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26.【8日目】
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【8日目】
昨夜は方針が決まった後、あれから全員で自室へと移動した。
少しお通夜状態な感じだったのもあるが、部屋までみんな無言で歩くだけだった。
内心は不安でいっぱいなのだと思う。僕もそうだ。
そして、ハゼリはやっぱり、ベレンシスによって強引にお姫様抱っこをされて運ばれていた。満更でもないのか、それとも諦めていたのか…。
僕は色々ありすぎて精神的に疲弊したのと、腰が限界で自室に帰ってすぐにベッドに横になり、気がつけば朝の就業開始時刻になっていた。
目は覚めても身体は怠く、起き上がる気力もない。ベッドの上でゴロゴロとしながら二度寝をきめようとしていたその時。
<ポワン…ポワン…>
『ネモ、起きているか?』
まどろんでいた最中に、カランの声が響いて一気に覚醒した。
「は、はい!おはよう、ございます!」
すぐにベッドを整えて開錠すると、2人分の食事をトレーに乗せてカランが入って来た。
「起こしてすまない。みな朝食へ出たようなのに、ネモが起きて来なかったようで心配していたぞ。」
「え?」
端末を確認すると、サキーラ達から何件も心配のメッセージが入っていた。
昨日あんな話をした後なのに、軽蔑どころか心配してくれているとは思わず、じんわりと目頭が熱くなってしまった。
とりあえず、今からカランと一緒に食事をとってから向かうと、すぐに返事をした。
「カラン様も、本当に…その。色々とありがとうございます。」
一緒に部屋で食事をとりながら、改めて礼を述べた。
「いや。私は結局予測すらできずに、取り返しのつかない傷をネモ達につけてしまった。それでも、仲間達の為にああやってきちんと言葉で説明したネモを尊敬する。…辛かったろう、身体も。心も。」
僕の目をしっかりと見つめて、そう言葉をかけてくれる優しいカラン。
僕は、思ってもみなかった言葉に、ポロポロと涙が溢れて止まらなくなってしまった。
「…ぅ…、すみませ…僕…」
僕は怖かったのだ。
覚悟はしていても、同郷の者達の反応が、何より怖かった。
仲間達から侮蔑の目で見られることを。
自分の存在を否定されることを。
どんどん溢れてくる雫を手で拭っていると、不意にカランが強い力で僕を抱きしめてきた。
「すまない…仲間達に知られるのが怖かったろうに。私の為をおもってのあの話も。どれほど君に重荷を背負わせてしまっていたのかと。すまなかった…ネモ。」
「っ…ぅあああっ」
カランの背に手を回し、ぎゅっとしがみつき、今までの恐怖を吐き出していた。僕が泣き止むまで、カランはそのままの体勢で優しく抱きしめながら、髪や背中を撫でて落ち着かせてくれた。
何より、カランが僕の気持ちを受け止めて寄り添ってくれることが、心の底から嬉しかった。ちゃんと僕を見ていてくれたことを、気遣ってくれたことを。
彼を独り占めできるこの時間が、もっと続けばいいのに。
ー*ーー*ーー*ー
心地良さに甘えながら、ひとしきり泣いてスッキリした僕は、カランと共に、みんなが集まっているというカフェのエリアへ合流した。
僕を送り届けると、カランは明日の為の準備へと戻っていってしまったけれど。
サキーラ達が心配そうに声をかけてくれる。
「大丈夫ですか?目が腫れていますよ?」
「…ああ。いや、昨日あんな話をした後なのに、その…みんなが、優しくて…ホッとしてさ…。」
みんなが驚いたように僕を見た。
え?なんで?
