乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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4月

side 浅黄-3

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 ふざけた俺に仕返しをしようとでもしたんだろうか。慌てふためく姿に優ちゃんは笑っているのかもしれない。
 恐る恐るその表情を確かめようと動きを完全に止めたその人の方を見ると、顔を真っ赤にして目を泳がせる姿が視界に飛び込んできた。

「僕、こういうことする相手って今までいたことなかったから、その、初めてで……」


 は? なにそれ、どういうことだ?

 ちょっと待て。冷静になるんだ俺。

 優ちゃんの言う「こういうこと」ってなんだ?なんで彼はこんなに顔を赤らめて恥ずかしがっているんだ?
 次第に瞳まで潤んできたその姿を見て、俺は一つの結論を導き出した。

(まさか……まさかだけど、優ちゃんここでスケベなことしようとしてた……?)


 友達で相互オナニー、なんてどこかのBL漫画の中でもあるまいし……何より俺は男は対象外だ。優ちゃんは他の女の子が霞むくらいに美人だからちょっかいはかけていたけど、本気で好きになったわけではない! ……はず。

 あーーもう、泣きそうになってる優ちゃん可愛すぎるんだけど!
 っていうか、優ちゃんも優ちゃんだし! なんでいきなりスケベな方向に思考が行っちゃうかなぁ!? いくら何でもただの男友達と試着室に二人きりになって、えっちな雰囲気になるわけなくない!?

 …………は!

 そこで俺は再び気付いてしまった。優ちゃんにとっては、俺はただの男友達ではなかったのではないか、という事に。

 え、嘘。優ちゃんって俺のこと好きなの?
 半密室に二人きりになっただけで、えっちな想像しちゃう対象として俺を見てたってこと?


 ま じ か よ ……!


 もしそうだとしたら、俺は純情な気持ちを踏みにじってしまったのだろうか。自他ともに認めるプレイボーイの俺は、これまで可愛い女の子限定ではあったものの、自分に好意を持ってくれた相手を傷つけることが一番嫌いだ。

 まぁ、今まで全くと言っていいほど、優ちゃんからの好意なんて感じられなかったけどね。でも、もしかしたら優ちゃんが……って思いはじめたら、自分自身の気持ちすらわからなくなってきた。
 あの時黒瀬に感じた独占欲も何もかも、単純に「俺も優ちゃんが好き」ってことなんじゃないだろうか。微かに芽生えはじめた気がする、自分でもビックリの甘い甘い感情が信じられなくて、ほんの少し嘘を混ぜつつ相手の様子を伺う俺は卑怯だ。


「ううん。僕がちゃんと出来なかったから。でも別に嫌だったわけじゃないよ?」

 え。

「う、うん。上手に出来るかわからないけど。僕にやれそうなら、頑張ってみたいな」

 ええええええーー。

 なんなのその笑顔。嫌じゃなかったって何。ナニを頑張ろうとしてくれちゃってるの? 何なのこれ……俺の妄想かなって、話しながらもじもじすんのやめて! 可愛すぎて心臓持たないから!!
 目の前の可愛い生き物の姿を直視することができなくなって、思わずしゃがみ込んでしまう。

「そっか~。え~、マジか~」

(まさか……優ちゃんが……。信じられないけど、いま俺、嬉しいって思ってる……)

 これまで付き合ってきた数多の女の子。残念ながらその子たちには感じることのなかった、甘酸っぱい気持ちが、俺の胸いっぱいに広がっていることが答えなんだと思う。


 あーあ。気付いちゃったんなら、しょうがないよな。


「優ちゃんありがとう。こんな騙すような形じゃなくって、これからはもっと正攻法でいくことにするよ。次はこんな所じゃなくて、ちゃんとした場所で頑張って見せてね♡」

 これまでっていうか、厳密にいうと昨日までの様子も含めて考えると、正直優ちゃんが自分の気持ちを理解しているとは思えない。もしかしたら自覚したからこそ、今日の様子がおかしかったのかもしれないけど、ただ友人としての好きを勘違いしている可能性だってある。
 だからこそ、俺は本人が少しずつ気付いていく気持ちを邪魔しないように見守っていきたい。

「浅黄くんに見せるのはいいんだけど、他の人にはちょっと……恥ずかしいから……。れ、練習して、その、自信がつくまで待って欲しいな」
「練習」
「……だめ、かな……?」

 正直今のセリフと小首を傾げた可愛いポーズに涙目で、俺の決心は崩壊寸前です。

「ちゃんとツッコめるように、頑張るから」

 突っ込むって、ナニを?! どこに?!
 もう、話が飛躍しすぎなんですけど!!!!

「っ……全然だめじゃないよ! 正直言うと、むしろその練習見せてくれって感じだけど、優ちゃんの気持ちを優先する」

 そんな言葉を発せた自分を全力で褒めてあげたい。その後の伏せ目がちな照れた表情とか、安心して喜ぶ顔とか、兎にも角にも俺のハートをぶすぶす刺してくる小悪魔に翻弄されながら、楽しいお買い物は終わった。

 もちろん、強敵になりそうな黒瀬について釘を刺しておくのは忘れずに。
 あまりよく分かってなさそうだったけど、明確に言葉にして意識をさせるよりは今のまま気づかずにスルーし続けてくれる方がいいはずだ。

 あいつからは全力で引き離しつつ、こちらの距離は詰めていく。あとは……俺の理性がどこまで保つかっていうのが一番の問題かな。
 うーーーん、これから忙しくなりそうだ。



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