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5月
絶体絶命の俺
しおりを挟む変な男のせいで鬱々としていたところ、ミユがとびきりの笑顔を浮かべて俺の部屋までやってきた。
「優くん! 貴方って人は、もう完璧ですぅ♡」
「へ?」
今にも躍り出しそうなくらいにテンションの高いミユは、俺の両手を掴み、胸元に引き寄せるとうるうるした目で俺を見詰めながら言う。
「こんなに一気に好感度向上が見られるなんてぇ♡ もう、次はどうなってしまうのか、楽しみで仕方がないですぅ~」
「そ、そう……ヨカッタネ」
「うふふ♡ 今日はそんな優くんに、一言だけ伝えたくて」
はぁ……と熱い吐息を吐いて、恍惚とした表情を浮かべるミユはなんともエッチな風貌なのだが、その口から出てくる言葉は理解の範疇を超えた、異次元のものだった。
「お尻を使うときに例えスキンを使わなくても、お腹を壊すことはありませんし、優くんのお腹はいつも綺麗に準備されていますぅ♡」
「と、言いますと……」
「どれだけ中出しされても栄養になりますし、浣腸しなくても粗相をすることはありません♡」
そう語るミユは、まるで夢みる少女ようだ。
「ちなみに言うと一般的に性感帯だと言われるところは少しの刺激でも快楽を拾うスペシャル仕様です♡ どうぞ、最高の初体験を楽しんでくださいね……!」
……へぇ~~~~~なるほどね。
それ、なんて呪い?
◇◇◇
ミユからそんな衝撃の告白を受けてから翌日。
俺は今絶体絶命です。
夜21時過ぎの我が家。
ここは誰にも揺るがせない、俺の安息の地
……のはずだった。
しかし今、そんな我が家で黒瀬と二人きり。
更には問題の黒瀬氏は我が家の風呂に入っているのだ……――――
いつもの如く、バイト終わりに家まで黒瀬に送って貰っていると突然のゲリラ豪雨に見舞われた。勿論、俺と黒瀬はずぶ濡れで、間もなく家には着いたものの、流石にそんな黒瀬をそのまま家に帰すことなんて出来なかった。俺のことを送らなければ雨に濡れることなんて無かったんだから。
大丈夫だと断る黒瀬を半ば強引に家の中へ招くと、そこからは母さんの独壇場だった。普段連れてくる友達といえばミユくらいだった俺の、初めての男友達ということで大興奮した母さんは、俺が風呂に入っている間に黒瀬に食事と泊まりの約束をこじ付けていた。
こんなことなら遠慮する黒瀬を無理矢理にでも先に風呂に突っ込んでおけばよかったんだ……と後悔をする。だって、黒瀬が雨が止んだら帰るからタオルと着替えを借りられれば十分だって頑なに断るのだ。そんな無理強いすることでもないだろう?
しかし、まだそこまでは良かったんだ。
例え泊まったとしても、そこには諸悪の根源たる母さんが一つ屋根の下にいるのだから、黒瀬も変なことは出来ないだろう。そうして俺は安心していたんだ。母さんの爆弾発言を聞くまでは。
平常心を装って同じ食卓へ付いていると、おもむろに母さんが話し始めた。
「そうそう優太、この後ママちょっと出掛けるから」
「えぇッ ど、どこに?!」
おいこら、ご飯が喉に詰まりかけたぞ。
黒瀬の手も止まっているじゃないか。
「なにそんな驚いてるのよ~。実はミユちゃんのおばあちゃん、お風邪引いちゃったみたいでね。一人でお世話するのは大変だと思うから、今日はママ神崎さん家に泊まることにしたの」
「え……!」
「優太を一人にするのも心配だったけど、今日は黒瀬くんがいるし。それにママがいた方が気を遣っちゃうかもしれないでしょ?」
「そ、それは」
「…………」
黒瀬よ! 何故否定しない……!
「明日の朝ご飯は用意してあるから。何かあったら連絡してね~」
その言葉を残したが最後、さっさと出掛ける準備をした母さんは俺と黒瀬を残して、お隣のミユの家へと行ってしまうのだった。
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