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6月
女神様は今日も元気
しおりを挟む「運動した後は、ストレッチやマッサージをするのもいいんだが……」
「それ! それも教えて欲しい~!」
お願いお願いと足をバタつかせる俺に、少し乗り上げる形で背中へと手をついた青島は、そのまま程よい力加減で指圧マッサージをしてくれる。
「背中のマッサージは、誰かにして貰わないと出来ないけど、疲労を残さないようにしっかり揉み込む」
「ぁっ、ん……きもちぃ……」
「………」
「あ、あ、そこ……ん~~、青島くん上手だねぇ」
まるでゴッドフィンガーかと言わんばかりの、絶妙に痛気持ちラインを押してくれる青島の指技に、俺はもうメロメロだった。
「……そうか……? 部活でいつもしてるからかな」
「いいなぁ。運動は出来ないけど、マッサージだけなら僕も毎日お願いしたい……」
「これくらい、いつでもしてやるよ」
「ほんとっ? 嬉しい~♡ そしたら体育祭の準備期間で、今日みたいに時間が空いたら、また僕に筋トレ教えてくれないかな?」
「別にかまわないぞ」
「わーい♡ その時はマッサージもしてねっ」
「ああ、わかった」
神様、仏様、青島様!
俺は思わぬところで、最強のトレーナーとマッサージ師を手に入れることが出来たのだった。
◇◇◇
明くる日の朝、家を出たところでニコニコ顔のミユに捕まった。
「おはようございまぁす♡ 優くん、今日が何の日かわかってますかぁ?」
「もちろん。体育祭でしょ?」
いつも以上に輝いている笑顔がなにやら恐ろしく見える。
何? なんなの?
体育祭ってそんなすごいイベントだったっけ⁈
「もちろん! 体育祭は乙女ゲームで一番最初にある学校行事ですよぉ。ここで発生するスチルも多数。しかも好感度の順位などもわかってしまう、とっても便利なイベントなんですから~」
相変わらず俺の心の声にまで、バッチリ反応してくれるミユさん。ありがとう。
とっても助かるんだけど、秘密の考え事してるかもしれないから、出来れば聞いて欲しくないんだけどなぁ。
「ふふ、善処します♡」
「……よろしくね。でも、スチルに好感度かぁ。そういう話をされると、急にゲームっぽい感じになるね」
日本人の魔法の言葉『善処します』を使われて、切なる願いを華麗にスルーされた俺は、早々に諦めて話題を変えることにした。すっかり忘れてたけど、俺がこの世界で乙成くんとして過ごすようになったのも、ミユたち腐女神が望む役割を担うため……なんだもんな。
「あくまでゲームを模して作った世界なだけなので、スチルと言っても本当に一枚の画像として記録されるわけではないんですぅ。好感度も何がきっかけで上がるのかは、私たちでもはっきりと分かりません~」
「あれ、そうなの?」
「ですがいつもの優くんがしている行動が、ことごとくプラスに働いている事だけは確かなので、安心してくださいね~♡ 着実にハーレムエンドまでの道が形成が出来てきていますよぉ!」
……全然安心出来ないんだが。
顔を引き攣らせる俺を無視して、ミユが何やら熱く語っているので、俺はとりあえず適当に相槌を打ちながら、鬱々とした気持ちを抱えて学校へと向かうのだった。
********
いつもお読みくださりありがとうございます!
明日から毎朝の更新と合わせて、差し込みで青島視点を20時に公開していきます。(※本話の後に挟みます)
読んでいただいた方が細かい色々が伝わるかな?と思うのですが、キャラのイメージが…崩れるかもしれないので…笑 それでも大丈夫!という方は楽しんでいただけると幸いです(^^)
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