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28_貴族の務め_前編
しおりを挟む「着替えなきゃいけないでしょ? 応接室使っていいから!」
「このままで大丈夫です。」
「いや、そんな格好で歩いたら他の人ビックリするから!」
「大丈夫ですよ~! 慣れてますから。」
何に慣れてるのっ?
つか、うちの事務所からガスマスクの女が出ていくところを誰かに見られたら嫌なんだよ!
俺の言うことを聞かず、彼女は風呂敷包みを背負ってさっさと帰っていった。
ハァー、何なんだ、あの子!
初日から頭が痛くなった。
とりあえずコーヒーでも飲んで気持ちを落ち着けようとキッチンへ行った。
驚いた。
まるで新品じゃないか!
シンクが光り輝いている!
コーヒーやお茶などを置いてある棚もキレイに整理されていて、ポットも買った当時の本来の色を取り戻し、もちろん全てピカピカに磨き上げられていた。
茶渋の付いていないカップに入れたコーヒーは、いつもよりもずっと美味しそうに見えた。
そして何故か味も美味しい気がした、キッチンの窓から風がそよいだ。
ハァ~、癒されるぅ~。
ハッ!
いかんいかん!
うかつにも彼女の作り出した空間に癒されてしまった。
相手はガスマスクだぞ!
身を引き締めねば!
でも…部屋がキレイになるって…威力あるなぁ…。
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