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4月
いざ!スチル回収へ!
しおりを挟む「えーと、郵便局前……。あっちかな?」
衝撃的な女神三人との会合を終え、俺は今とある公園に来ている。味方のいない辛い現実に打ちのめされて、ふらふらと家に帰ろうとする俺に向かって、慈悲深い微笑みを浮かべた女神たちがある言葉をかけてきたからだ。
『駅の方近くの郵便局前にある公園に行くとイイコトあるかもしれませんよぉ』
『可愛い女の子とのスチル回収……』
『行くか、行かないかは優太次第だけどな』
正直、罠かもしれないとも疑った。いや、ほぼ確実に罠だろう。ただ傷心の俺は、あの美しい少女たちがこんなに意気消沈とした俺相手に更に追い打ちをかけるような、そんな鬼のような存在であって欲しくないという、一縷の希望を胸にここへ来た。
「きっと、大丈夫……! あんな言い方して騙すようなこと、神様がするはずな……――」
「あー! 花瑛! 花ちゃん、それやめてっ」
「えー? どぉーしてー?」
「危ない~危ないからっ」
こ、この声は……
公園の中に見えたのは、犬の散歩に来ている人と数組の家族連れ。その中で一段と目立っているのが、見慣れた赤髪のイケメンである。
あ ん の……くそ腐女神様たちめーーーー!!
完全にオーバーキル案件でした。
もう絶対に女神の甘言に騙されないぞと固く心に決め、声をかけるか悩んでいると先に浅黄の方がこちらに気付いてしまった。
「え、え?! 優ちゃん? なんでここに……」
「あ、浅黄くん、偶然だね……」
あははと愛想笑いを浮かべつつ近づくと、浅黄の足に隠れるように少女が居ることに気付く。
「えと、はじめまして?」
驚かせることのないよう、少し離れたところから目線を合わせるよう蹲み込んで挨拶をする。笑顔のまま、怖くないよ~人畜無害なオタクだよ~と少女の反応を待つと、浅黄のスラックスをきつく握りながらおずおずと顔を出してきた。
「おねぇちゃん、だぁれ? いちにぃのおともだち?」
「お姉ちゃんではないんだけど、そうだよ。お友達」
「まぁ、お友達以上になる予定だけどね♡」
浅黄のいつもの軽口が、今は死刑宣告のように感じるのは気のせいだろうか。ここはどうにかして牽制をしておきたいが、どう言うのが一番効果的か難しい。
「どうせ冗談でしょう? わかってるんだから」
そうだよな? と釘を刺すように言ってみると、浅黄は少し驚いたような顔をする。あれ、やっぱ本当に冗談だったのか? やたらムキになって変に思われたのだろうか。妹ちゃんは目をまん丸にしながら浅黄と俺の顔を見比べている。
「いちにぃ?」
「あ、ごめんね。花ちゃん、兄ちゃんのお友達にご挨拶は?」
「うん。はじめまして。あさぎはなえです。うさぎぐみです」
ぺこりとお辞儀をしながら挨拶をしてくれた花瑛ちゃん。小さいのにしっかりしているなぁ。しかしちゃんと挨拶が出来た花瑛ちゃんを見ている浅黄の顔が、尋常じゃないくらいにやけているんだが大丈夫だろうか。これ他人が見てはいけない顔じゃないか?
「花瑛ちゃん初めまして、僕は乙成優太です」
「ゆうちゃんね! ねぇ、いちにぃ、ゆうちゃんとあそんでいーい?」
「え? 俺はいいけど……」
ちらりと心配そうに俺を見る浅黄。
「僕も大丈夫だよ。よーし、そしたら何して遊ぶ?」
「んーとね、んーとね……おすなば!」
「いいよ。じゃあお砂場行こうか!」
「わーーい!」
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