乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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4月

友達は大事にしましょう

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 面白い出会いは、俺の心を明るくしてくれた。前向きになった俺は一人の時間を有効活用して、少しずつ顔見知りが増えていく中で、どうやって交友関係を広げていこうかと頭を悩ませる。そんなことを考えていたらあっという間に時間は過ぎ、三限目が始まる頃になるといつもより少し眠そうな顔をしながら浅黄が登校してきた。

「ふぁ~~おはよぉ……。優ちゃん、会いたかったよ~♡」
「おはよう浅黄くん」

 俺の前の席にある椅子をひっくり返して座ると、俺の机に突っ伏す。
 ちなみに今は離席中だか、そこは他のクラスメイトが使っている席だ。休憩時間の間は大抵の場合どこかに行ってしまい、空席になることが多いのだけど。というかほとんどの場合で俺の周りには人がいない。本当に……一体……どうして……(泣)

「早朝撮影しんどい~。学校あるときはやっぱ断ろうかな、優ちゃんに会えないのも辛すぎる……」

 寂しい現実に心の中で号泣していると、浅黄がそんなことをぽつりと漏らす。
 
 浅黄よ……お前はなんで俺が欲しい時に欲しい言葉を言ってくれるんだ……俺に会えなくて辛いとか。俺を好いてくれるお前のことは絶対に裏切らない。大丈夫、俺らはズッ友だよ……。

「僕も浅黄くんがいないと寂しいな……」

 なんてったってクラスに友達がお前しかいないんだからな。浅黄がいない間、マジでずっと独りぼっちなんだぜ、俺。

「っ、ほんとに!?」
「ほんと。でも、お仕事でしょ? 頑張らなきゃね」

 辛いのには違いないが、友達の邪魔をしたくないのは本心だ。俺も頑張るから、お前もそのままモデルとしての地位を揺るぎないものにして、俺に可愛い女の子を紹介してくれよ?
 そう考えると、俺はたしかに友達は少ないかもしれないが、その分こんなイケメンの友達がいるんだから。これ以上の贅沢は言うもんじゃないよな。他の人からは散々な嫌われっぷりだというのに、どうして浅黄からはここまで好かれているのかっていうのが、正直謎だけどな。
 BLハーレムエンド回避の為なら、使えるもんは全部使わせてもらうぜ。

「ん~……仕事って言っても読者モデルだし。ただのバイトみたいなもんだけどね」
「十分すごいよ! それに何回も撮影に呼ばれるってことは、浅黄を見たい人がいるって事なんだから」
「まぁね……じゃあ優ちゃんは? 優ちゃん、見たい?」
「僕? うん、見たいよ。それにいつもすごく格好いいし!」

 特に服がな。
 正直俺は服のセンスが皆無なので、雑誌はいい教材にさせてもらっている。さらに浅黄は雑誌掲載前のものや、実際使われなかったものをこっそり見せてくれることもあるので有難い。この間見せてもらった未掲載の衣装も、めちゃくちゃハイセンスだったんだよなぁ。毎回「この組み合わせってこんな格好よく見えるんだぁ」って新たな発見がある。
 とにかく俺は服装ばかり気になってしまうんだが、浅黄の場合は肉体美を見せつけるような裸に近い撮影を求められることも多いらしいので、服がどうこうというより浅黄自身が人気なんだろうな。同じ男として悔しいから、そこまでは言ってやらないけどさ。

「うわ~すげ、やる気出た! ねぇ優ちゃん、今度一緒に撮影行かない? 俺の格好いいところ、もっと見てほしいなぁ♡」

 え、浅黄の格好いいところ? それは別に見なくてもいいんですけど……。何自慢ですか、それ。
 しかしオタク気質の俺はがっつりミーハーなもんで、モデルの撮影現場は一度でいいから見てみたい。それに、よく浅黄がペアで写真を撮っている女性モデルさんが、めちゃくちゃ可愛くて理想のタイプなんだよなぁ。あわよくば会えないだろうか……。

「うーん、邪魔にならないなら、行ってみたいかな」
「ならない、ならない! むしろ調子上がる予感しかしないって。今度いい感じの時間の時、声かけるね~」

 やったね! 持つべきものは出来る友人だ。



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