乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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4月

この世界ではじめての ※一人で

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「た、ただいま……」

 ふらつく身体を叱咤して、玄関の鍵とドアを開ける。

 思った以上に声が震えてしまったが、不審がられないだろうか。顔が火照っているのは自覚しているし、今はどうしても他の人と顔を合わせたくない。窮屈な下半身をなんとかしたくて、母さんに見つかる前にと足早に風呂場へ直行する。

「優太? おかえり~ご飯は?」
「っまかない、食べてきた! 汗すごいからお風呂入るね……っ」

 リビングから顔を覗かせた母さんの声が背後から聞こえる。振り返ることもせずそう返事をすると、急いで洗面所のドアを閉めた。それならそうと連絡してよねぇ、と不義理な息子に対して文句を言いながら、リビングへと戻って行く音がする。

 すまん、母さん。今はそれどころじゃないんだ。
 俺のパンツが大惨事になる瀬戸際なんだ……!

(な、何だったんだ。あれは……)

 あの後。実は家の前でもまたキス、をされた。

 ご近所さんがいるかもしれないのに!
 母さんが出てくるかもしれないのに、家の門を通り抜けようとする俺を、引き留め唇を奪ったのだ。

「しかも、なんかえっちくお尻も触られたぁ……っ」

 ドアに寄りかかるようにして、ずるずるとその場にへたり込む。

 あの時、黒瀬の舌が口の中を暴れ回る最中、ふらつく俺の身体を支えるフリしてどさくさに紛れて尻を揉みしだかれた。普段のクール然とした姿からは想像もできないくらい、何というか即物的な行動だった。

 これが女神の言ってた貞操の危機?

 常日頃から冗談ばかりで、開けっ広げな浅黄は置いておいても、黒瀬はそんな様子見せていなかったじゃないか。一体なにが黒瀬の琴線に触れたのか、スイッチが分からない……

(しかも僕、男の人にキスされて勃っちゃった……)

 今では動くたびに微かな水音すらする、この膨らみに気付かれはしなかっただろうか。震える手で、そろりと自身へ触れると、予想外に大きな刺激を感じて身体が大きく跳ねた。

「……ンっ………」

 この身体になってから、その、オナニーってしてなかったもんな……。

 性欲なんて無縁です。というような姿形をしている乙成くんではあるが、ごく普通の男子高校生なのだ。しかも中身は「彼女が欲しい!」「セックスがしたい!」と常々願っていた俺なのである。

 もしかしたら知らず知らずに、性欲が溜まってたのかな。それなら男に触られたとしても思わず気持ち良さを優先して感じ取ってしまってもしょうがないのかもしれない。
 そうやって自分に言い訳をしながら、刺激をしないように極力ゆっくりと服を脱ぎ浴室へと移動する。

(ちょっとだけ。すっきりさせるためだけだから……)

 目に入る手足の細さや白さに、どうしても自分の身体だと実感が持てずにいる俺は、どこか違う誰かの秘め事を覗き見ているような気分になってしまう。音が外に漏れないよう、シャワーを出して。既にこれから訪れるだろう快感に期待して、しとどに濡れそぼったペニスを優しく握りしめた。

「っ……は、ぁ………」

 一度触れてしまえば快楽を追いながら動く手は止められるわけもなく、ぐちゅり、とシャワーから流れ出る音とは違う卑猥な響きが耳に残る。

(ん……気持ちぃ…………――)

 ……くちゃ……ぐちゅん。くちゅっ……

 どんどんと理性というものが何処かへ去っていき、ただただ自分が気持ちいいところだけを無心に追いかける。

(お腹の奥が、むずむずする……っ)

 つい先ほどまで、黒瀬に貪られていた唇が熱かった。
 震える手で薄く開いた口元に触れると、握りしめたペニスがぴくりと震える。更には揉みしだかれた尻の感覚まで蘇ってくるようで、手を動かしながらも無意識に足を擦り合わせて今までにない快感からどうにかして逃げようともがくのだった。


 ――ガチャッ


 その時、唐突に洗面所のドアが開く音がした。

「優太、ママ二階に上がるからね~? 長湯してのぼせないように気をつけなさいよ」
「……ぅぁっ…… は、はい!!!!」

 いきなりの母さんの登場に驚き、変な声を出してしまった。

(しかも……ちょっとイッちゃった……)

 一気に現実へと引き戻され、ぼんやりと前を向く。
 そこには鏡に映る半ば脱力した自分がいて、上気した頬とわずかな白濁に濡れた下肢が投げ出され、なんというか、すごく、えろい……。

 ひくり……とペニスが揺れる。

「うう、すごい罪悪感……」

 ザーザーと流れ出るシャワーの音を聴き、興奮に麻痺した頭が少しずつ冷静になってくると、次にやってくるのは何とも言い難い罪悪感と羞恥心だ。

 慌てて、水とは違うもので濡れた身をシャワーで清めるも、その水流にすら快楽を拾ってしまう。
 その後は不必要に自身の身体へ触れることのないよう細心の注意を払いながら、ただ昂る心と身体が鎮るのをじっと湯船に浸かって待つ。

 ようやく少し落ち着きを取り戻し部屋に戻ってからも、身の内で燻る熱はなかなか引くことがなく、眠りにつけたのは明け方近くなってからなのだった。



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