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4月
多分これで正解…のはず
しおりを挟む「何も言わずにしたのが、嫌だったのか?」
「え?! それは、そうだよ」
「じゃあ許可を取ればしてもいいのか?」
「いやっ、そういう訳じゃ……」
「そんな風に聞こえたが?」
先ほどまでの意気消沈とした姿は何だったのか。急に生き生きとしすぎだろう。畳みかけるように質問をしながら、真顔で迫って来られるのマジで怖いんですが!
一言一言発するごとに一歩ずつ近づいてくる黒瀬に、こちらも近づかれた分だけ後ろへと下がっていく。
「じゃあ、キス自体はどうだったんだ? 気持ち悪かったか?」
「えぇっ? き、気持ち悪くは…なかった、けど……」
(むしろ、気持ち良くて困ったというか……!)
もし『気持ちよかったか?』と聞かれたとしたら反射的に否定してしまったと思うが、『気持ち悪かったか?』と聞かれると何故だか同意が出来なかった。
思わず出てしまった本音に、黒瀬の表情が少し柔らかくなる。
「そしたらこれからは、乙成の許可を取らずに触るようなことは絶対にしない。だからもう一度、俺の事を信頼してくれないか? 側に行かせてくれないか?」
切々とこいねがう黒瀬の真剣さに、許可制ならいいのでは? と気持ちがぐらつく。
「わ、わかった。絶対、約束だよ……?
「ああ。絶対だ」
俺の許しが出た途端、安心した様に笑顔を浮かべた。
(この顔を見ると、しょうがないかって思ってしまう僕は甘いのかな……)
どうも俺は黒瀬の笑顔に弱いようだった。新しく気付いた自分のおかしな性癖に内心溜息をついていると、晴れやかな笑顔を浮かべた黒瀬が爆弾を落としてくる。
「ところで。今日もキスしたいんだが、いいか?」
「へぁ?! だめだよ!」
なんだ?! そのとんでも質問は!
思わず変な声が出てしまったじゃないか。
「どうしてだ? キスは気持ち良かったんだろ」
(そ、そう言われるとそうなんだけど!)
先ほどしっかり否定をしなかった自分自身を往復ビンタしたい気分になる。
「キスすると、へ、変な気分になっちゃうから……!」
これで、分かってくれ……!
男ならその辛さ分かるだろう? 同性とのキスで兆してしまう情けなさを……!!
「っ、それは男なんだから仕方ないことだ。別に何も悪くないし、ならない方がおかしい」
思わぬ方向のフォローに目を瞠る。確かに、そう言われてみればそうなのだろうか。俺自身がおかしいのではないという言葉に、心の何処かに刺さっていた刺を抜いてもらったような気がした。
「気持ちいいことは嫌いじゃないだろ? 誰だってそうだ。俺はお前が許可しない限りすることはないんだから、都合よく使ってくれればいい」
そんな都合のいい男でいいのか? と心配になるような提案だったが、黒瀬の顔は真剣だった。
昨日のことで分かったが、俺の身体は相当溜まっているらしい。たかだか数回のキス(かなりネチっこい)とちょっとした行為(エロく揉みしだかれた尻)に、異常なくらい性感を高められてしまう程度には。
(たまに発散することで収まったりするのかな?)
黒瀬のキスは気持ちよかったし、それに慣れることで未来の彼女との予行練習になるのではないかと思ったら、気持ちがかなり揺れてきた。
しかも、目の前の男は俺の許可を必ず取ると約束をした。俺の意思なく、身勝手に蹂躙されるのとは違うのだ。メリットは大きいかもしれない。
そう思ったが最後、俺は小さくコクリと頷いていた。
「で? 今日はどうする?」
早速のお伺いに思案する。
「深く、吸うのはしないで……少しだけならいいよ……」
俺の答えに黒瀬が口元を緩め、ふ、と吐息で笑う。
「了解」
そうして俺と黒瀬の間には変なルールが出来上がったのだった。
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