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4月
広がれ!友達の輪
しおりを挟む放課後になり、やたらテンションの高い浅黄と共に、教室を後にする。いや俺もめちゃくちゃ楽しみにしてたよ? だって夢にまでみたリア充イベントだもん。だけど浅黄がこんなにテンション上がるのが不思議なんだよなー。
HRが終わった瞬間俺の席まで駆け寄って来て、何度目になるか分からない確認をされる。「ほんとに行くんだよね?」って、どれだけ信じてないんだよ。せっかく服を買いに行くなら、浅黄にモテコーデを伝授してもらおう。
見るからに浮かれている浅黄がクラスメイトに「また明日なー♡」と声をかけている。俺も言ってもいいかな? また驚かせちゃうかな? 悩んでもたもたしていたら、浅黄に早くと急かされてしまった。
(……仕方ない。明日リベンジしよう)
一日に何度も無視されたら立ち直れないからな。今日はもうおしまい。
――そう思っていたんだけど。
「お、乙成くんも、また明日……っ」
「!」
まさかの浅黄のついでに、俺にも声をかけてくれたではありませんかっ!
わーー! うわーーー!!
女の子じゃないけどっ、男だけど全然いいよ! ありがとう、名も知らぬクラスメイトくん……!
「うんっ、またね!」
喜びすぎてだらしない顔になってないかな?
思わずグフフと含み笑いまで披露して、いつまでも歩き出そうとしない俺は、とうとう浅黄に引っ張られるようにして教室を出るのだった。
その瞬間、教室内から歓声のような叫びが響く。何があったのか気になったけど、浅黄に聞いたらなんかよく分からないけど、大丈夫って言われて終わった。
この調子なら、意外とクラスメイトとは仲良くなれるかもしれないな。浅黄をキーパーソンに話せる相手を増やしていこう。となると次は他のクラスの人……知り合いは多い方が、出会いの可能性が広がるからな。
(クラス替えがない分、積極的に関わりを作っていかないと。他のクラスの女の子と出会う機会が生まれないからね!)
ミユは隣のクラスなので、上手く繋いでもらえたら交友関係も広がるだろうが、理由をなんと説明するか……。
そんなことを考えながら、ふとミユのクラスの方を見ると、廊下に人だかりが出来ていた。
「? なんだろ」
「あぁ、なんか隣のクラスに転入生が来たらしいよ~。男みたいだし、俺は興味なしだけど」
男の子でも優ちゃんは特別だよ♡ と、浅黄が意味不明なことを言ってくるのを無視して、輪の中心にいる人物を覗き込む。何人もの女の子達(しかも可愛いどころが集まっている)が群がる天国のような状況にあるのに、まるで地獄にいるかのような顔をしている横顔には見覚えがあった。
「……あれ? 黒瀬、くん……?」
「乙成」
思わず声をかけてしまうと、眠そうな目を大きく開いてこちらを向いたのはやっぱり昨日神社で会った黒瀬くんだった。
やばっ! 思わず声に出てしまった。
ここであったが百年目……みたいな感じで、殴りかかられたりしないよね?! ってビクビクしてたんだけど。なんとびっくり。黒瀬くんってば、それまでの無愛想な表情が一変して、イケメンスマイルを繰り出した。
えーーっ、うそ。そんな顔もできるの? 周りの女の子たちが卒倒しそうなレベルで喜んでるじゃん。くそう、ここでも俺との違いが明らかに……早く俺も笑うだけで女子がときめくイケメンになりたいぜ。
「同じ学校だったんだな」
「ほ、ほんとだね。僕も驚いちゃった」
って待てよ。これってチャンスなんじゃないか?
なんだか黒瀬はとても友好的だし、黒瀬も転入してきたばかりで友達が少ないはず。黒瀬と仲良くなれば、必然的に隣のクラスこ友達が出来るわけで。なんて素晴らしいタイミングで転入して来てくれたんだ黒瀬様!
「黒瀬くん! これからよろしくね!」
信じられないくらい順調なんですけど。嬉しさのあまりニヤけてしまうが止められない……って黒瀬が俺の方を見て笑ってるような? そこまで変な顔してたかな。出会いが出会いなだけに、変なやつ認定されないよう、もっと気持ちを引き締めなければ。
いきなり表情が柔らかくなった黒瀬に、周りの女子は相変わらずきゃーきゃー言ってるし、これは浅黄に続く最高の釣り餌……もとい友人になるぞー。
「何なに~優ちゃん知り合い?」
お互いに何を話すわけでもないんだけど、なんとなく目を逸らせないでいると、浅黄が背中に寄りかかってきた。
重いし、ぎゅうぎゅうと抱きしめられて苦しい……ってこいつ、やっぱり鍛えてるんだな。背中に触れる腹筋が割れていた。
「そう! 偶然なんだけどね、昨日知り合ったんだ」
「ふーん、昨日ね……」
「…………」
そう言って黒瀬の隣に立つ浅黄。うわーーこうして並ぶとイケメンとイケメンの相乗効果やべー。
浅黄と黒瀬はタイプが真逆のイケメンなので、もしやこの二人と一緒にいれば、いろんなタイプの女の子が寄ってくるのでは……? 俺、天才かも。
「えっと黒瀬くん、この人は浅黄くんだよ。僕のクラスメイトなんだけど、知り合いがとっても多くて、困った時にはいつも助けてくれるんだ」
「なんだ。ただのクラスメイトか……」
「どぉ~も~。優ちゃんをいつも助けてる、クラスメイトの浅黄でーす♡」
うんうん!
お互い自己紹介していい感じ!
イケメンたちよ。そのまま是非、仲良くなってくれたまえ。
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