乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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5月

秘密の撮影会!じゅんび

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「ちなみに、優ちゃんのこと男だって分かってるのは、この間会ったryoちんと、華恋だけだからね」
「本当に大丈夫かなぁ。バレちゃいそう……」
「絶対大丈夫だって! 俺が保証する!」

 それはそれで、男としてどうなんだ?と複雑な気持ちになっていると、どうやら控え室へと着いたらしい。部屋の扉を開けた先には、今も名前が挙がっていた凄腕スタイリストのryoさんと数名の女性スタッフがいた。

「あら~優ちゃんっ! 今日も可愛いわね!」

 待ってたわよ~♡と抱き疲れて、その勢いに押されて倒れそうになるところを浅黄が支えてくれた。

「この間会ってから、もうインスピレーションが湧いてきちゃって湧いちゃって……大変だったんだからぁ♡ さ、着替えの後はメイクもヘアセットもあるのよ。チャチャっとフィッティングしちゃいましょうか♡」
「え、あ、はい……!」

 嵐のような激しさに巻き込まれ、控え室の奥にあるカーテンで仕切られた場所へと連れ込まれる。いわゆる試着室的なところなのか、人が二人入って、まだ少し余裕がある程度の広さで、全身が映る鏡が壁に取り付けてあった。
 あれよあれよと下着一枚にされた俺は、次々と用意された服を合わせられていく。

(これが業界の普通なのか……そりゃあ買い物の時に試着室へ一緒に入ろうとするよな)

 目まぐるしく動き回るryoさんに圧倒されながらも、先日の買い物の際に浅黄が一緒に試着室へと入ったのには、こういう理由があったのかと一人で納得をしていた。

「肩幅と丈は平気そうねン。足りないのは、お胸だけど……これはシリコンパットでなんとかしましょ。あら、やだぁ。腰は余っちゃうの? 華奢なのねぇ~♡ ヨーコちゃん安全ピンあったかしらぁ」
「はぁーい。入れますね~」

 カーテンの隙間から安全ピンが手渡され、俺の腰の布を摘んだryoさんは、それを使って器用に数ヶ所を留めていく。

「ryoちん、いけそー? 俺、先にスタジオ戻るけど」
「問題ないわぁ♡ むしろ想像以上にいいわよ、優ちゃん。完璧に仕上げていくからスタジオで楽しみにしてなさい!」

 ryoさんがそう答えると、浅黄は待ってるね~と言い残して控え室を出て行ってしまった。俺はまだまだなのに、あいつはもう準備が終わったというのか。ずるい……。

 何度か衣装を着替えた結果、最終的にはレースとフリルがあしらわれた上品な黒のワンピースに決まったようだ。
 女性より骨張っている肩はレースが覆い隠し、分かりにくくなっているし、ハイネックの首元で喉仏を隠すのも忘れていない。足りないと言われた平らな胸は、なんと女性物の下着を付けさせられ、中にぐにゅぐにゅとした塊を突っ込まれた。母さん以外のブラジャーをこんな形で見ることになるなんて思わなかったです。結果として、自然な膨らみを作った俺の胸は、自分でも騙されてしまいそうなほど、普通におっぱいだった。プロってすごい……。

 自分だと分かっていても身体だけを見れば女の子にしか見えない、その素晴らしい出来栄えに、思わず呆けてしまう。ちなみに自分についたおっぱいを触ってみるのも忘れませんでした。触っちゃうよね、男の子だもん。
 こっそりとモミモミしていると、ズレちゃうからやめなさいと注意したryoさんの手には、いつの間にか紙袋が握られていた。

「さて、優ちゃん。仕上げは、コ・レ・よ♡」
「え、それって……」

 チラリと紙袋から出して見せられたのは。

 そう。明らかに布面積の少ない、これまた女性物の下着だった。



「い、嫌ですっ! ぱ、パンツまでなんて……っ」



 そんなもんで何を隠せって言うんだよ!
 恥ずかしさに顔を赤らめながら、周りの人に聞こえないように、なるべく小さな声で抗議をする。

「パンツなんて見えないんだから、今のままでも問題ないですよね?!」
「あら、ダメよぉ。ポーズによってはラインが出てしまうかもしれないし、このスカート、スリットが入っているから、万が一見えた時に男の子だってバレるわよ?」

 スカートの裾をひらりと広げられると、たしかに結構な深さのスリットがあるデザインだった。じゃあこれじゃない服にすればいいじゃないか、と思ったが、プロが選んだ服にケチを付けるわけにもいかず、必死になって反論の言葉を探す。

「アタシは別に構わないけど。男の子だってバレて、恥ずかしい思いをするのは優ちゃんなんじゃなぁい?」
「そ、そんなぁ……」

 そうは言われても、いくら乙成くんのモノでもいろいろなものがはみ出してしまうはず。
 逃げ道を見つけられぬまま、うだうだ悩んでいるうちに、ryoさんに履いていたボクサーパンツを流れるように剥ぎ取られ、無理やり可愛らしさショーツに履き替えさせられた。するりと局部に触られて、思わず肩を揺らしてしまうが、俺の身体が反応してしまう前に、上手に全てを布の中に仕舞い込み、手を離される。

「はい♡ これで完成よぉ~♡ あとはメイクとヘアセットね! ほらほら、早く移動する!」
「ううう……こんなことになるなんて……」

 なんだか大事なものを失った気持ちになった俺は、さめざめと泣きながらメイクさんのところへ向かうのだった。



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