乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

文字の大きさ
上 下
48 / 162
4月

墓まで持っていきたい秘密です

しおりを挟む


 ―――昼休み。

 俺の目の前にはぶすくれた赤髪のイケメンが約一名。
 いつもの如く俺の前の席を陣取った浅黄は、背もたれを抱えながら文句を垂れる。

「ねぇ~優ちゃん? 何があったのかそろそろ教えて欲しいんだけど?」


 そう。何を隠そう俺は今、絶体絶命なのである。


「俺的には黒瀬のヤローを避けるってのは大賛成なんだけど、その理由が気になるんだよなぁ? 理由次第じゃ対処の方法も変わってくるしぃ~」

 登校をしてからというもの、時間を見つけては俺を探しにくる黒瀬から全力で逃げていた。授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に教室から飛び出したり、逆に授業が始まるギリギリまで校内を歩き回ってみたり、昼食ですらいつもは食堂に行くのに、浅黄を連れて別の場所を探して彷徨った。
 何から逃げるため、と明確に伝えてはいないものの、そこまでしていれば流石に浅黄も気付くのだろう。訝しげに理由を聞いてくる今の状況に至るという訳だ。

 しかし、俺にもプライドがある。
 『昨日の夜黒瀬にファーストキス奪われて腰砕けになった結果、一人でオナっちゃったんだよね~☆ しかもその結果寝坊して遅刻しそうになるし、もう散々ッ! だから黒瀬とはしばらく口きいてやらないんだからぁ!』なんて事は、死んでも言えない。絶対にだ。

「……お願い。今は何も聞かないで?」
「うーーん、とりあえずってこようかな?」
「何でそうなるのぉ……」

 悪化の一途を辿るしかない状況に、思わず顔を伏せる。
 ていうか、全ての元凶たる黒瀬は一体何なんだ。あんなことがあったのに、どのツラ下げて俺に会いに来てるんだ? 何もなかったようにされるのもムカつくかもしれないが、実際会ったところで何を話そうと言うんだ。昨日のことを蒸し返されたら反応に困る。

「……浅黄くんは僕のこと、信じられない? 僕は君と同じ気持ちだと思っているんだけどな……」
「っ、優ちゃん…………」

 そう。俺は女好きだという点において、誰にも引けを取らないくらい強い気持ちを持っていると自負しているんだ。浅黄にも負けないくらいな。だから昨日のアレはただの事故! 忘れてしまいたい!
 そんな強い気持ちを込めながらも半泣きのまま浅黄を見詰めると、俺の迫力に少したじろいだ気がする。俺サマの強い意志に恐れ慄いたか?!

「……はぁ。分かったよ、今はその言葉に免じて深く突っ込まないし、満足いくまで付き合ってあげる。俺としてはこのまま一生黒瀬を避けてても何も問題ないわけだしね」
「……本当ならそうしたいんだけど、僕、黒瀬くんの叔父さんのお店でバイト始めたんだよね。だから一生っていうのは無理かも」
「はぁ?! なにそれ! 聞いてないよ!」

 …………。
 あ、これはまた別のスイッチを押してしまったようだ。
 せっかく落ち着きかけていたのに、すっかりお説教モードに入ってしまった浅黄に、慌ててバイトに至るまでの経緯を説明する俺。

 おい隣にいる女神たちよ。
 そのニヤニヤ笑いをすぐにやめなさい。

 お願いだから、やめろください!!!



しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

弟の可愛さに気づくまで

Sara
BL
弟に夜這いされて戸惑いながらも何だかんだ受け入れていくお兄ちゃん❤︎が描きたくて…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

パパの雄っぱいが大好き過ぎて23歳息子は未だに乳離れできません!父だけに!

ミクリ21
BL
乳と父をかけてます。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

処理中です...