乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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プロローグ ~俺と女神と僕~

チュートリアル的ななにか

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 病院を出ると、すっきりと晴れた青空が見える。
 知らないお婆ちゃんの爆弾発言に心を抉られた俺は、遠い目をしながらミユに手を引かれていた。しかしなんだろう。初めて来た場所とは思えない。あっちに見える建物はよく通ったていたファストフード店ではないだろうか。あ、あのマンションも見たことあるぞ?

「さて、どこからお話しましょうかぁ」

 しばらく歩き、ようやくミユが繋いでいた手を離して振り返った。ふわりとスカートが広がり、微笑む姿はまさに女神様。うーん、やっぱり可愛いなぁ。

 は!
 違う違う……そうじゃなかった。でれっと緩んだ頬を引き締めなおして、俺はいくつかの疑問を解消するべく、質問を投げかける。

「えーっと、そもそも僕は誰なんだろう? 君と幼馴染っていうのも気になるし、どういう立ち位置なのかなって。それと、この世界についても知りたい。新しい世界っていう割には、建物とか景色も含めて、見たことがあるように感じるんだけど……」
「なるほどぉ。そしたら大きく質問は二つ、ですね」

 コクコクと頷き答えを待つ。

「まずはそうですね~この世界について先にお話ししましょうか♡ 新しい世界を作るにあたって、地形やらことわりやらをイチから作るのって、すごぉーい大変なことなんですよねぇ。ミユ達は別にファンタジーな世界を作りたいわけではありませんでしたので、これまで貴方が住んでいた世界をもとに、ここを創造することにしたんです~」
「な、なるほど……」

 もしイチから作ろうとするなら、人類がうん百万年で築いてきた歴史を一つひとつ考えないといけないんだもんな。それは途方もなさすぎる。

「だからこそ更に、あの世界に住んでいた貴方が適任だったという訳ですねぇ。ちなみにこの辺りはなるべく、商業施設やお家、学校などの場所はそのままで中身だけを変えています~。街並みも今まで住んでいた世界から大きく変わっていませんので、どこに何があるか分かりやすいと思いますよぉ」
「そっか、だから見たことのある景色ばかりなんだね」
「はい♡ そういうことですぅ。……まぁ、強いて違う点をあげるなら、周りにちょーっと顔面偏差値の高い人が多くなった、というところでしょうか~」

 先ほど鏡で見た俺自身や、ミユ、母さんの顔を思い返せば、それがかなりの高水準であることが予想できた。今日出会っただけでも三人が超美形って……と思いながらも、自分の好きな世界を作るのであれば、目の保養は大事だよな、と言葉を飲み込んだ。

「次に生まれ変わった貴方についてですが……名前は乙成優太おとなりゆうたさん。この春、高校二年生になる16歳の少年です~佐々木優太さんの一年後輩ですねぇ。私は優くんって呼んでいます♡」
「乙成、優太……」
「仰るとおり、私と優くんは0歳の時からお隣に住んでいる、とっても仲良しで大事な幼馴染なんですよぉ」

 噛み締めるように新しい自分の名前を口に出していると「ちなみに"オトナリ"っていうのは、主人公の隣の家に住んでいるキャラクターに、よく付けられる名前なんですよぉ」なんて言いながらキャッキャとしている。可愛いけど、正直それはどうでもいい。

「ゲームヒロインのお隣さんって、いわゆる好感度とかお得情報を教えてくれるような、サポートキャラってことなのかな……?」
「さすが理解が早いですねぇ~その通りです! 優くんは当初、ミユと攻略対象の面々の好感度管理をしてくれる存在でした~必然的に一番やりとりが多くなる相手でもあるので、萌え要素をてんこ盛りにさせていただいたお気に入りのキャラですぅ♡」

 本来モブ顔でもおかしくない乙成くんが、ものすごい美形なのはそういうことか……。

「ちなみに口調が変わるのも仕様なのかな。今もなんだけど頭で考えている言葉と、口にしている言葉が一致しないというか……今まで"僕"なんて使ったことなかったのに、違和感が凄くて。何か理由があるの?」
「ある意味、仕様と考えていただいて問題ないかと~。今回貴方は、乙成優太さんという、ヒロインミユの幼馴染みとして存在した人物に生まれ変わりましたぁ。新しい人間として構築することも出来たのですが、そうすると0歳から人生を始めるしかないんですよね~。正直育つまで待っていられないので、ミユ達が求める人物像に一番近い人と入れ替わっていただくことにしたんですぅ」
「そ、そんなことが出来るんだ……」

 呆然とする俺に、だって神様ですから、とミユは朗らかに笑った。



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