55 / 162
5月
慣れって恐ろしい ※黒瀬
しおりを挟むびっしょりと濡れたシャツは水分を含み、所々肌色が透けている。そして肌色の他に一点だけ。乳首のところだけうすーい桃色が透けているのだ。
(ふ、普段乳首なんて気にしないから忘れてたけど、なんかこれエロくないか……?!)
衝撃の事態に固まっていると、先に動き出したのは黒瀬だった。
「風邪を引くとまずいからな、着替えるぞ」
そう言って固まる俺のシャツに手を掛けて外し始める。まるで介護されるかの状況に意識を取り戻した俺は、そこまでしてもらう必要はないと黒瀬を止める。
「自分で……」
「いいから」
く、食い気味で言われてしまった……。
怪我をしているわけでも無いので、どうしてここまでしてくれるのか理由が見つからない。実は黒瀬ってば世話焼き気質なのか? そうだとしたら一匹狼みたいな風貌してるくせに面白いな。
そんなことを考えながら笑ってしまうが、こちらを見た黒瀬の目が、驚くくらいに熱く、ぎらぎらと輝いていて身が竦んだ。身体に纏わりついていたシャツが、床へと落ちる。そのまま黒瀬はエプロンへも手を伸ばし腰の結び目を解いていく。
――パサリ。
これで俺が今身につけているのは、時間が経ち少しだけ湿ったスラックスと、肩から羽織っているタオルだけになった。
「寒いか」
「へい、き……」
あれ、そういえば俺、この間黒瀬に貞操の危機を感じたんじゃ……
「お前はどこもかしこも綺麗なんだな」
黒瀬の目がタオルから覗く俺の上半身を、隅から隅まで舐めるように見回しているのを感じる。強い視線に肌はチリチリと痛いようだし、触られているわけではないけれど、何故かそれ以上にイヤラシイコトをしているような、変な気分になってくる。
「そん、なに……見ないで……」
動いた瞬間捕食されそうで、身動きが取れない。
絞り出すように声を出すと、微かにごくりと音が聞こえた気がした。
「なぁ、キスしていいか?」
「え! 今? なんで急に……」
「したくなった」
「い、いいけど……んッ」
そう言った途端、噛み付くようにキスをされた。
――ちゅう…。
ぢゅッ、ぢゅる……チュッ……ちゅく
突拍子もない確認だったが、このところ黒瀬とのキスを毎日のようにしている俺は既に感覚が麻痺していた。最低でも一日一回、多い時には唇が腫れてしまうのではないかと思うほどに何度も吸われる。そんな日々を繰り返す内に、日に日に黒瀬のキスは深く長く、場所を選ばなくなってきた気がする。
「ん……ふぅッ、……」
「……はぁ、乙成……可愛い……」
「ぅるさ、ンン~~ッ」
可愛いって言うなと文句を言いたいのに、黒瀬が唇を話してくれない。こうなったが最後、後はこいつが満足するまで延々と続けられる口付けを甘受するしかないのだ。
いや、もちろん拒めば止まってくれるはずだ。
拒む隙を与えてくれないけど。
しかしそうであったとして、無理やりにでも口を離して止めようとしないということは、俺も俺でそれなりにこの状況を楽しんでしまっているのかもしれない。
(だって、黒瀬くんのキス、気持ちいいんだ……)
気持ちよさと、酸素不足とで、だんだんとぼんやりとしてくる頭に浮かぶのは、ただ与えられるこの行為が気持ちがいいものだということだけだった。
14
お気に入りに追加
1,347
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。
丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。
イケメン青年×オッサン。
リクエストをくださった棗様に捧げます!
【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる