乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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プロローグ ~俺と女神と僕~

神のみぞ知る世界

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「んーー、ハッキリとした原作があるわけではないので、二次創作とは少し違うかもしれませんねぇ。いろんな作品のいいとこ取りをした、ごちゃまぜ新作ゲームってところでしょうか……基本としている世界観がゲームなので~」
「ごちゃまぜ新作ゲーム」
「はい~。とはいえ、キャラクターとなる人物達も自我があるので、決まったシナリオがあるわけではないんですぅ。それぞれが、自分たちの意思で考えて生活をしていますね~。そう考えるとミユル達は世界観や外観を決めているだけなので……プログラマーやデザイナーみたいなものが近いのかもしれませんねぇ」

 まぁ実際にサブカル業界で働いている人たちも、趣味の延長で勤め先を決めたり、その好きな物を作る職場を夢見ることも多いと聞くし……神様は世界を作るだけの力があっただけだって事だよな。とんでもない話だ。

「それで? 創造神の美癒流之命サマは、自分の作った世界を眺めて楽しんでいるっていうことか?」
「もちろん、眺めて楽しんではいますよぉ? ……でも、それよりも、ミユル達は自分の作った世界で巻き起こる様々なことを一緒に経験したかったんです~。一人の登場人物として」
「登場人物……」
「そうですぅ。私たちが作った世界がゲームであるとするならば、ミユルがいわゆるヒロインのポジションなんですよ~♡」

 にっこりと胸を張って自慢してくる女神様。え、可愛すぎんか?
 あざといポーズにコロッと引っかかるオタクとしては、こんなヒロインがいたら即落ち間違いなしなんですが。

「で、でも他にも一緒に作った人がいたんだろ? みんなヒロインになりたいものなんじゃ……」
「そこはジャンケンで勝ちました。三本勝負の勝ち抜き戦です」

 まさかのジャンケン。
 神様もジャンケンで勝敗決めるんだ……。

「私たちが何年も何年もかけて練り上げたんです~もちろん最っっ高の世界が出来たんですよぉ。でもね、ある時気づいちゃったんです」

 そう呟いた美癒流之命は、どこか遠い目をしていた。

「ミユルはヒロインになりたかったんじゃないだぁって。だって当事者ヒロインになってしまったら、有る事無い事色んな人の妄想がし難くなっちゃうじゃないですか~」
「な、なるほど……分かるようで分からんような……」
「分かってくださいよぉ。ミユルは原作改変はあまり好きではないんです~。そのためには少しだけ離れたところから、第三者として眺めていたい……主役じゃなくていいんです! 壁になりたいんです!!」

 どんどん熱の入ってくる女神に反して、俺の方は若干引き気味です。
 そういうもんなのか? 俺はハーレムの中心になる主人公になりたいけど。
 男女の差なのか、サブカルの楽しみ方の違いなのか。俺には理解し難い考えに首を傾げていると、それに気づいた女神様は、うんうんと頷きながら話を続ける。

「そう。そこで佐々木優太さんの出番なんですね。実は……貴方はあのまま学校に向かっていたら、少し先の交差点でトラックに轢かれて亡くなっていましたぁ」
「な」

 亡くなっていましたぁ
 ……じゃねぇよ!!! どんだけサラッと重大なこと発表してくれちゃってんだ?! この女神様は!!!!

「亡くなった佐々木優太さんは、それはそれは無念の想いを抱えられていたんですよぉ。『ピチピチのセブンティーンなのに~~』『恋人も出来たことないのに~~』『一度もセッk「う、うわぁぁあぁあ!!!!!!! やめてくれ!!!!!!!!!」
「……うふふ♡ なのでぇ、そんな非業の最期を迎えることのないよう、そうなる前に貴方の魂をこちらにお呼びしようとしたんですよ~。貴方の魂の願いは、ミユル達の求めているポジションにぴったりだったんですぅ」

 魂の願い……?
 そうか、確かに俺は願っていた。あの神社で。心の底から願ったはずだ。



『えーーー神様。美癒流之命様。どうか最後の高校生活こそは素敵なお相手に出会えますように……。あわよくば、ゲームの世界みたいにいろんなタイプの子と仲良くなっちゃったりして、ドキドキワクワクなハーレム生活を送ってみたりしたいです! むしろテンプレキャラたちと出会いたいです! めちゃくちゃ恋したいです!!!!!』



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