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1.プロローグ
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私の名前は七瀬葵(ナナセ アオイ)。先月17歳になったばかりの高校3年生。
「次は緑峰前、緑峰前──」
私が通う学校は、駅からバスで20分ほど揺られた自然豊かな場所にある。 自然豊かといえば聞こえはいいが、夏は虫が多いし、冬は雪が多いし、自然が一番だとは決して笑顔で言えない。
おまけに、バスを降りた私の目の前に立ちはだかる登り坂。登りきるのに10分はかかるこの坂道は、3年目になってもまだ慣れない。
「ねぇねぇ」
無言で坂道を登っていると、前方から女の子の声が聞こえた。
声のした方へ目をやると、女の子が男の子に腕を絡ませ、身体を寄せ合いながら歩いているのが見えた。
「今日の帰り、クレープ食べに行こ?」
「んー? いいよ」
「ほんと? 約束ね」
登校中で周りには人がたくさんいるのに、気にするそぶりもなく戯れる二人を見て、ふと思う。
(すごいなぁ)
私には、生まれてから一度も”彼氏”という存在が出来たことがない。 好きな人はもちろんいた。でも、話をしてるだけで楽しかったから告白しようとか思えなかったし、相手に彼女ができちゃっても寂しいとか思わなかった。
それを友達に話したら、そんなの恋じゃないって言われた。友達曰く──恋はドキドキして、キラキラして、キューって胸が痛くなるもの──らしい。
確かにいままでそんな風になったことはなかった。
目の前の二人は、きっと恋をしているのだろう。周りが見えなくなるくらい相手を想うって、そういうことだよね。
(私もいつか、そんな恋ができるのかな?)
「次は緑峰前、緑峰前──」
私が通う学校は、駅からバスで20分ほど揺られた自然豊かな場所にある。 自然豊かといえば聞こえはいいが、夏は虫が多いし、冬は雪が多いし、自然が一番だとは決して笑顔で言えない。
おまけに、バスを降りた私の目の前に立ちはだかる登り坂。登りきるのに10分はかかるこの坂道は、3年目になってもまだ慣れない。
「ねぇねぇ」
無言で坂道を登っていると、前方から女の子の声が聞こえた。
声のした方へ目をやると、女の子が男の子に腕を絡ませ、身体を寄せ合いながら歩いているのが見えた。
「今日の帰り、クレープ食べに行こ?」
「んー? いいよ」
「ほんと? 約束ね」
登校中で周りには人がたくさんいるのに、気にするそぶりもなく戯れる二人を見て、ふと思う。
(すごいなぁ)
私には、生まれてから一度も”彼氏”という存在が出来たことがない。 好きな人はもちろんいた。でも、話をしてるだけで楽しかったから告白しようとか思えなかったし、相手に彼女ができちゃっても寂しいとか思わなかった。
それを友達に話したら、そんなの恋じゃないって言われた。友達曰く──恋はドキドキして、キラキラして、キューって胸が痛くなるもの──らしい。
確かにいままでそんな風になったことはなかった。
目の前の二人は、きっと恋をしているのだろう。周りが見えなくなるくらい相手を想うって、そういうことだよね。
(私もいつか、そんな恋ができるのかな?)
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