36 / 41
36_協力者
しおりを挟む(どうしよう! どうしよう!)
アンティーブ辺境伯の領主館の敷地内を逃げ惑いながら、私は考える。
(誰かに助けを求める? ううん、だけど、誰を信じたらいい?)
殺されたかもしれないと思っていたルゥセーブルさんは、生きていた。おそらくはじめから、ゼレールさんと結託していたのだろう。白磁の研究のことをゼレールさんに教えたのは、彼かもしれない。
だとしたら、ゼレールさんが、領主館の他の使用人と繋がっている可能性もある。疑心暗鬼になって、誰も信じられなくなっていた。
「この辺りも、くまなく捜せ!」
「・・・・!」
どこかから声が聞こえたので、私は慌てて、立木の影に隠れた。
身を潜めながら、そっとその方向を見ると、数人の男達が集まっていた。
暗くて、シルエットしかわからなかったけれど、燕尾服を着ているようだったから、おそらく、領主館の使用人達なのだろう。
「見つけたか?」
「いや、いないな。もう外に逃げたのかもしれない」
「それはありえない。門は封鎖したんだ。外には出られないはずだ」
「全員で探しているんだから、いずれ見つかるさ。・・・・とにかく今は、敷地内をくまなく捜索するぞ」
そして、男達は別々の方向へ散っていく。
心臓が、早鐘のようにバクバクと鳴っていた。
(・・・・どうして? どうして他の使用人まで、私を捜しているの?)
領主館の使用人が全員、ゼレールさんに協力しているのだろうか。もしかして領主館の使用人全員が、ゼレールさんと共謀していたのだろうか。
恐怖で、身体の震えが止まらなくなる。
(逃げなきゃ――――とにかく逃げなきゃ!)
混乱して、立木の影から出たところで、人影とぶつかりそうになった。
「カロル様!?」
「ブランカさん!」
そこにいたのは、ブランカさんだった。
「お願いです、助けてください!」
ブランカさんが何か言う前に、私は彼女の手をつかんだ。
「理由はわからないけれど、追われているんです! それにどうして、ゼレールさんが領主館に・・・・」
「突然ゼレール様が領主館に戻ってきて、陛下の使者を名乗っている詐欺師がいる、手紙は偽物だと言い出したんです。みんなその話を信じて、あなたを捕まえようと――――」
「詐欺師? 私が?」
「・・・・ゼレール様の話は本当なんですか?」
「もちろん嘘です! 私は正式に陛下の許可を得て、アンティーブに調査をしに来たんです!」
即座に私は否定した。
(もしかして、私を殺して、発覚を遅らせようとしている?)
ゼレールさんは、カデーナ卿がノアム陛下であることを知らないし、今、陛下がアンティーブに向かっていることも知らない。私を殺せば、逃亡する時間が稼げると考えているのかもしれなかった。
「どうしてゼレール様が、そんなことを?」
ブランカさんは戸惑っている。
「・・・・おそらくゼレールさんが、アンティーブ辺境伯夫人を殺害した本人だからでしょう。逃亡する時間を稼ぐために、私を殺そうとしているんだと思います」
「まさか、そんな!」
「セシールさんが、バルビエさんと恋人だったと私に教えたのは、ゼレールさんなんです。・・・・でも、真実は違った。ゼレールさんは嘘を言って、事実を捻じ曲げようとしたんです」
ブランカさんは息を呑み、固まっていた。
「そっちにいたか?」
「・・・・!」
近くから誰かの声が聞こえて、私はとっさに、低木の影に隠れた。
なぜかブランカさんまで、低木の影に身を潜める。
「いや、こっちにはいないみたいだな。向こうを捜そう」
使用人達の足音が、遠ざかっていく。足音が聞こえなくなったので、私は肩から力を抜いた。
「・・・・どうしてですか? ブランカさん」
彼女が、捜している人物がここにいると叫べば、私は捕まっていたはずだ。
でも、ブランカさんはそうしなかった。
「・・・・あなたを信じます」
「え?」
「こっちに来てください」
彼女は私の手を引いて、走り出した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】王位に拘る元婚約者様へ
