乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

文字の大きさ
上 下
14 / 162
プロローグ ~俺と女神と僕~

腐女神ってなんですか……!?

しおりを挟む


「ただその場合ですと、これまでの優くんの存在全てが、佐々木優太さんあなたへ引き継がれることになりますぅ。そうですねぇ、人格がアップデートされたと考えてください~。その際、アップデート後の優くんがあまりに元々の性格から変わってしまっては、ご家族も含め周りの人が心配してしまいますよねぇ? なので、特に特徴が表れやすい口調の部分に関しては、元々の優くんが使っていたものへ自動変換されるように、こちらの方で設定させてもらいましたぁ♡」
「急にシステム感出してきたね……」
「ゲームが基本の世界観ですからね~。ちなみに記憶に関しても共有されるようにしていますので、乙成優太さんかれが知っていることは、佐々木優太さんあなたにも分かるようになっていますぅ」
「そうなんだ……」

 じゃあやっぱり、見覚えのなかったトイレで会ったあの男は、見ず知らずのやたらスキンシップの激しい男だった、ってことだな。

「それじゃあ最後にもう一つだけ、質問いいかな?」
「はい~なんでもどうぞぉ♡」
「えーっと、これからのことを教えて欲しい。僕がヒロインの幼馴染で、お助けキャラだっていうことは分かったんだけど、特に何も考えずに好きな子を作っていいってことかな」
「……と、いいますとぉ?」

 上手く言葉にできないが、いわゆるテンプレの展開に自分を当て嵌めて、不思議に思ったことをつらつらと話してみる。

「いや、お助けキャラなのにこんなに美形だから、もしかして攻略対象でもあったのかなとか思って。そうするともしかしたらヒロインのライバルキャラで、特定の女の子が相手に決まってたりするし」

 自由恋愛だと思っていたのに、実は固定キャラとの恋愛しか認めません! みたいなことが、後からわかるとショックが大きいからな。


「優くんっ」
「わわっ! なっ、なにっ?!」

 うーん、と頭を捻らせていると、突然ミユが俺の手を両手で握りしめてくる。
 ちょっとちょっと! いきなりやめてくれないかな?! 見た目は普通じゃないくらいの美少年でも、中身はただの一般モブ男子なんだから! 勘違いしちゃうでしょっ。


「実はミユね、腐女神ふじょしんなんですぅ♡」
「え?」


 ーー……フジョシン?
 ふじょしんとは、いったい何だ。初めて聞いたぞ。

BLボーイズラブが好きな女の子のことを、いわゆる腐女子と呼ぶのですが、ミユは神様なので"腐女神"なんですぅ」

 ふむふむ。なるほど、なんとも分かりやすい。
 腐女子と神様をくっ付けて腐女神ってことね……

 まぁ、ネットの友達にはそういう趣味を持った子も多かったし、男でも好きだという奴だっていたのだから、神様の趣味がそうだとしても、なんらおかしくはないだろう。

 だからなんだ? と首を傾げれば、ミユはくすくすと笑って口元をおさえている。

「あ、分かってないですね~? つまり、ミユは男の子と男の子の恋愛を見るのが好きなんですぅ。さてここで問題♡ ミユの観察対象はご存知のとおり優くんですが、その優くんの恋愛をするお相手に、ミユはどんな人を選ぶでしょうかぁ?」
「…………」

「…………(ニコニコ)」

「…………ま、まさか……男……?」

「うふ♡ 大正解で~す♡」

 ―――絶句。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 僕は……僕は、その、素敵なお相手に出会えますようにって」
「はい! 各種素敵なイケメンを、豊富に取り揃えておりますよ~」
「ゲームの世界みたいにいろんなタイプの子と仲良くなったり……」
「乙女ゲームですからねぇ。たくさん出会ってたくさん仲良くなってください~それが目的ですぅ」
「……ドキドキワクワクな……ハーレム生活を送って……めちゃくちゃ恋したい………」
「是非! お願いしたいです~! ミユ達にいろんな恋の行方を見せてください♡」
「…………」

 きゃはっ♡ と可愛い笑顔を見せている彼女を、誰か止めてはくれないだろうか。
 これは、性別を指定しなかった俺が悪いってことか……?

(いやいやいや、だって神様が腐女子とか、分かるわけないし!!)

「わ、わかった……って、全然納得出来ないけど! っていうか、それなら最初からBLゲームの世界を作ればよかったのでは?!」
「それはですね~前提として、作った当初はミユが主人公でありたかったから、というのが一番大きな理由ですが……」

 はじめは自分が恋愛したかったんだもんな。それは理解できるが、だからといってそれが違うと気付いたなら、システム改修することだって出来るだろ! と、いう気持ちを視線に込めて、ミユの言葉を待つ。

「この世界で過ごしているうちに、気になっちゃったんですよねぇ、お助けキャラのことが」
「つまり、僕のこと……?」
「優くんもご存じの通り、乙女ゲームをはじめとする恋愛シュミレーションゲームには、必ず一人はお助けキャラがいるじゃないですかぁ。あの人達って、一体どうやって好感度を調べているんでしょう~。個人情報なんてある程度仲良くなければ話さないと思いますし、恋愛トークなんてもっとハードルが上がりますよねぇ?」

 確かに。と、そう思ってしまった。

「お助けキャラの皆さんは、どんな手練手管で数多の男達から情報を収集するのでしょうか。そこには一体どんなドラマが待っているんでしょうか。特に優くんは私の萌え要素をふんだんに盛り込んだお気に入りのキャラですから。その行く末を是非見てみたいんですよね~♡」

 あとはただ単純に、愛情込めて作り上げた攻略対象達が織りなす、最高のBLが見たかったんですぅ。と、今まで見た中で一番の笑顔で言われた俺は、それ以上何も言い返すことが出来ないのだった。



しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

弟の可愛さに気づくまで

Sara
BL
弟に夜這いされて戸惑いながらも何だかんだ受け入れていくお兄ちゃん❤︎が描きたくて…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

パパの雄っぱいが大好き過ぎて23歳息子は未だに乳離れできません!父だけに!

ミクリ21
BL
乳と父をかけてます。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...