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6月
いい奴だけど変わってる
しおりを挟む「あ、青島くん、野球部の練習もあるのに実行委員なんて大変だね?」
「……ああ。でも、毎年部から2年が数人出ることに決まっているんだ」
「そうなんだぁ。そういうのって、1年生とかが任されるものなんだと思ってた」
「1年は進学・入学したばかりのやつが多いから。まずは行事を全力で楽しめって方針らしい」
「へぇ~、なんだか優しい方針だね。素敵だなぁ」
お? 思ってたより会話、出来てるんじゃないか?
お互いに手を動かしながら話をしてみると、短文ではあるものの、意外と青島も言葉を返してくれるようになってきた。もしかして、普段無愛想なのは単純に人見知りが理由、とかなのかな。
そんなことを考えながら、次々と探し当てた備品を運び、リストにチェックを付けていると、ボールペンをどこかに引っかけて取り落としてしまう。
「あっ、ボールペンが……!」
「大丈夫か」
「う、うん。多分ここら辺に落ちた気が……」
転がったと思われる先は、サッカーボールが積み上げられるように入った、キャスター付きの大型収納カゴの下だ。
「この隙間に入ったと思ったんだけど……」
うーん、暗くてよく見えないな。
顔を地面に付けるくらい下げて、目を凝らすようにして覗き込む。
(ん~~? あ、あれかな?)
腕をぐっと伸ばして、奥の方に入り込んでしまったボールペンを取り出そうと躍起になる。
あとちょっと、もう少し右か? いや左……くそっ、指先には当たるのにあとちょっとが届かないー!
しばらくそうして格闘した後、なんとか無事に取り出すことが出来た。
「よかったー! 青島くん、取れたよっ」
「……ああ、よかった」
戦利品を高々と掲げて振り返ると、青島はあらぬ方を見て素知らぬふり。ってなんで顔背けてんの? ちょっとは手伝ってくれたって良かったのに。というか、今更だけどキャスター付いてるんだからカゴの方を動かせばよかったんじゃね? 終わった後に気付くくらいなら、気付かずに終わりたかった……。
俺は地味に傷付きながらも、先ほど見つけた備品にチェックを入れた。自分のチェックを終えると、そのままリストを青島に手渡して、彼の分も印を追加してもらう。次々にチェックを入れる青島の手元を覗き込むと、だいたい9割がた埋まってきたところだろうか。
「結構揃ってきたね」
「そうだな。あとは飛ばしたやつを協力してもう一度探すか」
「うん、そうしよう!」
青島の意見に賛同すると、さっそく二人でまだ見つかっていない備品の確認を進める。
しかし、体育倉庫というのは風通りが悪いな。先ほど無駄に体力を使ったというか、必死になってボールペンと戦っていたため、急に動きを止めてしまうと汗がどっと噴き出てきた。体温を下げようと、Tシャツの裾をバタバタと扇いで風を送る。
あ、やべ、汗垂れてきたし。タオル持ってきて無いんだよなぁ……このまま拭いちゃうか。
タオルの代わりになるものが他に見つからなくて、扇いでいたTシャツをそのまま捲り上げて、頬を伝う汗を拭った。なんだか埃っぽいし、さっさと終わらせて風呂にでも入りたい……そうして俺が遠い目をしていると、何故か目の前に立つ青島の動きが止まっていることに気付く。
「……青島くん? どうかした?」
なんだか俺の上半身を見て固まっているような?
こいつも運動部なんだから、お行儀が悪い!って怒ることは無いだろうし。はっ、もしかして、俺の貧相な身体に衝撃を受けている、とか⁈
「ご、ごめん。見苦しいものをお見せして……」
「え⁈ い、いや。そんなことは……」
思わず謝罪の言葉を口にした俺に、明らかに動揺した様子の青島。それ図星を突かれたやつの反応だぞ。隠された方が傷つくからやめて欲しい。
「……でも、あまり、人前でそういう事は……しない方がいい……」
嘘。やっぱりしっかり隠して下さい!
俺だって分かってるから!どストレートで斬り込まないで!
「う、うん。気をつける、ね」
若干顔を痙攣らせながら、なんとかそう言った俺に青島は小さく頷くと、リストを指差しながら言った。
「次はこれ探さないか? 小さくても量があるし、もう少しよく探したら見つかりそうだと思うんだ」
「国旗? 確かに。何かの箱に入ってるのかなぁ」
青島が示したのは、体育祭でよく飾り付けに使われている、各国の国旗を模した飾りだ。一つひとつのサイズ感は小さいものの、広い校庭に張り巡らせるだけの数があるはずだから、ある程度の大きさがある何かに片付けられているはずだ。
「さっき向かうにダンボールあったから見てみるね」
「ああ。俺もあそこの下が怪しい気がするから……もう一度見てみる」
再び手分けをして倉庫内を探す俺達。初めはどうなることかと思ったけど、意外と息が合ってきたんじゃないか?
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