乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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5月

慣れって恐ろしい ※黒瀬

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 びっしょりと濡れたシャツは水分を含み、所々肌色が透けている。そして肌色の他に一点だけ。乳首のところだけうすーい桃色が透けているのだ。

(ふ、普段乳首なんて気にしないから忘れてたけど、なんかこれエロくないか……?!)

 衝撃の事態に固まっていると、先に動き出したのは黒瀬だった。

「風邪を引くとまずいからな、着替えるぞ」

 そう言って固まる俺のシャツに手を掛けて外し始める。まるで介護されるかの状況に意識を取り戻した俺は、そこまでしてもらう必要はないと黒瀬を止める。

「自分で……」
「いいから」

 く、食い気味で言われてしまった……。
 怪我をしているわけでも無いので、どうしてここまでしてくれるのか理由が見つからない。実は黒瀬ってば世話焼き気質なのか? そうだとしたら一匹狼みたいな風貌してるくせに面白いな。
 そんなことを考えながら笑ってしまうが、こちらを見た黒瀬の目が、驚くくらいに熱く、ぎらぎらと輝いていて身が竦んだ。身体に纏わりついていたシャツが、床へと落ちる。そのまま黒瀬はエプロンへも手を伸ばし腰の結び目を解いていく。

 ――パサリ。

 これで俺が今身につけているのは、時間が経ち少しだけ湿ったスラックスと、肩から羽織っているタオルだけになった。

「寒いか」
「へい、き……」

 あれ、そういえば俺、この間黒瀬に貞操の危機を感じたんじゃ……

「お前はどこもかしこも綺麗なんだな」

 黒瀬の目がタオルから覗く俺の上半身を、隅から隅まで舐めるように見回しているのを感じる。強い視線に肌はチリチリと痛いようだし、触られているわけではないけれど、何故かそれ以上にイヤラシイコトをしているような、変な気分になってくる。

「そん、なに……見ないで……」

 動いた瞬間捕食されそうで、身動きが取れない。
 絞り出すように声を出すと、微かにごくりと音が聞こえた気がした。

「なぁ、キスしていいか?」
「え! 今? なんで急に……」
「したくなった」
「い、いいけど……んッ」

 そう言った途端、噛み付くようにキスをされた。

 ――ちゅう…。

 ぢゅッ、ぢゅる……チュッ……ちゅく

 突拍子もない確認だったが、このところ黒瀬とのキスを毎日のようにしている俺は既に感覚が麻痺していた。最低でも一日一回、多い時には唇が腫れてしまうのではないかと思うほどに何度も吸われる。そんな日々を繰り返す内に、日に日に黒瀬のキスは深く長く、場所を選ばなくなってきた気がする。

「ん……ふぅッ、……」
「……はぁ、乙成……可愛い……」
「ぅるさ、ンン~~ッ」

 可愛いって言うなと文句を言いたいのに、黒瀬が唇を話してくれない。こうなったが最後、後はこいつが満足するまで延々と続けられる口付けを甘受するしかないのだ。

 いや、もちろん拒めば止まってくれるはずだ。
 拒む隙を与えてくれないけど。

 しかしそうであったとして、無理やりにでも口を離して止めようとしないということは、俺も俺でそれなりにこの状況を楽しんでしまっているのかもしれない。

(だって、黒瀬くんのキス、気持ちいいんだ……)

 気持ちよさと、酸素不足とで、だんだんとぼんやりとしてくる頭に浮かぶのは、ただ与えられるこの行為が気持ちがいいものだということだけだった。




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