サキーラが僕の前に立ち、真剣な眼差しでぎゅっと僕の手を握ってきた。
「馬鹿言わないでください!大体、ネモは被害者なんですよ?なのに…わざわざ私達の為を思って…。すごく決心のいることだったと思います。きっと、話すのも辛かったでしょうに…私達の為に警告をしてくれたあなたに、軽蔑も何もするわけないでしょう!」
涙ぐみながらそう言ってくれるサキーラに、あれだけ泣いたにも関わらず、涙がポロッと出てしまう。
そう思ってくれているのかと、本当に安堵したのだ。
「っあり…がとう…」
周りにも仲間達が集まり、僕を慰めてくれた。
ー*ーー*ーー*ー
その後は、ゆっくりデザートや飲み物を頂きながら、笑い合って話もでき、肩の力がスッと抜けた気がする。
ただ、ハゼリはやはり身体が大変なようで、サードのベレンシスが付きっきりでみてくれているそうだ。この場にいないハゼリの事もみんな心配していたので、本当に気持ちが楽になった。
途中、アダンとセイロンが合流し、カードゲームもしたりして楽しむことができたしな。
「悪い、トイレ行ってくるよ。」
僕がそう言うと、じゃあ自分もと、クロントと、クロントの相棒ファリア、そしてアダンが立ち上がった。
一緒に行動した方が良いし、アダンもいるなら尚のこと安心だ。
カフェエリアの外にあるトイレで用を済ませ、手を洗っているとクロントが声をかけて来た。
「あ、あのさ、ネモ。俺、職場にどうしても取りに行きたいものがあって…。家族からもらったお守り、置いたままなんだ!アダンさんもいるし、今から一緒に取りに行けないかな?」
ビクビクと怯えながらそう話すクロント。
確かに、僕とアダンがいれば心強いのかもしれない。
アダンに伝えると了承を得たので、ファリアにその事を伝え、4人でオパール第3小隊のエリアへ向かうことにした。
行き交う人はそこまで多くはない。ただ、昨日の逮捕劇の内容が伝わっているのか、ベーンケイル人達は、逆に僕らに近づかないようにしているようにみえる。やはり執行部隊が出て来たことは大きいのかもしれない。
「この部屋だよ。」
クロントが先導し入室して、奥のデスクへ一緒に移動する。
自身の机なのか、引き出しをゴソゴソと漁りだした。
「…あ、あれ?ないな…。」
しかし、探し物はそこには無いようで、どこにやったのか考えているみたいだ。
「…そう言えば、昨日そっちの部屋で作業してないっけか?あのポーチの中に入ってるやつだろ?」
「あ、そうか。目薬とかと一緒にしまって…。」
ファリアが指摘すると、クロントが思い出したようにこちらを振り返る。
どうやら僕の後ろの部屋にあるようだ。
近いので腕輪をかざすとすぐに扉が開く。
病室のようにベッドとカーテンがある殺風景な部屋だった。
しかし突然、後ろからドンッと押されて部屋に倒れ込むように入ると、横からガシッと誰かに腕を掴まれた。
昨夜は方針が決まった後、あれから全員で自室へと移動した。
少しお通夜状態な感じだったのもあるが、部屋までみんな無言で歩くだけだった。
内心は不安でいっぱいなのだと思う。僕もそうだ。
そして、ハゼリはやっぱり、ベレンシスによって強引にお姫様抱っこをされて運ばれていた。満更でもないのか、それとも諦めていたのか…。
僕は色々ありすぎて精神的に疲弊したのと、腰が限界で自室に帰ってすぐにベッドに横になり、気がつけば朝の就業開始時刻になっていた。
目は覚めても身体は怠く、起き上がる気力もない。ベッドの上でゴロゴロとしながら二度寝をきめようとしていたその時。
<ポワン…ポワン…>
『ネモ、起きているか?』
まどろんでいた最中に、カランの声が響いて一気に覚醒した。
「は、はい!おはよう、ございます!」
すぐにベッドを整えて開錠すると、2人分の食事をトレーに乗せてカランが入って来た。
「起こしてすまない。みな朝食へ出たようなのに、ネモが起きて来なかったようで心配していたぞ。」
「え?」
端末を確認すると、サキーラ達から何件も心配のメッセージが入っていた。
昨日あんな話をした後なのに、軽蔑どころか心配してくれているとは思わず、じんわりと目頭が熱くなってしまった。
とりあえず、今からカランと一緒に食事をとってから向かうと、すぐに返事をした。
「カラン様も、本当に…その。色々とありがとうございます。」
一緒に部屋で食事をとりながら、改めて礼を述べた。
「いや。私は結局予測すらできずに、取り返しのつかない傷をネモ達につけてしまった。それでも、仲間達の為にああやってきちんと言葉で説明したネモを尊敬する。…辛かったろう、身体も。心も。」
