2 / 33
2.どうしてこんなに
しおりを挟む
(早く行かないと着替える時間なくなっちゃう)
1時間目の授業が体育だった私は、ホームルームが終わるとすぐに体育館へ向かった。
体育館の奥にある"女子更衣室"と書かれた扉を開けると、そこはぶつかり合いながら着替える女子達でいっぱいだった。2クラス合同で授業が行なわれる体育は、普段だと着替えにくるのもバラつきがあるので狭い一室でも余裕があるのだが、1時間目だとそう大差がないので今日みたいに更衣室が戦場と化す。
──キーンコーン
チャイムの音が室内に鳴り響く。
「やばっ! 予鈴なっちゃったよ~」
(まだ着替え終わってないのに)
「はやく行くよー! ほら葵!」
「あっ、うん!」
先に着替え終わった友達に急かされつつ着替えて、本鈴がなる前に更衣室を出る。
まだ先生の姿はなかった。
(間に合った……)
更衣室に残っていた人たちも、私の後を追うようにバタバタとやってくる。
「今日からだっけ?」
「そうそう」
「私、話したことないんだよねー」
「あれ? 去年何組?」
周りが少し騒がしい。
──キーンコーン
本鈴の合図とともに、入り口から一人の男性が入ってきた。
彼の名は、倉田亮介(クラタ リョウスケ)。うちの学校の体育教師である。
「集合!」
先生の一声で皆が一斉に集まり。
「休め!」
「体育委員、号令かけて」
「気をつけ! ……礼っ!」
「お願いします!」
体育委員の号令で、一斉に頭を下げる。
「よし、座れー」
「出席とるぞー!」
今日は高校3年生になってから初めて行う体育だからか、欠席者はいなかった。先生の挨拶があるし、授業内容もきつい運動ではなく、オリエンテーション的なことをやるから、休む人は少ないのだろう。
「えーと、3年CD組の女子の体育をおしえ……」
「3年男子ぃー! 澤口と根岸が教える」
倉田先生の言葉を遮って聞こえてくる大きな声の持ち主は、体育教官の中でも校内一厳しい生活指導の澤口先生だった。
タイミングをみて何度か話そうとチャレンジするも、澤口先生の声でかき消されて全く聞こえない。倉田先生がいらいらしているのが見ていてわかるほどで、その状況がなんだか可笑しくて、つい笑ってしまう。
「やっと喋れる……」
澤口先生の話しが終わった後、溜息混じりに先生が呟く。
「えー、3年CD組の女子教えます。名前は倉田亮介……って、みんな知ってるか……俺が知ってる奴もいるけど知らねぇ奴が殆どだな。まぁ、他の先生と教え方が違ったりする所もあると思うけど、それが俺のやり方なんで……一年間仲良くやりましょう」
──ドクン
少し照れながら笑う先生を見て、鼓動が高鳴る。
(あれ? 私……ドキドキしてる?)
この時はわからなかった。
どうして胸が高鳴ったのか。
1時間目の授業が体育だった私は、ホームルームが終わるとすぐに体育館へ向かった。
体育館の奥にある"女子更衣室"と書かれた扉を開けると、そこはぶつかり合いながら着替える女子達でいっぱいだった。2クラス合同で授業が行なわれる体育は、普段だと着替えにくるのもバラつきがあるので狭い一室でも余裕があるのだが、1時間目だとそう大差がないので今日みたいに更衣室が戦場と化す。
──キーンコーン
チャイムの音が室内に鳴り響く。
「やばっ! 予鈴なっちゃったよ~」
(まだ着替え終わってないのに)
「はやく行くよー! ほら葵!」
「あっ、うん!」
先に着替え終わった友達に急かされつつ着替えて、本鈴がなる前に更衣室を出る。
まだ先生の姿はなかった。
(間に合った……)
更衣室に残っていた人たちも、私の後を追うようにバタバタとやってくる。
「今日からだっけ?」
「そうそう」
「私、話したことないんだよねー」
「あれ? 去年何組?」
周りが少し騒がしい。
──キーンコーン
本鈴の合図とともに、入り口から一人の男性が入ってきた。
彼の名は、倉田亮介(クラタ リョウスケ)。うちの学校の体育教師である。
「集合!」
先生の一声で皆が一斉に集まり。
「休め!」
「体育委員、号令かけて」
「気をつけ! ……礼っ!」
「お願いします!」
体育委員の号令で、一斉に頭を下げる。
「よし、座れー」
「出席とるぞー!」
今日は高校3年生になってから初めて行う体育だからか、欠席者はいなかった。先生の挨拶があるし、授業内容もきつい運動ではなく、オリエンテーション的なことをやるから、休む人は少ないのだろう。
「えーと、3年CD組の女子の体育をおしえ……」
「3年男子ぃー! 澤口と根岸が教える」
倉田先生の言葉を遮って聞こえてくる大きな声の持ち主は、体育教官の中でも校内一厳しい生活指導の澤口先生だった。
タイミングをみて何度か話そうとチャレンジするも、澤口先生の声でかき消されて全く聞こえない。倉田先生がいらいらしているのが見ていてわかるほどで、その状況がなんだか可笑しくて、つい笑ってしまう。
「やっと喋れる……」
澤口先生の話しが終わった後、溜息混じりに先生が呟く。
「えー、3年CD組の女子教えます。名前は倉田亮介……って、みんな知ってるか……俺が知ってる奴もいるけど知らねぇ奴が殆どだな。まぁ、他の先生と教え方が違ったりする所もあると思うけど、それが俺のやり方なんで……一年間仲良くやりましょう」
──ドクン
少し照れながら笑う先生を見て、鼓動が高鳴る。
(あれ? 私……ドキドキしてる?)
この時はわからなかった。
どうして胸が高鳴ったのか。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる