39 / 162
4月
いざ!スチル回収へ!
しおりを挟む「えーと、郵便局前……。あっちかな?」
衝撃的な女神三人との会合を終え、俺は今とある公園に来ている。味方のいない辛い現実に打ちのめされて、ふらふらと家に帰ろうとする俺に向かって、慈悲深い微笑みを浮かべた女神たちがある言葉をかけてきたからだ。
『駅の方近くの郵便局前にある公園に行くとイイコトあるかもしれませんよぉ』
『可愛い女の子とのスチル回収……』
『行くか、行かないかは優太次第だけどな』
正直、罠かもしれないとも疑った。いや、ほぼ確実に罠だろう。ただ傷心の俺は、あの美しい少女たちがこんなに意気消沈とした俺相手に更に追い打ちをかけるような、そんな鬼のような存在であって欲しくないという、一縷の希望を胸にここへ来た。
「きっと、大丈夫……! あんな言い方して騙すようなこと、神様がするはずな……――」
「あー! 花瑛! 花ちゃん、それやめてっ」
「えー? どぉーしてー?」
「危ない~危ないからっ」
こ、この声は……
公園の中に見えたのは、犬の散歩に来ている人と数組の家族連れ。その中で一段と目立っているのが、見慣れた赤髪のイケメンである。
あ ん の……くそ腐女神様たちめーーーー!!
完全にオーバーキル案件でした。
もう絶対に女神の甘言に騙されないぞと固く心に決め、声をかけるか悩んでいると先に浅黄の方がこちらに気付いてしまった。
「え、え?! 優ちゃん? なんでここに……」
「あ、浅黄くん、偶然だね……」
あははと愛想笑いを浮かべつつ近づくと、浅黄の足に隠れるように少女が居ることに気付く。
「えと、はじめまして?」
驚かせることのないよう、少し離れたところから目線を合わせるよう蹲み込んで挨拶をする。笑顔のまま、怖くないよ~人畜無害なオタクだよ~と少女の反応を待つと、浅黄のスラックスをきつく握りながらおずおずと顔を出してきた。
「おねぇちゃん、だぁれ? いちにぃのおともだち?」
「お姉ちゃんではないんだけど、そうだよ。お友達」
「まぁ、お友達以上になる予定だけどね♡」
浅黄のいつもの軽口が、今は死刑宣告のように感じるのは気のせいだろうか。ここはどうにかして牽制をしておきたいが、どう言うのが一番効果的か難しい。
「どうせ冗談でしょう? わかってるんだから」
そうだよな? と釘を刺すように言ってみると、浅黄は少し驚いたような顔をする。あれ、やっぱ本当に冗談だったのか? やたらムキになって変に思われたのだろうか。妹ちゃんは目をまん丸にしながら浅黄と俺の顔を見比べている。
「いちにぃ?」
「あ、ごめんね。花ちゃん、兄ちゃんのお友達にご挨拶は?」
「うん。はじめまして。あさぎはなえです。うさぎぐみです」
ぺこりとお辞儀をしながら挨拶をしてくれた花瑛ちゃん。小さいのにしっかりしているなぁ。しかしちゃんと挨拶が出来た花瑛ちゃんを見ている浅黄の顔が、尋常じゃないくらいにやけているんだが大丈夫だろうか。これ他人が見てはいけない顔じゃないか?
「花瑛ちゃん初めまして、僕は乙成優太です」
「ゆうちゃんね! ねぇ、いちにぃ、ゆうちゃんとあそんでいーい?」
「え? 俺はいいけど……」
ちらりと心配そうに俺を見る浅黄。
「僕も大丈夫だよ。よーし、そしたら何して遊ぶ?」
「んーとね、んーとね……おすなば!」
「いいよ。じゃあお砂場行こうか!」
「わーーい!」
3
お気に入りに追加
1,347
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。


アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる