乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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4月

幼女に振り回される俺。

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 それからしばらく、花瑛ちゃんと一緒に砂場や遊具など様々なもので遊び回った。
 しかし幼児の体力を完全に甘く見ていた俺は、既にヘロヘロである。浅黄はというと、少し離れたベンチに座ってニヤニヤとしながら俺達の姿を眺めているだけだった。

 花瑛ちゃんが「つぎはたからさがしよ!」と公園の中に何か宝物がないかと探し物に夢中になった隙に少し休憩、と浅黄の隣に腰をかけた。

「はぁ。俺の妹と友達が天使すぎて辛い……ここはこの世の天国かな?」
「もう! なに言ってるの。浅黄くんも手伝ってよぉ」

 可愛い可愛い少女との戯れは楽しくないと言ったら嘘になるが、一人で受け止めるのには無理があったようだ。
 花ちゃんの体力を舐めちゃだめだよ~と笑う浅黄を恨みがましく見ていると、花瑛ちゃんが手に何かを持って駆け寄ってきた。

「ゆうちゃん、あのねこれあげる~」
「ありがとう、可愛いお花だね」

 あそこに咲いてたの! と見せてくれたのはシロツメグサのようだった。よく花冠を作ったりするあれね。

「これをね~、こうやってクルってすると、ほら! ゆびわになるのよ」
「わーすごいねぇ、嬉しいよ」

 小さな手で一生懸命ねじったり回したりしながら、器用に俺の指へ結びつけてくれる。

 すごいなぁ。
 素直に感心して眺めていると、満足顔の花瑛ちゃんは次に浅黄の元へ向かう。

「いちにぃにもしてあげるー」
「お。嬉しいなぁ」

「はい! ね、これでおそろいよ!」

「「…………」」

 こ、これは……
 花瑛ちゃんが綺麗に作ってくれたシロツメグサの指輪は、奇しくも俺たち二人の左手の薬指に結びつけられているのだった。

「……なんだか結婚指輪みたいだね?」
「言わないで……」

 今すぐ外してしまいたいけど、花瑛ちゃんの嬉しそうな笑顔を見ていると外すに外せない。なんとも言えない表情をする俺を見て、花瑛ちゃんが心配そうな顔をする。

「ゆうちゃんおはないやだった?」
「えっ、そんな事ないよ! 大事にするね」
「えへへ。はなね、ゆうちゃんがいちにぃのおよめさんになってくれたらうれしいなぁ」
「は、花瑛ちゃん?!」

 とんだ伏兵からの爆弾発言である。
 やめて! フラグ立っちゃうから!
 俺のお尻のピンチだから!!

「さすが花ちゃんは良い子だなぁ♡ 兄ちゃんもそう思ってるんだけどね~」
「もう、浅黄くん! 花瑛ちゃん、えっとね僕は男の子だからお兄ちゃんのお嫁さんにはなれないんだ。ごめんね?」

 ここは曖昧にしてはいけない。
 しっかりと現実というものを教えてあげなければ。腑抜けた顔した浅黄にキツイ眼差しを向けるのも忘れない。

「え~でも、ゆりこせんせいは、いまはいろんなすきがゆるされるから、おとこのひとどうしでも、あいしあっていいんだよっていってたよ?」

 ゆりこ先生、幼児になに教えてるの!

 違うの? と首を傾げる花瑛ちゃん。
 た、確かにこれを違うと言ってしまうと、問題があるような気もするのだが、このまま否定をしないとそれはそれで大問題なのだ。

 俺は一体どうするのが正解なんだ? な、泣きそうなんですが……

「うう~違くない……違くないんだけど……」
「あはは、花ちゃんごめんね? まだ兄ちゃんの好きが優ちゃんにたくさん伝わってなかったみたい」
「そうなの? だめよ、いちにぃ。すきはたくさんいわなきゃいけないの!」
「そうだね♡ 花ちゃん大好きー!」

 唐突に浅黄からのフォローが入る。
 上手く冗談めかして話を終わらせる姿を見て、やっぱり全てが茶番だったのか? と思い始めてきた。なんだか焦ってる俺が馬鹿みたいじゃん。急な蚊帳の外感に、なんだか無性に悔しくなってきたぞ。くそーこうなったら俺も、もっと気楽に言ってやろうじゃないか。

「僕も、花瑛ちゃんも、……壱成も、大好きだよ」
「っ……」
「はなもー! はなもゆうちゃんだいすきよ♡」

 花瑛ちゃんだって浅黄なんだから、名前で言わないと区別付かないよな? 初めて壱成なんて呼んだけど、何だか少し照れくさい。浅黄の顔もなんとなく赤いような気もするが、夕陽のせいかもしれないな。

「……花ちゃん良かったね?」
「うん! なんかね、おなかすいちゃったー!」
「あは、そしたら帰ろうか! 優ちゃんも帰ろ? 今日は花ちゃんとたくさん遊んでくれてありがとね」
「ううん。僕も楽しんだから」

 可愛い女の子とのスチル回収とは、もしかしなくても花瑛ちゃんのことなんだろう。騙されたことは悔しいが、沈んだ気持ちはいくらか回復した気するので良かったのだろう。

(明日から今まで以上に気を付ければ、きっと何とかなるよね?)

 俺は持ち前のプラス思考を発揮して、浅黄兄妹とともに帰路につくのだった。



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