば落ちることのない俺は、気楽に試験へ挑んでいた。一通り問題を解き終わった後、まったく分からないという感じでもなかったし、多分大丈夫だなぁ、なんて思いながら少しだけ周りに目を向ける。
 必死になって机に噛り付いている奴らがほとんどの中、一人、すっと背筋を伸ばして座り、どこか他とは違うオーラを纏った子がいた。

(なんだかあの子……目が離せないな……)

 アイドルオタクの俺の本能が何かを感じとった。少し離れたところに座る人物の横顔を、斜め後ろの席からじっと眺めていると、その子がふと顔にかかった髪を耳にかける。

「………!」

 それは、初めてラブプラに出会った時と同じくらい、いや、それ以上の衝撃だった。これまで、しおたん以外に「可愛い」と思った人はいなかった。同じくらい「綺麗だ」と感じることも。その子は一瞬横顔を見ただけだけなのに、俺からその二つの感情を引きずり出したのだ。

(は? やば過ぎでは? なんだあの子……もしかして天使とか???)

 俺は試験時間が終わるまで、ひと時も目を離すことなく、天使の横顔を眺め続けるのだった。

 その後無事に高校入学を果たし、入学式で再びあの天使を見つけることが出来た俺は、俺を取り巻く全ての奇跡に心から感謝した。
 一つだけ驚いたのが、天使が男子用の制服を着ていたこと。入学試験の時は私服だったため、てっきり女の子だと思っていたのだが、実は男の子だったらしい。しかし性別では語れないほどに、天使、"乙成優太"くんの存在は尊いものなのだ。

 そうして俺の世界には、"しおたん"と"ゆうたきゅん"という、二大推しメンが誕生したのだった。




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