乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

文字の大きさ
上 下
37 / 162
4月

この世界の神様は腐ったやつしかいない

しおりを挟む


「いつでもいいから、放課後で乙成の予定が空いてる日を教えてくれ。一度店に来てもらって叔父に紹介させて欲しい」
「放課後ならいつでも大丈夫だけど……履歴書とかいらない?」

 こういう時ぼっちは便利だよな。予定がないからフットワーク軽く動ける。

「顔合わせはするけど面接じゃないからな。それに俺が選んだ相手にケチつけるような人でもないし。そこら辺は安心してくれ」

 そこまで言われると、逆にプレッシャーを感じる……。黒瀬は知らないだろうけど、元々引きこもり気質の俺でも、一応アルバイトの経験はある。とはいえ、やる内容はとことん吟味して、極力人と接することなく一気に稼げるものばかり選んでいた。接客業はほとんどした事がないから、あまり期待されても困るぞ! せいぜい深夜のコンビニバイトをした事があるくらいだ。

「なんだか急に心配になってきた……」
「乙成なら大丈夫だ。面接したとしても、即合格だと思うぞ。お前を見てあの人が喜ぶ姿しか想像できないからな」

 本当か? と疑いたくもなるが、そんな変な嘘をついたところで黒瀬になんの得もないし、多分本当に大丈夫なんだろう。喫茶店でのバイトだなんて、今まででは考えたこともなかったな。どうなるか予想もつかないが、これからは放課後も楽しくなりそうだ!


 ◇◇◇


 黒瀬と別れて教室に戻る道すがら、立ち話をするミユの後ろ姿を見つけた。

(ミユ、と……あれは……)

小白木こしらぎ先輩、ミユ」
「あらぁ、優くん~♡」

 思わず声をかけてしまったものの、それまで仲睦まじく会話を楽しんでいる風だったのに、俺の姿を見た瞬間、明らかに先輩の顔が曇った気がする……。ええ……?

「……乙成か」

 小白木先輩はミユの部活の先輩で、茶道部の部長。なんでもご実家は茶道裏千家の家元とかで、生粋の御曹司だと評判の生徒だ。
 普段の立ち振舞いからして、品の良さが溢れているのだからすごいよな。なんでも「すばる様を讃える会」というファンクラブが秘密裏に作られているとかいないとか。一度それって本当ですかと聞いた時には、思い切り顔を顰められたっけ。あれ、もしかしなくてもオレ嫌われてる?

「それじゃあ、神崎。頼んだぞ」
「はぁい。お任せください~」

「……ねぇミユ。僕なんか小白木先輩に嫌われるようなことしたかな?」

 俺を避けるように先輩が去った後、思わずミユに聞いてしまう。

「え~? そんなことないと思いますけど、うーん……先輩はツンデレ属性だから、仲良くなるのに少し時間がかかるんじゃないでしょうかぁ」
「ツンデレ……」

 あれがそうなのか。いつかデレてくれるのであれば良いのだが、やはり人に嫌われているって感じるのは辛いんだよなぁ。ただただ悲しくなり、デレる先輩っていうのが想像出来なくて、それ以上考えることをやめた。っていうか、男にデレられたところで困るだけだしな。

「そういえば、今日は一人ですかぁ? 浅黄くんは?」
「予定があるみたいで先に帰ったんだ。今日はっていうより、放課後はほとんど一人でいるよ」

「あらぁ? そうでしたっけ~、でもちょうどよかったですぅ♡ 実はご紹介したい人達がいるので、優くんのクラスにいきましょう~」

 はて。紹介したい人とはどういうことだろうか。しかも俺のクラスに行く? 気軽に話せる友達がいないとはいえ、一年間同じ教室で学んだ仲間なんだから流石に全員名前くらいは覚えているんだけどなぁ。
 不思議に思いながらも付いて行けば、俺のクラスで二人の女子に声をかけた。

「アイちゃん、サキさん~ ちょっと来てくれますかぁ?」

(まさか、女の子だと?!)

 ミユが俺に女の子を紹介してくれるだなんて、どういう風の吹き回しだ?と訝しんでいたが、更にやって来た二人に驚く。

神宮寺じんぐうじさんと御子神みこがみさんじゃないか!)

 なにを隠そう、神宮寺さんは俺の斜め後ろに座っている女の子で、今日具合が悪そうにしていたあの子だ。御子神さんは背中を撫でてた子ね。
 この二人とミユは、纏めて「二年の神3かみスリー」なんて言われてる仲良し美人三人組なんだよな。ま、まさかこのお二人とお近づきになれるなんて……席が近くても恐れ多くて、見ることすら叶わなかったっていうのに、ミユ様最高です!

「優くん。こちら、名前は知っていると思いますが、神宮寺アイちゃんと御子神サキさんですぅ。二人がミユと一緒にこの世界を作った神様の友人です~」

「…………」

 な、なるほどぉぉぉ。
 そういうことでしたか……完全なるぬか喜びですね。有難うございました。

「アイよ。改めてよろしく……」
「あー、やっとちゃんと話せる~! 優太、あんた最高だよっ引き続きそのまま頼むな!」
「うん? よ、よろしくね……?」

 手を出してきた二人とそれぞれ握手をする。
 わー女の子と握手しちゃった。手小さいなぁ、可愛いなぁ。

「ずっと話しかけたくて仕方なかったんだけどさー、アイがまだ駄目だって言うから」
「サキはすぐ態度に出るから……推しは陰から見守る物」
「そんなこと言ってさ、今日はアイだってヤバかったでしょ? 手震えてたじゃん~」
「あれは優太が悪い……」

 お、俺?! いきなり飛び火してきたんですが?!
 一体なんのことだからわからないけれど、ミユと同じ女神だというなら、確認しておかなければならないことがある。

「あの……二人もこの世界を作った神様ってことは、もしかしなくても、その腐女神なのかな……?」


「「もちろん」」


 いい笑顔でお返事ありがとうございます!
 "綺麗な薔薇には刺がある"じゃないけど、可愛い女の子はみんな腐ってるのかな……。なんとかしてくれ神様、と願ったところでこの世界の神様は目の前にいる美少女三人なのだからどうしようもない。


 …………はぁ(泣)




しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

パパの雄っぱいが大好き過ぎて23歳息子は未だに乳離れできません!父だけに!

ミクリ21
BL
乳と父をかけてます。

弟の可愛さに気づくまで

Sara
BL
弟に夜這いされて戸惑いながらも何だかんだ受け入れていくお兄ちゃん❤︎が描きたくて…

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

処理中です...