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36_協力者
しおりを挟む(どうしよう! どうしよう!)
アンティーブ辺境伯の領主館の敷地内を逃げ惑いながら、私は考える。
(誰かに助けを求める? ううん、だけど、誰を信じたらいい?)
殺されたかもしれないと思っていたルゥセーブルさんは、生きていた。おそらくはじめから、ゼレールさんと結託していたのだろう。白磁の研究のことをゼレールさんに教えたのは、彼かもしれない。
だとしたら、ゼレールさんが、領主館の他の使用人と繋がっている可能性もある。疑心暗鬼になって、誰も信じられなくなっていた。
「この辺りも、くまなく捜せ!」
「・・・・!」
どこかから声が聞こえたので、私は慌てて、立木の影に隠れた。
身を潜めながら、そっとその方向を見ると、数人の男達が集まっていた。
暗くて、シルエットしかわからなかったけれど、燕尾服を着ているようだったから、おそらく、領主館の使用人達なのだろう。
「見つけたか?」
「いや、いないな。もう外に逃げたのかもしれない」
「それはありえない。門は封鎖したんだ。外には出られないはずだ」
「全員で探しているんだから、いずれ見つかるさ。・・・・とにかく今は、敷地内をくまなく捜索するぞ」
そして、男達は別々の方向へ散っていく。
心臓が、早鐘のようにバクバクと鳴っていた。
(・・・・どうして? どうして他の使用人まで、私を捜しているの?)
領主館の使用人が全員、ゼレールさんに協力しているのだろうか。もしかして領主館の使用人全員が、ゼレールさんと共謀していたのだろうか。
恐怖で、身体の震えが止まらなくなる。
(逃げなきゃ――――とにかく逃げなきゃ!)
混乱して、立木の影から出たところで、人影とぶつかりそうになった。
「カロル様!?」
「ブランカさん!」
そこにいたのは、ブランカさんだった。
「お願いです、助けてください!」
ブランカさんが何か言う前に、私は彼女の手をつかんだ。
「理由はわからないけれど、追われているんです! それにどうして、ゼレールさんが領主館に・・・・」
「突然ゼレール様が領主館に戻ってきて、陛下の使者を名乗っている詐欺師がいる、手紙は偽物だと言い出したんです。みんなその話を信じて、あなたを捕まえようと――――」
「詐欺師? 私が?」
「・・・・ゼレール様の話は本当なんですか?」
「もちろん嘘です! 私は正式に陛下の許可を得て、アンティーブに調査をしに来たんです!」
即座に私は否定した。
(もしかして、私を殺して、発覚を遅らせようとしている?)
ゼレールさんは、カデーナ卿がノアム陛下であることを知らないし、今、陛下がアンティーブに向かっていることも知らない。私を殺せば、逃亡する時間が稼げると考えているのかもしれなかった。
「どうしてゼレール様が、そんなことを?」
ブランカさんは戸惑っている。
「・・・・おそらくゼレールさんが、アンティーブ辺境伯夫人を殺害した本人だからでしょう。逃亡する時間を稼ぐために、私を殺そうとしているんだと思います」
「まさか、そんな!」
「セシールさんが、バルビエさんと恋人だったと私に教えたのは、ゼレールさんなんです。・・・・でも、真実は違った。ゼレールさんは嘘を言って、事実を捻じ曲げようとしたんです」
ブランカさんは息を呑み、固まっていた。
「そっちにいたか?」
「・・・・!」
近くから誰かの声が聞こえて、私はとっさに、低木の影に隠れた。
なぜかブランカさんまで、低木の影に身を潜める。
「いや、こっちにはいないみたいだな。向こうを捜そう」
使用人達の足音が、遠ざかっていく。足音が聞こえなくなったので、私は肩から力を抜いた。
「・・・・どうしてですか? ブランカさん」
彼女が、捜している人物がここにいると叫べば、私は捕まっていたはずだ。
でも、ブランカさんはそうしなかった。
「・・・・あなたを信じます」
「え?」
「こっちに来てください」
彼女は私の手を引いて、走り出した。
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