32 / 162
4月
友達は大事にしましょう
しおりを挟む面白い出会いは、俺の心を明るくしてくれた。前向きになった俺は一人の時間を有効活用して、少しずつ顔見知りが増えていく中で、どうやって交友関係を広げていこうかと頭を悩ませる。そんなことを考えていたらあっという間に時間は過ぎ、三限目が始まる頃になるといつもより少し眠そうな顔をしながら浅黄が登校してきた。
「ふぁ~~おはよぉ……。優ちゃん、会いたかったよ~♡」
「おはよう浅黄くん」
俺の前の席にある椅子をひっくり返して座ると、俺の机に突っ伏す。
ちなみに今は離席中だか、そこは他のクラスメイトが使っている席だ。休憩時間の間は大抵の場合どこかに行ってしまい、空席になることが多いのだけど。というかほとんどの場合で俺の周りには人がいない。本当に……一体……どうして……(泣)
「早朝撮影しんどい~。学校あるときはやっぱ断ろうかな、優ちゃんに会えないのも辛すぎる……」
寂しい現実に心の中で号泣していると、浅黄がそんなことをぽつりと漏らす。
浅黄よ……お前はなんで俺が欲しい時に欲しい言葉を言ってくれるんだ……俺に会えなくて辛いとか。俺を好いてくれるお前のことは絶対に裏切らない。大丈夫、俺らはズッ友だよ……。
「僕も浅黄くんがいないと寂しいな……」
なんてったってクラスに友達がお前しかいないんだからな。浅黄がいない間、マジでずっと独りぼっちなんだぜ、俺。
「っ、ほんとに!?」
「ほんと。でも、お仕事でしょ? 頑張らなきゃね」
辛いのには違いないが、友達の邪魔をしたくないのは本心だ。俺も頑張るから、お前もそのままモデルとしての地位を揺るぎないものにして、俺に可愛い女の子を紹介してくれよ?
そう考えると、俺はたしかに友達は少ないかもしれないが、その分こんなイケメンの友達がいるんだから。これ以上の贅沢は言うもんじゃないよな。他の人からは散々な嫌われっぷりだというのに、どうして浅黄からはここまで好かれているのかっていうのが、正直謎だけどな。
BLハーレムエンド回避の為なら、使えるもんは全部使わせてもらうぜ。
「ん~……仕事って言っても読者モデルだし。ただのバイトみたいなもんだけどね」
「十分すごいよ! それに何回も撮影に呼ばれるってことは、浅黄を見たい人がいるって事なんだから」
「まぁね……じゃあ優ちゃんは? 優ちゃん、見たい?」
「僕? うん、見たいよ。それにいつもすごく格好いいし!」
特に服がな。
正直俺は服のセンスが皆無なので、雑誌はいい教材にさせてもらっている。さらに浅黄は雑誌掲載前のものや、実際使われなかったものをこっそり見せてくれることもあるので有難い。この間見せてもらった未掲載の衣装も、めちゃくちゃハイセンスだったんだよなぁ。毎回「この組み合わせってこんな格好よく見えるんだぁ」って新たな発見がある。
とにかく俺は服装ばかり気になってしまうんだが、浅黄の場合は肉体美を見せつけるような裸に近い撮影を求められることも多いらしいので、服がどうこうというより浅黄自身が人気なんだろうな。同じ男として悔しいから、そこまでは言ってやらないけどさ。
「うわ~すげ、やる気出た! ねぇ優ちゃん、今度一緒に撮影行かない? 俺の格好いいところ、もっと見てほしいなぁ♡」
え、浅黄の格好いいところ? それは別に見なくてもいいんですけど……。何自慢ですか、それ。
しかしオタク気質の俺はがっつりミーハーなもんで、モデルの撮影現場は一度でいいから見てみたい。それに、よく浅黄がペアで写真を撮っている女性モデルさんが、めちゃくちゃ可愛くて理想のタイプなんだよなぁ。あわよくば会えないだろうか……。
「うーん、邪魔にならないなら、行ってみたいかな」
「ならない、ならない! むしろ調子上がる予感しかしないって。今度いい感じの時間の時、声かけるね~」
やったね! 持つべきものは出来る友人だ。
26
お気に入りに追加
1,347
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる