乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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プロローグ ~俺と女神と僕~

初めまして、女神様。

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「……あ、あれ。俺たしか神社の石段から落ちたような……?」

 もちろん頭は割れるほどの痛みを訴えている。しかし逆にいうとそこくらいしか、痛いところが見当たらないのが不思議だった。結構な高さのあった石段。あそこから落ちたら、よくて骨折……悪くて死んでいただろう。

「はい~。佐々木優太さんは確かに、わたしの神社の石段から落っこちましたぁ。それも一番上からです! おめでとうございます~」
「いや、全然おめでたくないんだが?! というか、え? わたしの神社……って…………」
「? どうかしましたかぁ~?」

 会話の途中でいきなりフリーズした俺を、その子は首を傾げて見つめる。


 か、
 可愛い……


 巫女装束のような服装をした目の前の女の子は、テレビで観ていたアイドルなんか目じゃないくらい可愛い顔をしていた。まさに現実離れした可愛さってやつだ。
 まるで二次元から飛び出してきたキャラクターのようなその子は、薄い桃色の髪の毛をいわゆる姫カットにして、腰まである長い髪を後ろで緩くひとつに纏めている。

(えっなに、俺の知らない人気レイヤーとか?! 可愛すぎて直視出来ないんだが……!)

 俺の心が読めるという、その子は嬉しそうに微笑んだ。

「うふふふふ~。そんなに褒めてくれるなんて、お上手ですねぇ。素直な方は大好きですよ♡ 貴方を選んで正解だったようです~」

 え。今この可愛い子、俺のこと大好きって言った? 言ったよね? これってもしかしてさっきの願い事が叶ったってことなのか。つまりはこの美少女が俺の彼女で、これからこの子と俺の、めくるめくハッピーラブライf……
「はぁい、ストップしてくださ~い」

 俺のノンブレス脳内妄想は最後まで語られることなく、無惨にも美少女によって中断させられる。

「半分正解で半分不正解ですぅ。佐々木優太さん。貴方はミユルの作ったミユルの世界で、とーーってもハッピーな人生を送ることができる、最高に幸運な人に生まれ変わる権利を手に入れたのです~!」

 弾けんばかりの笑顔でクルクルと廻る美少女。何だか後光が差しているような気もするし、どこからともなく花びらが舞ってきた。何なんだこの演出は。
 なによりも生まれ変わるってどういうことだ? 意味がわからない……

「ミユルは、まことの名を美癒流之命といいます」
「……美癒流之命って、さっきの神社のご祭神?」
「わぁっ! 偉いですね~ちゃんと覚えていてくれてたなんてビックリですぅ。そう、神様ですよ~」

 そりゃあ口に出して願いましたしね。
 しかし、よくよく考えれば、倒れている人間の頭をいきなり本気で殴りつけ、まるでコスプレのような格好をした、変な口調の女の子(自称神様)なんて、明らかにヤバい人なのでは。
 こんな相手、関わるべきではないと冷静になれば思うはず。でもこうして普通に話を聞いて、相槌まで打ってしまう俺は、やっぱりどこか普通じゃない状態なのかもしれない。

「ミユルは縁結びの神様なので、誰かが誰かを好きになったり、恋したいなぁって悩んだり、理想を追い求めるために頑張ったり……そんな人々のことを応援してきたんですぅ。悩みを解消するためにお手伝いもしますし、願いが叶った瞬間を見るのも好きで~、それがお仕事なんですけど……」

 なにやら頬を染めながら、モジモジとし出した美癒流之命にこちらも照れてくる。ま、まさか、その仕事を忘れてしまうくらいに俺のことを好きに……!

「それよりもーーっと、漫画やアニメやゲームで繰り広げられる恋愛が、大・大・大好きなんですぅ♡」
「うん。ですよねー」

 夢を見たっていいじゃない。だって俺はそういう世界を君に願ったんだから。

「そう! ミユルも夢を見たんです。だから………作っちゃった♡」
「作った?」
「ミユルのための、ミユルが好きなものを詰め込んだ、ミユルだけの世界です! ……厳密にいうと、同じ趣味の神様と協力して作ったので、残念ながらミユルだけのものではないですが……」

 な、なるほど、好きが高じて二次創作をしたりコスプレ衣装を作ったりするのと同じ感覚なのだろうか?もちろんこちらは世界を作っているので、スケールがとんでもなく大きいのだが。



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