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4月
墓まで持っていきたい秘密です
しおりを挟む―――昼休み。
俺の目の前にはぶすくれた赤髪のイケメンが約一名。
いつもの如く俺の前の席を陣取った浅黄は、背もたれを抱えながら文句を垂れる。
「ねぇ~優ちゃん? 何があったのかそろそろ教えて欲しいんだけど?」
そう。何を隠そう俺は今、絶体絶命なのである。
「俺的には黒瀬のヤローを避けるってのは大賛成なんだけど、その理由が気になるんだよなぁ? 理由次第じゃ対処の方法も変わってくるしぃ~」
登校をしてからというもの、時間を見つけては俺を探しにくる黒瀬から全力で逃げていた。授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に教室から飛び出したり、逆に授業が始まるギリギリまで校内を歩き回ってみたり、昼食ですらいつもは食堂に行くのに、浅黄を連れて別の場所を探して彷徨った。
何から逃げるため、と明確に伝えてはいないものの、そこまでしていれば流石に浅黄も気付くのだろう。訝しげに理由を聞いてくる今の状況に至るという訳だ。
しかし、俺にもプライドがある。
『昨日の夜黒瀬にファーストキス奪われて腰砕けになった結果、一人でオナっちゃったんだよね~☆ しかもその結果寝坊して遅刻しそうになるし、もう散々ッ! だから黒瀬とはしばらく口きいてやらないんだからぁ!』なんて事は、死んでも言えない。絶対にだ。
「……お願い。今は何も聞かないで?」
「うーーん、とりあえず殺ってこようかな?」
「何でそうなるのぉ……」
悪化の一途を辿るしかない状況に、思わず顔を伏せる。
ていうか、全ての元凶たる黒瀬は一体何なんだ。あんなことがあったのに、どのツラ下げて俺に会いに来てるんだ? 何もなかったようにされるのもムカつくかもしれないが、実際会ったところで何を話そうと言うんだ。昨日のことを蒸し返されたら反応に困る。
「……浅黄くんは僕のこと、信じられない? 僕は君と同じ気持ちだと思っているんだけどな……」
「っ、優ちゃん…………」
そう。俺は女好きだという点において、誰にも引けを取らないくらい強い気持ちを持っていると自負しているんだ。浅黄にも負けないくらいな。だから昨日のアレはただの事故! 忘れてしまいたい!
そんな強い気持ちを込めながらも半泣きのまま浅黄を見詰めると、俺の迫力に少したじろいだ気がする。俺サマの強い意志に恐れ慄いたか?!
「……はぁ。分かったよ、今はその言葉に免じて深く突っ込まないし、満足いくまで付き合ってあげる。俺としてはこのまま一生黒瀬を避けてても何も問題ないわけだしね」
「……本当ならそうしたいんだけど、僕、黒瀬くんの叔父さんのお店でバイト始めたんだよね。だから一生っていうのは無理かも」
「はぁ?! なにそれ! 聞いてないよ!」
…………。
あ、これはまた別のスイッチを押してしまったようだ。
せっかく落ち着きかけていたのに、すっかりお説教モードに入ってしまった浅黄に、慌ててバイトに至るまでの経緯を説明する俺。
おい隣にいる女神たちよ。
そのニヤニヤ笑いをすぐにやめなさい。
お願いだから、やめろください!!!
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