僕の目をしっかりと見つめて、そう言葉をかけてくれる優しいカラン。
僕は、思ってもみなかった言葉に、ポロポロと涙が溢れて止まらなくなってしまった。
「…ぅ…、すみませ…僕…」
僕は怖かったのだ。
覚悟はしていても、同郷の者達の反応が、何より怖かった。
仲間達から侮蔑の目で見られることを。
自分の存在を否定されることを。
どんどん溢れてくる雫を手で拭っていると、不意にカランが強い力で僕を抱きしめてきた。
「すまない…仲間達に知られるのが怖かったろうに。私の為をおもってのあの話も。どれほど君に重荷を背負わせてしまっていたのかと。すまなかった…ネモ。」
「っ…ぅあああっ」
カランの背に手を回し、ぎゅっとしがみつき、今までの恐怖を吐き出していた。僕が泣き止むまで、カランはそのままの体勢で優しく抱きしめながら、髪や背中を撫でて落ち着かせてくれた。
何より、カランが僕の気持ちを受け止めて寄り添ってくれることが、心の底から嬉しかった。ちゃんと僕を見ていてくれたことを、気遣ってくれたことを。
彼を独り占めできるこの時間が、もっと続けばいいのに。
ー*ーー*ーー*ー
心地良さに甘えながら、ひとしきり泣いてスッキリした僕は、カランと共に、みんなが集まっているというカフェのエリアへ合流した。
僕を送り届けると、カランは明日の為の準備へと戻っていってしまったけれど。
サキーラ達が心配そうに声をかけてくれる。
「大丈夫ですか?目が腫れていますよ?」
「…ああ。いや、昨日あんな話をした後なのに、その…みんなが、優しくて…ホッとしてさ…。」
みんなが驚いたように僕を見た。
え?なんで?
サキーラが僕の前に立ち、真剣な眼差しでぎゅっと僕の手を握ってきた。
「馬鹿言わないでください!大体、ネモは被害者なんですよ?なのに…わざわざ私達の為を思って…。すごく決心のいることだったと思います。きっと、話すのも辛かったでしょうに…私達の為に警告をしてくれたあなたに、軽蔑も何もするわけないでしょう!」
涙ぐみながらそう言ってくれるサキーラに、あれだけ泣いたにも関わらず、涙がポロッと出てしまう。
そう思ってくれているのかと、本当に安堵したのだ。
「っあり…がとう…」
周りにも仲間達が集まり、僕を慰めてくれた。
ー*ーー*ーー*ー
その後は、ゆっくりデザートや飲み物を頂きながら、笑い合って話もでき、肩の力がスッと抜けた気がする。
ただ、ハゼリはやはり身体が大変なようで、サードのベレンシスが付きっきりでみてくれているそうだ。この場にいないハゼリの事もみんな心配していたので、本当に気持ちが楽になった。
途中、アダンとセイロンが合流し、カードゲームもしたりして楽しむことができたしな。
「悪い、トイレ行ってくるよ。」
僕がそう言うと、じゃあ自分もと、クロントと、クロントの相棒ファリア、そしてアダンが立ち上がった。
一緒に行動した方が良いし、アダンもいるなら尚のこと安心だ。
カフェエリアの外にあるトイレで用を済ませ、手を洗っているとクロントが声をかけて来た。
「あ、あのさ、ネモ。俺、職場にどうしても取りに行きたいものがあって…。家族からもらったお守り、置いたままなんだ!アダンさんもいるし、今から一緒に取りに行けないかな?」
ビクビクと怯えながらそう話すクロント。
確かに、僕とアダンがいれば心強いのかもしれない。
アダンに伝えると了承を得たので、ファリアにその事を伝え、4人でオパール第3小隊のエリアへ向かうことにした。
行き交う人はそこまで多くはない。ただ、昨日の逮捕劇の内容が伝わっているのか、ベーンケイル人達は、逆に僕らに近づかないようにしているようにみえる。やはり執行部隊が出て来たことは大きいのかもしれない。
「この部屋だよ。」
クロントが先導し入室して、奥のデスクへ一緒に移動する。
自身の机なのか、引き出しをゴソゴソと漁りだした。
「…あ、あれ?ないな…。」
しかし、探し物はそこには無いようで、どこにやったのか考えているみたいだ。
「…そう言えば、昨日そっちの部屋で作業してないっけか?あのポーチの中に入ってるやつだろ?」
「あ、そうか。目薬とかと一緒にしまって…。」
ファリアが指摘すると、クロントが思い出したようにこちらを振り返る。
どうやら僕の後ろの部屋にあるようだ。
近いので腕輪をかざすとすぐに扉が開く。
病室のようにベッドとカーテンがある殺風景な部屋だった。
しかし突然、後ろからドンッと押されて部屋に倒れ込むように入ると、横からガシッと誰かに腕を掴まれた。
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