乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

文字の大きさ
上 下
81 / 162
6月

悪気はないんです。本当です!

しおりを挟む


 そんなことを考えながらダンボールの中を確認してみるが、残念ながらこちらはハズレだった。中身が違ったことを青島に伝えようと振り返ると、蹲み込んで棚の下段を探っている青島の斜め上の方。重なり合うように片付けられた備品の、さらに奥に隠れるようにして置かれた箱があるのが目に入る。

(ん? 青島くんの上の方にあるのも、箱だよね……?)

 恐らくあれでは近くで見たら、手前に置かれた物にしか目がいかないだろう。その奥に隠れた箱が、俺達の探している物なのではないかと考えて、青島にそのことを伝えるために駆け寄っていく。

「青島くんっ、あの箱……っあ!」
「え?」

 あろうことか自分の左足に右足を引っ掛けて、バランスを崩した俺は、呼び声に振り返った青島目がけて突撃してしまう。

「……っび、びっくりしたぁぁ……青島くん、ごめんね! 思いっきり抱きついちゃった……」
「ぅ……いや、平気だ。乙成は怪我してないか?」
「うん、大丈夫。ありがとう」

 目の前にあるものに縋り付くように、青島の上半身を両手で抱えるようにすることで、地面への激突を免れた俺は謝罪の言葉を口にした。突撃した時に振り返っていた青島は、俺の胸に顔面を強打していたはずなのだが、怒るどころかこちらの心配までしてくれる。無愛想なのは表情筋の問題で、こいつめちゃくちゃいい奴なのでは?

 青島の優しさに感激しながら、その男前な顔をしげしげと眺めていると、少し目を泳がせた青島が、俺の身体から距離をとろうとその手を伸ばしてきた。

「悪い、乙成。大丈夫そうならそろそろ……」
「あっそうだよね。ごめ……ひぁんっ♡」
「……っ!」

 わずかに顔を背けて伸ばされたその手は、確かに俺の上半身を押すようにしたのだが、運悪くその指の一つが、あろうことか俺の乳首をピンポイントで押し込んだ。
 薄いTシャツ越しに押し付けられた硬い指先の感触。突然の刺激に俺の口からは我慢する間もなく、明らかな嬌声が溢れてしまった。

「い、今のは、違うから……っ!」

 伸ばした手をそのままに硬直する青島。俺は顔を真っ赤にして、よく分からない言い訳を口にする。

 前まで乳首なんてただの飾りくらいの物だったのに。浅黄の時にも思っていたけど、こんな風に触れただけで感じてしまうなんて、日常生活で支障ありまくりなのでは⁈
 涙目になりながら、この場をどう乗り切るか考えている俺に、青島が目を逸らしたまま声をかけてきた。

「……乙成。転ぶ前に何か、言いかけてなかったか?」
「え……」

 俺の出した声を一切揶揄うこともなく、何も無かったかのような質問。そう言う青島の耳は、わずかに赤くなっているような気がするので、聞こえなかったのではなく、聞こえないフリをしてくれているのだろう。

(青島くん……! なんて紳士なんだ……!)

 この場に居たのが浅黄や黒瀬だったのなら。恐らく、俺の出したスケベな声を存分に弄り倒した後、「もっと聞きたい」などと言いながら、身体中に手を出してきたはずだ。あの二人の言動の方がおかしいという気もしてきたが、とにかく青島の優しさを無駄にしないように、先ほどのは無かった事にして、話を進めることにする。

「あ、あのね、あそこの上に、他の備品に隠れて見えにくい箱があって。それに飾りが入ってないかなって思ったの」
「そうか。じゃあ俺が……」
「大丈夫だよ! あの高跳び用のマットに登れば、僕でも届きそうだし。ちょっとやってみるよっ」
「え、危ない……」
「平気平気っ、僕に任せて!」

 どうにか名誉挽回したい俺は必死だった。積み上げられた分厚いマットに飛び乗ると、不安定な足場で背伸びをしながら手を伸ばす。

(んー、あとちょっとで取れそうなのになぁ)

 手前にあった備品をどかして、奥に追いやられた箱を取り出そうと、ぴょこぴょこ飛び上がる。

「んっ……もう少し、奥……届きそ、ぅ……」

 指先で触れた箱を懸命に引きずり出そうと、もがく俺。ここまで来たらなんとか自分一人で取り出したい。

「あと、ちょっと……ん、あっ! 取れたっ」

 少しずつ少しずつ、手前の方に出てきた箱は、ついに両手で掴み取ることが叶った。重たいそれを頭に乗せるようにしながら、若干ふらつきつつ青島の元へ戻ろうとする。

「乙成、無理するな」
「大丈夫……あと少、し……っわぁ⁈」

 心配してくれる青島の言葉を無視して、強行突破しようとしたところ、やはりというか残念ながら、最後の最後に足を踏み外してひっくり返る俺。
 持っていた箱はぶん投げて何処かに飛んでいき、同じく飛び出した身体は青島が素晴らしいスライディングを決めて受け止めてくれるのだった。

「いたた……青島くん、ありがとう」
「大丈夫か?」
「うん、あ! ごめんねっまた僕、青島くんに乗って……」

 今度こそ完全に、青島の身体に跨るようにして乗り上げている俺。身体を起こそうと身を捩るようにして動いた瞬間……ゴリっと硬くなったナニが俺の股間を擦り上げた。

「ひゃぅっ⁈」
「ウッ……」

 これは、この感触は、まさか⁈




しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

パパの雄っぱいが大好き過ぎて23歳息子は未だに乳離れできません!父だけに!

ミクリ21
BL
乳と父をかけてます。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

弟の可愛さに気づくまで

Sara
BL
弟に夜這いされて戸惑いながらも何だかんだ受け入れていくお兄ちゃん❤︎が描きたくて…

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...