乙ゲーヒロインの隣人って、普通はお助けキャラなんじゃないの?

つむぎみか

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プロローグ ~俺と女神と僕~

物語の始まりは、いつだって寝坊から

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 ――ピピピピピ……
 耳障りな機械音が鳴り響き、心地よい夢の世界から俺を引きずり起こす。

「うーーー……うるさいぃ……」

 手探りで枕元のスマホを探り当て、アラームを止めると再び枕に顔をうずめる。
 ……なんだか不思議な夢を見ていた気がするんだけど、どんな内容だったっけ。やたらピンクのファンシーな夢だった気がする。そんなことをぼんやりと思いだしながら、少しずつ意識が遠のき始めたその時、部屋の外から母さんの声が聞こえる。

「ちょっと優太ー? 起きてるのーー?」
「……んん~~……」
「春休みも補講あるって言ってなかった? もう七時過ぎてるわよぉ~」
「……ほこう……しちじ…………」

 覚醒からは程遠く、聞こえた言葉をただただ繰り返す。
 そうだ、今日から春休みが始まったんだ。まったく母さんも、せっかくの休みなんだから、ゆっくり寝かせてくれよ。って、なんで俺はアラームなんてかけてたんだっけ? ああそうか。休み前の試験で赤点を取ったから、その補講があるんだった……――

「って、えぇ!! し、七時過ぎ?! 嘘だろっ!!」

 飛び起きて携帯を見ると、時間はしっかり七時二十五分の表示がされている。なんなら、六時半から十五分おきに設定したはずのアラームは、スヌーズも含めて全てきっちりと解除されていた。

「まじかよ……初日に寝坊なんてしたら先生になんで言われるか……っ! 母さんも起こすなら、もっと早く起こしてくれよなー!?」

 デカい独り言を叫びながら部屋の中をドタバタと動き回る。ほら、声に出すとなんとなく冷静になれる気がするだろ? そのおかげなのか、ただの焦りの結果なのか、いつもの数倍は速い気がするスピードで着替えを終えた俺は、荷物を掴んで部屋の扉を開ける。こういう時に制服って便利だよな。着る服を考える必要がないんだから。

「何度も起こしたのよ~? まったく、顔くらい洗って行きなさいね」
「わかってるって!」

 母さんの小言に返事をしながらそのまま洗面所へ向かい、パッと顔だけ洗って鏡を軽くチェックする。
 うん。いつも通りの俺。THEフツメン。問題なし!
 寝癖があろうがなかろうが、モブ顔の俺を気にする奴もいないだろうと、玄関へ走った。


「行ってきます!」


◇◇◇


 俺の名前は佐々木優太ささきゆうた
 顔だけではなく名前までも、友達の友達の友達くらいまでの中になら、一人くらいいてもおかしくない程度にありふれている。ごくごく普通の、この春3年生になるピッチピチの男子高校生DK(17)だ。

 学力も中の下。ちょっとゲームに夢中になってテスト勉強をおろそかにしたら、こうして補習を余儀なくされるくらいの頭脳である。まぁそれでも、運動が出来れば良かったのかもしれない。部活に入って仲間との友情を深めながら、可愛いマネージャーとの恋愛だってあっただろう。……そんな話をしている時点でわかるよな? そうです、スポーツも苦手な俺は万年帰宅部だし、彼女だって生まれてから一度も出来たことありません!

 べ、別に彼女なんていなくても、寂しくなんてないよ? ほら俺ってばゲーマーだから。現実の「佐々木ってほんと冴えないよね~」とか「あいつ絶対童貞でしょw」とか「印象なさ過ぎてたまに忘れるわ。今日いたっけ?」とか言ってくるめちゃくちゃ怖い女子に比べ、ゲームの世界にはそれはそれは素晴らしい美少女達がいるのだ。画面の中でなら何十人もの女性と付き合った経験があるしな。超自慢(涙目)

 重度のゲームオタクであること以外、全てが並の並。これといって特筆すべきような特徴もない俺が、いきなりこんな自分語りをするのには訳がある。

「うわ……っ?!」

 遅刻をしてなるものかと、いつもの通学路を全速力で駆け抜けていたその時……――
 突然強い風が吹き、目の前が見えなくなるほどにピンク色の花びらが舞う。



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