凛 伊緒
恋愛
公爵令嬢ラリエット・ゼンキースア、18歳。
青みがかった銀の髪に、金の瞳を持っている。ラリエットは誰が見ても美しいと思える美貌の持ち主だが、『闇魔法使い』が故に酷い扱いを受けていた。
虐げられ、食事もろくに与えられない。
それらの行為の理由は、闇魔法に対する恐怖からか、或いは彼女に対する嫉妬か……。
ラリエットには、5歳の頃に婚約した婚約者がいた。
名はジルファー・アンドレイズ。このアンドレイズ王国の王太子だった。
しかし8歳の時、ラリエットの魔法適正が《闇》だということが発覚する。これが、全ての始まりだった──
婚約破棄された公爵令嬢ラリエットが名前を変え、とある事情から再び王城に戻り、王太子にざまぁするまでの物語──
※ご感想・ご指摘 等につきましては、近況ボードをご確認くださいませ。
地味でブスな私が異世界で聖女になった件
腹ペコ
恋愛
どこからどう見ても、地味女子高校生の東雲悠理は、正真正銘の栗ぼっちである。
突然、三年六組の生徒全員でクラス召喚された挙句、職業がまさかの聖女。
地味でブスな自分が聖女とか……何かの間違いだと思います。
嫌なので、空気になろうと思っている矢先、キラキラ王子様に何故か目をつけられました……
※なろうでも重複掲載します。一応なろうで書いていた連載小説をモチーフとしておりますが、かなり設定が変更されています。ただキャラクターの名前はそのままです。
魅了魔法は使えません!~好きな人は「魅了持ち」の私を監視してただけみたいです~
山科ひさき
恋愛
「あなたの指示さえなければ近づきもしませんよ」「どこに好意を抱く要素があるというんです?」
他者を自分の虜にし、意のままに操ることさえできる強力な力、魅了魔法。アリシアはその力を身に宿した「魅了持ち」として生まれ、周囲からの偏見にさらされながら生きてきた。
「魅了持ち」の自分に恋愛などできるはずがないと諦めていた彼女だったが、魔法学園に入学し、一人の男子生徒と恋に落ちる。
しかし、彼が学園の理事長から彼女の監視を命じられていたことを知ってしまい……。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
一般人になりたい成り行き聖女と一枚上手な腹黒王弟殿下の攻防につき
tanuTa
恋愛
よく通っている図書館にいたはずの相楽小春(20)は、気づくと見知らぬ場所に立っていた。
いわゆるよくある『異世界転移もの』とかいうやつだ。聖女やら勇者やらチート的な力を使って世界を救うみたいな。
ただ1つ、よくある召喚ものとは異例な点がそこにはあった。
何故か召喚された聖女は小春を含め3人もいたのだ。
成り行き上取り残された小春は、その場にはいなかった王弟殿下の元へ連れて行かれることになるのだが……。
聖女召喚にはどうも裏があるらしく、小春は巻き込まれる前にさっさと一般人になるべく画策するが、一筋縄では行かなかった。
そして。
「──俺はね、聖女は要らないんだ」
王弟殿下であるリュカは、誰もが魅了されそうな柔和で甘い笑顔を浮かべて、淡々と告げるのだった。
これはめんどくさがりな訳あり聖女(仮)と策士でハイスペック(腹黒気味)な王弟殿下の利害関係から始まる、とある異世界での話。
1章完結。2章不定期更新。
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
【完結】シロツメ草の花冠
彩華(あやはな)
恋愛
夏休みを開けにあったミリアは別人となって「聖女」の隣に立っていた・・・。
彼女の身に何があったのか・・・。
*ミリア視点は最初のみ、主に聖女サシャ、婚約者アルト視点侍女マヤ視点で書かれています。
後半・・・切ない・・・。タオルまたはティッシュをご用意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる