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プロローグ ~俺と女神と僕~
腐女神ってなんですか……!?
しおりを挟む「ただその場合ですと、これまでの優くんの存在全てが、佐々木優太さんへ引き継がれることになりますぅ。そうですねぇ、人格がアップデートされたと考えてください~。その際、アップデート後の優くんがあまりに元々の性格から変わってしまっては、ご家族も含め周りの人が心配してしまいますよねぇ? なので、特に特徴が表れやすい口調の部分に関しては、元々の優くんが使っていたものへ自動変換されるように、こちらの方で設定させてもらいましたぁ♡」
「急にシステム感出してきたね……」
「ゲームが基本の世界観ですからね~。ちなみに記憶に関しても共有されるようにしていますので、乙成優太さんが知っていることは、佐々木優太さんにも分かるようになっていますぅ」
「そうなんだ……」
じゃあやっぱり、見覚えのなかったトイレで会ったあの男は、見ず知らずのやたらスキンシップの激しい男だった、ってことだな。
「それじゃあ最後にもう一つだけ、質問いいかな?」
「はい~なんでもどうぞぉ♡」
「えーっと、これからのことを教えて欲しい。僕がヒロインの幼馴染で、お助けキャラだっていうことは分かったんだけど、特に何も考えずに好きな子を作っていいってことかな」
「……と、いいますとぉ?」
上手く言葉にできないが、いわゆるテンプレの展開に自分を当て嵌めて、不思議に思ったことをつらつらと話してみる。
「いや、お助けキャラなのにこんなに美形だから、もしかして攻略対象でもあったのかなとか思って。そうするともしかしたらヒロインのライバルキャラで、特定の女の子が相手に決まってたりするし」
自由恋愛だと思っていたのに、実は固定キャラとの恋愛しか認めません! みたいなことが、後からわかるとショックが大きいからな。
「優くんっ」
「わわっ! なっ、なにっ?!」
うーん、と頭を捻らせていると、突然ミユが俺の手を両手で握りしめてくる。
ちょっとちょっと! いきなりやめてくれないかな?! 見た目は普通じゃないくらいの美少年でも、中身はただの一般モブ男子なんだから! 勘違いしちゃうでしょっ。
「実はミユね、腐女神なんですぅ♡」
「え?」
ーー……フジョシン?
ふじょしんとは、いったい何だ。初めて聞いたぞ。
「BLが好きな女の子のことを、いわゆる腐女子と呼ぶのですが、ミユは神様なので"腐女神"なんですぅ」
ふむふむ。なるほど、なんとも分かりやすい。
腐女子と神様をくっ付けて腐女神ってことね……
まぁ、ネットの友達にはそういう趣味を持った子も多かったし、男でも好きだという奴だっていたのだから、神様の趣味がそうだとしても、なんらおかしくはないだろう。
だからなんだ? と首を傾げれば、ミユはくすくすと笑って口元をおさえている。
「あ、分かってないですね~? つまり、ミユは男の子と男の子の恋愛を見るのが好きなんですぅ。さてここで問題♡ ミユの観察対象はご存知のとおり優くんですが、その優くんの恋愛をするお相手に、ミユはどんな人を選ぶでしょうかぁ?」
「…………」
「…………(ニコニコ)」
「…………ま、まさか……男……?」
「うふ♡ 大正解で~す♡」
―――絶句。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 僕は……僕は、その、素敵なお相手に出会えますようにって」
「はい! 各種素敵なイケメンを、豊富に取り揃えておりますよ~」
「ゲームの世界みたいにいろんなタイプの子と仲良くなったり……」
「乙女ゲームですからねぇ。たくさん出会ってたくさん仲良くなってください~それが目的ですぅ」
「……ドキドキワクワクな……ハーレム生活を送って……めちゃくちゃ恋したい………」
「是非! お願いしたいです~! ミユ達にいろんな恋の行方を見せてください♡」
「…………」
きゃはっ♡ と可愛い笑顔を見せている彼女を、誰か止めてはくれないだろうか。
これは、性別を指定しなかった俺が悪いってことか……?
(いやいやいや、だって神様が腐女子とか、分かるわけないし!!)
「わ、わかった……って、全然納得出来ないけど! っていうか、それなら最初からBLゲームの世界を作ればよかったのでは?!」
「それはですね~前提として、作った当初はミユが主人公でありたかったから、というのが一番大きな理由ですが……」
はじめは自分が恋愛したかったんだもんな。それは理解できるが、だからといってそれが違うと気付いたなら、システム改修することだって出来るだろ! と、いう気持ちを視線に込めて、ミユの言葉を待つ。
「この世界で過ごしているうちに、気になっちゃったんですよねぇ、お助けキャラのことが」
「つまり、僕のこと……?」
「優くんもご存じの通り、乙女ゲームをはじめとする恋愛シュミレーションゲームには、必ず一人はお助けキャラがいるじゃないですかぁ。あの人達って、一体どうやって好感度を調べているんでしょう~。個人情報なんてある程度仲良くなければ話さないと思いますし、恋愛トークなんてもっとハードルが上がりますよねぇ?」
確かに。と、そう思ってしまった。
「お助けキャラの皆さんは、どんな手練手管で数多の男達から情報を収集するのでしょうか。そこには一体どんなドラマが待っているんでしょうか。特に優くんは私の萌え要素をふんだんに盛り込んだお気に入りのキャラですから。その行く末を是非見てみたいんですよね~♡」
あとはただ単純に、愛情込めて作り上げた攻略対象達が織りなす、最高のBLが見たかったんですぅ。と、今まで見た中で一番の笑顔で言われた俺は、それ以上何も言い返すことが出来ないのだった。
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