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4月
放課後に買い物とかリア充っぽくない?
しおりを挟む無言で見つめあっていたかと思うと、浅黄は思い出したように俺も仲間に入れてくれる。ガシッと肩に腕を回されて、引き寄せられるものだから、思わずしがみついちゃったじゃん。こいつ……やはりいい身体をしている……。
「わっ!」
「悪いけど、俺たちこれから放課後デートだから♡」
「……デート…………?」
うん、ごめん。意味わかんないよな。浅黄語録に慣れてきた俺でも、びっくりすることあるんだもん。
浅黄はとにかく軽い。風船のようにふわふわしているので、こうして言葉のチョイスもチャラいのだが、男同士のデートという言葉に違和感を感じたのだろう。黒瀬は眉間に皺を寄せていた。
「えっと、ちょっと寄り道して帰ろうかなって話してて。あっ、そうだ! よかったら黒瀬くんも……――んむっ!?」
浅黄の言葉を翻訳しつつ、俺ってばいいこと思いついちゃった。黒瀬も一緒に行けば、二人の仲はもっと親密になるだろうし、もしかすると逆ナンとかされちゃったりするのでは?!
そう思って誘いの言葉をかけようとしたところ、口を塞がれた俺は、抗議の視線で浅黄を仰ぎ見る。
へらっと笑顔を浮かべた浅黄は、口元に指を寄せている。
「はーい♡ それじゃあ優ちゃん帰ろっか~転校生くんはモテモテで忙しいみたいだから」
「えっ、あ、うん……っ」
な、なるほど! すっかり忘れていたけど、周りには黒瀬と話したい女の子達がたくさんいるんだよな。たしかにそんな中から、黒瀬を連れて行けば、モテるどころか恨まれてしまうかもしれない。
せっかくのチャンス、逃すのは惜しいがここで女の子達の好感度を下げるのも良くないな。今日はとりあえず当初の目的通り、現役読者モデルにモテる服を教えてもらうことに専念しよう。
「……それじゃあ黒瀬くん、またねっ」
「あ、ああ。またな」
「サヨナラ~♡」
善は急げと浅黄とともに歩き始める。
意外と浅黄も楽しみにしてたのだろうか? ぐいぐいと背中を押されて気をつけないと転びそうだ。
――……その時。
僕の見えない背後にて浅黄と黒瀬の静かなる闘いが勃発しており、更にそれを見ていたミユが声にならない喜びに全身を震わせていることには気付いていなかったし、気付かなくて良かったと思う。
◇◇◇
浅黄と並んでショッピングモールを歩いていると、道行く人達の視線をめちゃくちゃ感じる気がする。イケメンってやっぱりすげぇな。前に「俺って意外と男性ファンもいるんだよー」なんて言われた時は、絶対嘘だろって思ったけど、今日それが事実だということを実感する。
女の子達のうっとりするような視線とともに、周りにいる男までもが振り返ったり、足を止めてこちらを見ているようだった。
ちなみにそんな有名人の隣にいる俺は、普段感じることのない他人の視線に晒されて、既にお疲れモードである。いや、晒されてるのは浅黄なんだけど、隣にいるからか俺まで視線を感じちゃうんだよな。思わず自分も人気者になったような気分になるが、勘違いしたら駄目だからな。そこら辺は隠キャの鑑として、しっかり弁えてるので安心して欲しい。
「優ちゃん、この店とかどうかな? 多分似合うの沢山あると思うよ~」
「わぁ、なんかすごいお洒落だね……僕に上手く着こなせる?」
今まで足を踏み入れたことのない、とりあえずアルファベットが並んだ名前のお店に入る。いつも、し○むらやユニ○ロばかりで服買ってた俺には敷居が高くてどうしても尻込みしてしまう雰囲気だ。
「全く問題なし! てか優ちゃんに着こなせない服とかないから!」
お世辞もあまりに大袈裟すぎると笑えてくるな。でも、そんな浅黄の優しさに励まされて、店内へ進んでみることにする。
浅黄が側で色々と説明をしてくれるからなのか、店員さんが近づいてくる様子はない。良かったー。俺、買い物の時にやたら話しかけてくる定員さん、ちょっと苦手なんだよな。
正直、遠巻きでこそこそと見られているのも気になるけど、読者モデル様がいるんだから仕方ないか。
浅黄は俺のところに大量の服を持ってきては翳し、恐らく俺に似合うのかどうかをチェックをしてから、そのうちの何着かを持って試着室へと案内してくれた。
服を受け取りさて試着……と部屋に入って扉を閉めようとすると、何故か浅黄が一緒になって入ってきた。
「浅黄くん……? なんで一緒に入ってくるの?」
思わず問いかけると、浅黄は驚いたような顔をする。
えっ、なに? 俺変なこと言った?
「友達同士で買い物に来てたら普通じゃない? 他に知らない人が一緒な訳じゃないし。結構みんな一緒になって入って、見たり触ったりしてるよ」
「えっ、そ、そういうものなんだ……」
なにそれ初耳なんですけど。やはりリア充には謎のしきたりがあるんだな……。
たしかに今から着る服で、どうやって着るんだ? ってよく分からないデザインの物もあるし、浅黄が側にいてくれるのは安心かもしれない。無理に着て、破ったりしたら弁償することになるしな。そういうことなら仕方ない。
「じゃあ、お願いしてもいいかな?」
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