魔王になったけど、夫(国王)と義弟(騎士団長)が倒せない!

炭田おと

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34_禁断の愛

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「ねえねえ、あれを見てよ!」


 その時、窓から身を乗り出している侍女の集団と出くわした。私が近くにいることに気づかないほど、何かに気を取られている様子だ。


「カルデロン卿と、アルフレド卿がいらっしゃるわ!」


 つられて、私も窓の下の木立を見下ろす。


 木立の傘の下で、エンリケとアルフレド卿が話し込んでいた。


「お二人とも、相変わらずお美しいわ・・・・」

「羨ましい空間ね・・・・あの中に混ざりたい!」

「何言ってるの? あの空間に第三者が入り込んだら、完璧な空気が台無しになっちゃうじゃない。割って入ることは許さないわよ」

「ひどい!」

 きゃっきゃと、侍女達が黄色い声を散らした。


「それにしてもカルデロン卿は、アルフレド卿とばかり一緒にいるわよね。エレアノール様との結婚が、近いんでしょう? エレアノール様と一緒に過ごさなくていいのかしら?」


 一人の侍女の呟きに、ハッとした。


「あの話はまだ口約束のようなもので、正式な婚約ではないそうよ」

「あら、そうなの?」

「でも、お二人が結婚するのはもう決まっているようなものじゃない」

「そうなんだけど・・・・カルデロン卿は、あまりこの結婚には乗り気じゃないご様子ね」


 相談を持ちかけられた時に、私が感じた空気を、侍女達も感じ取っているようだった。


「なぜかしら? エレアノール様以上に、カルデロン卿に相応しい方なんて、この国にはいないと思うんだけど・・・・」


「それがね――――」


 問いかけられた侍女は、含み笑いをした。


「あくまでも、噂よ? そのことを念頭に置いて、聞いてね」

 そんな前置きを置いてから、彼女はその言葉を口にする。



「――――カルデロン卿はもしかしたら、アルフレド卿と相思相愛なんじゃないかっていう噂があるの」



「ええーっ!?」


 侍女達の声が、いっそう高くなる。



 ガツンと、金槌で頭を殴られた感覚だった。


(まさか・・・・その発想はなかったわ)



 エンリケとアルフレド卿が、相思相愛――――予想外の展開に、思考力が追いつかない。



 でも確かに、二人はたいてい一緒にいるし、仲が良すぎる気がした。



「その話、本当なの?」

「ただの噂だって言ったでしょ」

「でももし、その噂が本当だったら、禁断の恋じゃない! だってお二人は家のために、女性を妻として迎えなければならない立場でしょう?」

「そうね。・・・・許されざる恋ってやつだわ」

「まあ、素敵! 誰かお二人の小説を書いてよ!」

「だからただの噂なんだってば! 本気にしないでよ」


 侍女達は小鳥の羽ばたきのような笑い声を散らして、結局最後まで私に気づかないまま、どこかに行ってしまった。


 一人残された私は、今耳にしたばかりの噂話について、考える。


 ――――それからその情報を、エンリケが突然相談したいと言い出した謎に繋げてみた。


「ああっ! そういうことだったのね!」



 閃いた瞬間、私は思わず叫んでしまっていた。
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